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Marginal Prince Short Story
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■細か過ぎて伝わらない森番
今夜は、ウーティス寮の皆様が、
森でバーベキューパーティを行われた。

昼頃、私はウーティスのシェフに、
「バーベキューで使う月桂樹の葉を選んで欲しい」と頼まれた。
この学院で行うバーベキューは、月桂樹の葉を挟んで焼く。
すると、葉の青い香りが肉や野菜に移り、
この学院ならではの美味しい料理となる。
私は香りが良い若い葉を選んで、シェフにお渡しした。

夜には、私も森へ向かった。
森の中で火気を使用する際、シェフやバトラーが、
水を汲んだバケツや、消火器等を用意しているが、
森番の私も万一に備え、お側に控えることにしている。

生徒様がお楽しみのところ、
お邪魔になってはいけないので、
皆様の目に入らないよう、いつものように、
近くの木の上に控えさせて頂いた。

最初にシェフとバトラーが森へやってきた。
バーベキューに必要な道具や食材を持って。
準備中、おもむろにシェフのカミーユ様が木を見上げた。

「そうだ。バロウズ、どこかに居るかい?」

呼ばれた私は木から飛び降りて、
「はい。ここに」と答えた。

「はははっ。相変わらず、軽い身のこなしだな。
私にはとても真似できないよ」

大きなお腹を叩きながら、笑っている。

「いつも監視ご苦労さん。
今日のバーベキューが終わったあと、
少し残ってくれるかい?」

「お片付けのお手伝いですね。承知致しました」

「いや……まあ、そういうことにしておこうか。
じゃあ、終わるまで待っているんだよ、バロウズ」

「畏まりました」

私は木の上に戻り、待機させて頂くことにした。
まもなく、ウーティスの生徒様が続々と森へやってきた。

森で行うバーベキューパーティは、
聖アルフォンソ学院で長く続いているイベントらしい。
この日も、生徒様はとても楽しそうで、
笑い声の絶えない夜を過ごされていた。
ただ、お一人を除いては。

まだお姿が見えない、と私が気付いた時、
木の下からこんな声が聞こえてきた。

「どうした、ジョシュア。その肉、マズイのか?」

「あ、いえ。あの、アンリがまだ来てないみたいで」

「ああ。そういや、居ねえな、あの新入り」

「今日はバーベキューだって、知らないんじゃない?」

「朝食の時、ポロが皆の前で言ったのに?」

「聞いてなかったとか?」

「俺、アンリの部屋に行って、呼んで来ます」

ジョシュア様がウーティス寮に向かわれた。

その後、ジョシュア様は森へ戻ってこられたのだが、お一人だった。
上級生の皆様に「アンリは?」と聞かれ、
ジョシュア様は首を横に振った。

「部屋に居たんですけど、行かない、と言われました。
体調が悪いのかなと思って、そう聞いてみたんですけど、
違う、放っておいて、としか言ってくれなくて」

「なんだそりゃ?」

「もしかして、バーベキュー、嫌いなのかな?」

「ええ? そんな奴居るのかよ?」

「丁度、ご機嫌が悪かっただけじゃねえの?」

「カワイイ顔してっけど、高飛車なお姫様だからな、今度の新入りは」

「どーしたー? 何かあったのか?」

最上級生のポロ様がこちらにやってきた。

「新入りがまだ来てねえんだ。
さっき、ジョシュアが呼びに行ってくれたんだけど、
来たくねえんだってさ」

「アンリが? あ、そうか! しまったー。
ジブリールに言われてたのに、忘れてた」

「忘れてたって何を?」

「い、いやー、まあ、とにかく、アンリは来れねえんだよ。
あー、どーすっかなー。えーと、あ、バトラー!」

最上級生がバトラーに何かを耳打ちする。
すると、バトラーは「はい。後程、その予定でございました。
その件については、私もジブリール様から伺っておりましたので」

「あ、そうなの? 意外と気が回るんだなー、
ジブリールって。じゃあ、そういうことで、あとは頼むわ」

「畏まりました」

バトラーはシェフのところへ戻った。
最上級生のポロ様は、他の皆様から一斉に視線を浴びていた。

「つまり、どういうこと?」

「俺達は聞かないほうが良い話なら、これ以上聞かないけど」

「んー。どうなのかなー、これって。
俺の口から言って良いのか解んねえんだよなー。
でも、アンリ的には勝手に言われたくねえだろうしー」

「じゃあ聞かないほうが良さそうだね」

「えー。気になるじゃーん」

「気になるなら、本人に直接聞くんだね」

「うわー、無理ー」

「この話は終わり。ほら、バーベキューに戻ろう。
話してる間に、大分、取られちゃったんじゃないの?」

「わー! 俺の肉がなくなってるー!?」

皆様はバーベキューコンロの周りへ戻っていった。
最後までその場に残っていたのはジョシュア様で、
寮のほうをご覧になったあと、先輩方のあとに付いていった。

その後、バトラーは焼き上がった野菜や肉を皿に乗せたあと、
寮に一度帰った。森へ戻ってきた時には皿を持っていなかった。


バーベキューパーティが終わり、
生徒様が全員、寮へお帰りになった後。
私は木の下に降り、シェフの元へ向かった。
シェフにお片付けのお手伝いを頼まれていたからだ。

「お疲れ様でございました、カミーユ様」

「ああ、バロウズ。君もお疲れ様」

カミーユ様は、木と私を交互に見ながら、

「君は、ずっと木の上に居て、疲れないのかい?」

「いえ。私にとっては落ち着く場所ですから」

「そうか。さすが森番だねえ」

「お片付けをお手伝いしましょう。
何からお運び致しましょうか」

「ああ、それは良いんだよ。
今日残ってくれ、と言ったのはね、
君にもバーベキューをご馳走しようと思ったからなんだ。
今日は、特別良い肉が手に入ったからね。
君の分をとっておいたんだよ、ほら」

「まさか。とんでもございません。
そのように上質な食材を私が頂くなど」

「良いじゃないか。いつも生徒達を、
影ながら見守ってくれているお礼だよ。
遠慮しないで食べていきなさい。
これはめったに食べられない代物なんだから」

ほら、と肉の乗った皿を差し出される。

「しかし」

「じゃあ、こう言えば受け取ってくれるかい?
もう生徒達は寮に帰ってしまったし、
君が食べてくれないんじゃ、このまま捨てるしかないかなあ」

それでは食べ物を粗末にしてしまう。
恐れながら、頂戴することにした。

それから、シェフとバトラーと三人で頂いたバーベキューは、
とても美味しく、シェフお勧めの肉は、信じられないほど柔らかかった。


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