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Marginal Prince Short Story
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■細か過ぎて伝わらない森番
■蔦様の美麗イラスト保健医と夜桜を拝見して、書けたお話です。
今宵は、珍しい方と森でお会いした。

最初は、森の中で小さな火が見えたので、気になったのだ。
暗闇の中で浮かぶ、オレンジ色の灯り。
よく見ると、その光から、細い煙が昇っている。
あれは煙草の火だ。

どなたが森で煙草を吸っているのか、
念の為、確認することにした。

静かに近付いていくと、幹に隠れていた人影が見えてきた。
白いシルエット。風に翻ったのは白衣だった。

私の足音に気付き、振り向いたお顔。
眼鏡がよくお似合いになる、理知的なお顔立ち。
やはり、ソクーロフ博士だった。

博士はいつも保健室にいらっしゃるので、
森の中でお見かけするのは珍しい。

お急ぎのご様子ではなかったので、
保健室や警備関連の用事で、
外を歩いているわけではないようだ。

白衣姿でいらしたし、保健室から出てきて、
ふらりと森へお越しになったのだろうか。

生徒様は今頃、ご夕食の時間。
先生方も既に宿舎にお帰りになっている時間だが、
博士はまだお仕事をなさっていたのだろうか。

突然現れた私に対し、博士は一瞬、警戒したお顔をなさったが、
不審者などではなく、森番の私だったせいか、
すぐに、いつもの冷静なお顔に戻った。
唇に銜えていた煙草を、手に移しながら、

「君か」

私は頭を下げた。

「お邪魔をしてしまい、申し訳ございません、ソクーロフ博士」

「いいや。私のほうこそ、すまなかったね」

どうして博士に謝られたのだろう。

「君はこの、煙草の火が気になって、見に来たんだろう?」

博士は木々を見上げる。

「ここは森の中だったね。
そこまで気が回らなくて、すまない。もう消すから」

「ああ、お待ち下さい」

「おや。良いのかい?」

「はい。博士は、葉や幹に吸い殻を押し付けたりはなさいませんし、
この森は、学院の全ての方にお寛ぎ頂く為の場所でございますから。
私はこれで失礼させて頂きますので、
どうぞ、ごゆっくりお過ごし下さい」

私は一礼し、その場を去ることにした。
だが、数歩離れた時、博士に呼び止められた。

「バロウズ」

「はい」

「君は……」

そのあとが続かない。どうなさったのだろう。
次のお言葉をお待ちしていたが、
博士は思い直したように、こう仰った。

「いや、すまない。何でもないよ」

「左様で、ございましたか」

「では、そろそろ戻るよ。おやすみ、バロウズ」

博士は保健室のほうへお帰りになった。

森で何かお考え事をされていたのだろうか。
物思いな雰囲気を纏っていた。

博士は私に何を言おうとしたのだろう。


fin
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