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Marginal Prince Short Story
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報われない俺達8 続編

そろそろ就寝という時間。
私も今日一日の仕事を終え、自室へ下がるところだった。

「ホワイト」

邸の廊下を歩いている時、名を呼ばれた。
振り返ると、そこには、金色のショートヘアに、中性的な顔。
私を呼び止めたのは、私と同じく側近のラルヴィス・レイナだった。

階級上ではレイナのほうが上官なのだが、
本人はそういったことを気にしない質で、
本来は部下にあたる我々に対しても、
「普通に、呼び捨てで呼んでくれ」と言うような奴だ。
だから、私も「レイナ」と呼んでいる。

レイナはワインボトルを一本、抱えていた。
ワインと言えば、陛下がお好きなお飲み物なので、
陛下の寝室へ持っていくワインなのだろうと察した。

レイナはワインボトルの他には何も持っていなかったので、
キッチンにチーズでも忘れてきたのだろうか、と私は思ったのだ。
しかし、レイナが私に言ったことは、全く別の話だった。

「エメリーがどこに居るか知らないか?
部屋に居なかったんだが」

「エメリーなら外出中だぞ」

「外出? 陛下に何か頼まれたのか?」

「いいや。プライベートで飲みに行っただけだ。
ところで、レイナ。そのワイン、陛下にお持ちするんだろう?
エメリーの代わりに何か手伝うか?」

「ああ、いや。これは、陛下ではなくエメリーに」

「え?」

レイナにしては珍しく、もごもごと話す。

「私が休んでいた間、随分、世話になってしまったから」

自分としては不本意だった、と言いたげな顔で、
抱えているワインボトルに視線を落とす。

「これで、借りを返して置こうと思ってな」

ほう。そのワインが、レイナからエメリーへのプレゼントだったとは。
レイナは愛想は良いほうではないが、真面目で律儀な奴だ。

「エメリーが一人で飲みに行ったのなら、何時に帰ってくるか解らないな」

「今夜は、一人ではなかったぞ。
メイスン医師に腕を組まれて出て行った」

「あのメイスン医師と? 珍しい組み合わせだな」

「ああ。メイスン医師が言うには、
今夜はメリーちゃんを慰める会、らしい」



ロレートの繁華街。
その外れにあるバーで、国王陛下側近のエメリーと、
王室医師団の一人であるメイスン医師が飲んでいた。

メイスンは頬杖をつきながら、目の前に居る連れを眺めた。

「メリーちゃんって、なんだか切ないわねー」

エメリーは赤ワインを煽りながら、

「何が?」

「レイちゃんの風邪は、悪化することもなく、
陛下のとこに戻っちゃったわけじゃない?」

「んなの当たり前だろーが。レイナは陛下の側近だぞ」

「そりゃ解ってるけどさー。
あんだけ甲斐甲斐しく看病したってのに。
メリーちゃんって、ホント報われないオトコだなーと思って」

「うるせーよ、バーカ。ていうか、そのメリーちゃん、
って呼び方止めろって言ってるだろ。
羊飼いのオンナじゃねえんだぞ」

「んもう。機嫌悪いわねえ」

二人の前にあるテーブルには、ワインボトルが一本乗っている。
ペースが早いのは、明らかにエメリーのほうだった。

「ねえ。せっかくアタシと良いワイン飲んでんだから、
もうちょっと楽しくやりましょうよ」

「お前がレイナの話を振ってくるからだろーが」

「ああ、そっか。せっかく二人きりで飲んでるのに、
他のオトコの話なんて、野暮だったわよね。
ごめんなさい、メリーちゃん。
だけどね、心配しなくても、アタシはアナタだけよ?」

「うるせーんだよ、バカ」

「もう。今夜はもっと優しくしてよ。
レイちゃんを長く拘束できたのは、
アタシのおかげでしょ?」

「俺は頼んでねえ」

「何言ってんの。メリーちゃんの心の声なんか、
アタシには丸聞こえだったんだから!
メリーちゃんも、アタシがわざと、
レイちゃんの拘束期間を伸ばしたって解ってたから、
今日付き合ってくれたんじゃないの?」

エメリーは言い返してこなかった。

「ねえ。いい加減、アタシにしておきなさいよ。
アタシなら、メリーちゃんのこと」

エメリーはそっぽを向いたままで振り向く気配もない。
メイスンは思わず笑ってしまった。

「あーあ。なんでアタシ、こんなオトコ、好きになっちゃったんだろ」

「そう思うんなら、他の男でも探せばイイだろ」

「あら。そう簡単に乗り換えられるなら、
とっくにそうしてるわよ。
一生、振り向いて貰えないんだろうなって解ってても、
その人を嫌いになれない気持ち、
メリーちゃんなら、解ってくれると思ったんだけど?」

「知るか」

「その冷たさにもジンジンきちゃう」

「あー! なんで、お前はそんなヘンタイ系オカマになっちまったんだよ!?
初めてココ来た時は、普通の男だったのによ!」

「だって、陛下を始め、陛下がはべらしてる、
オトコ達みーんなイケメンなんだもの!
こんな所に来たら、誰だってオトコ好きになっちゃうわよ!」

「なら、俺じゃなくて、他の奴にすれば良かっただろ。
どう見ても、俺よか陛下やラテのほうがイケメンじゃん」

「メリーちゃんには一目惚れだったのよ。
そのキレイで細マッチョな大胸筋に」

「お前はとことんバカだな」

「バカって言うほうがバカなんだからね。
メリーちゃんのバーカ!」

「小学生みたいなこと言ってんな」

「フフフッ。でもホント、バカよ、
メリーちゃんは。だから、大好き」

「イミ解んねえ」

「ねえ。今夜くらいはアタシの部屋に泊まって行かない?」

「ワイン一本空いたな。帰る」

「えー!? まだ良いじゃなーい。
お楽しみはまだまだこれからでしょー!?」

「お前一人で楽しんでろ」

「やーだー。メリーちゃんと一緒に遊びたいー」

「幼稚園児かっ!」


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