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Marginal Prince Short Story
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■ユウタ×姉貴
アンリ×姉貴 ユウタ×アンリ
ジョシュア×アンリ ハルヤ×ユウタ
春臣×春也 デッド・プリンス
■ゲームベース。ドリームとBLが初共演。
■WARNING! 姉貴、喋ります。
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「よぉ。姉貴、元気? アンリと話す? ちょっと待ってね」

俺は、アンリの部屋に向かう。

最近、姉貴はアンリとよく電話で話している。

寮の皆を姉貴に紹介した後。
姉貴から「アンリさんと話してみたい」と言われた。

俺は気軽に電話を取り次いだ。
アンリは、なかなか会えないタイプの人だし、
姉貴も少し話してみたいのかなと思ったから。

姉貴とアンリは、最初から気が合ったみたいだった。

それから姉貴には、
「アンリさん、いる?」と言われるようになった。

姉貴の声が、アンリの名前を呼ぶ前に、
俺は「アンリと代わるね」と言っていた。

アンリは最初、姉貴と話すのが迷惑そうだった。
だけど、最近は、少し様子が変わって来てる。

アンリの部屋に着く。
ドアをノックする。

「アンリ、居る?」

ドアが少しだけ開く。

「何か用?」

「姉貴から電話なんだけど…」

ドアがもう少し開く。

「…ほんと?」

「ほんと。ほらっ」

「…やあ。こんにちは」

姉貴の顔を見ると、アンリの表情が少し変わる。
俺達には見せてくれない顔になる。

「…ユウタ、暫くケータイ借りていい?」

「いいよ。はいっ」

ケータイを渡す。
アンリは、姉貴に話し掛ける。

「今日は散歩しながら話そうか。
どこか見たい景色はある? 
…気が合うね。では行こう」

アンリは俺を見る。

「じゃ、お借りするよ」

「うん。いってらっしゃい」

俺は笑顔で手を振る。

アンリの背中が見えなくなると、
急に手の力が抜けて。
ぱたん、と下がった。




俺は自分の部屋に戻った。
さっき見たアンリの顔が、頭から離れない。
ほんとに天使みたいで。
アンリが少し子供っぽく見えた。
あれは姉貴にしか見せない顔、なのかな。

「はあ…」

壁に凭れたまま、ずるずるとしゃがみこんだ。

最近、俺はちょっとおかしい。
ケータイが俺の手から消えると、
身体のあちこちから力が抜けていく。
気持ちまで、空っぽなかんじがして。
胸が、ちくちく痛んだりする。

これって、もしかして『ケータイ依存症』?
もし、そうだったらどうしよう?
膝の中に顔を埋める。

「姉貴、助けてよ…」



「ユウタ、居る?」

アンリの声だ。
急いで、ドアを開ける。
アンリがケータイを差し出す。

「返しに来たよ、ケータイ」

「あっ、ありがとう」

ケータイを持って、ベッドに転がる。
意味無くケータイを開けてみる。
着信もメールも来ていない。
待受画面が映ってるだけ。

なんか寂しい。

アンリから返して貰ったのに。
ケータイが帰って来たのに。
返して貰えてないかんじがする。


ケータイが鳴った。姉貴の着メロだ。


画面には『着信 姉ちゃん』と書かれている。
飛び起きて、テレビ電話のボタンを押す。
携帯が、姉貴の顔を映す。

「あ、あああ、姉貴!?」

「ユウタ? なんでそんなに慌ててるの?」

「あ、何でもない、何でもない!」

「…そ、そう?」

「あ、姉貴は、アンリに何か言い忘れた?
ちょっと待ってね、今、アンリの部屋行くから」

「あー、行かなくていいっ!」

「え?」

「話したかったのはユウタだから。
そろそろケータイが届く頃だと思って電話したの」

心臓が、とくん、と鳴った。

「…俺? ど、どうしたの、姉貴」

姉貴は、視線を落とす。

「あのね、アンリさんのことなんだけど…」

姉貴がアンリの名を呼んだ瞬間。
胸が、ちくっとした。
俺は隠すように、胸を押さえる。

「…アンリが、どうかした?」

「アンリさん、私から電話が来るの嫌がってる?」

「そんなことないけど…姉貴、アンリと何かあったの?」

「私ね、さっき、アンリさんに聞いたの。
『最近、電話ばかりして、迷惑じゃないですか?』って」

「迷惑だって言われたの?」

「ううん。『嫌じゃない』って言われた。
アンリさん、嬉しいとか楽しいって言わないから、よく解らなくて…
もしかしたら本当は、私のこと嫌なのかなと思って」

「なーんだ。大丈夫だよ、姉貴?
アンリの『嫌じゃない』は『好き』ってことなんだって。
前にジョシュアが言ってたよ? だから、また電話掛けても平気だって」

「そうかな…ありがとう、ユウタ」

「うん。またな、姉貴」

画面から、姉貴が消える。
俺はまたベッドに転がる。
心臓に手を当てる。

まだ、ちくちく痛い。



そんな日が続いていた。

俺が、姉貴とアンリの間を行き来する度に、
二人の様子が変わっていく。

電話を掛けてくる姉貴と、
電話を返しに来るアンリは、
だんだん、あったかい顔になっていった。


今日も俺の手にはケータイがない。

アンリが、ケータイを返しに来た時。
俺はアンリを呼び止めてた。

「あ、アンリ!」

「何?」

「いや…あの、さ。なんか最近ごめんね。
いつも姉貴の相手して貰っちゃって…」

「それは、君が謝ることじゃない」

「アンリは、迷惑じゃない?」

「迷惑だったら、そもそも電話なんか出てないよ」

俺は、ケータイを握り締める。

「じゃあ、アンリは…アンリは、姉貴のこと好きなのっ!?」

アンリは驚いたように俺を見た。
沈黙の後、ぽつりと言う。

「…別に。嫌いじゃ、ないよ」

ドアが閉まる。


…あれ。おかしいな。

また『ケータイ依存症』だ。
今は手にケータイを持っているのに。

身体から力が抜けていく。

握り締めていた手が開いて。

無機質な音が床に響いた。




また姉貴から電話が来る。

姉貴は「アンリさんと代わってくれる?」と言った。
俺は、ケータイを持って、アンリの部屋に行く。

「アンリ、姉貴から電話だよ」

「そう…」

アンリが優しい顔にならない。

「ユウタ。明日の朝まで、借りても構わない?」

「…え?」

「今夜は、少し、話したいことがあるんだ」

俺は胸を押さえる。

「いいよ。じゃ、おやすみ。アンリ、姉貴」

「おやすみ」

ドアが閉まる。

自分の部屋に戻らなくてはいけないのに。
俺は、その場から動けなかった。

部屋の中から、アンリの声が聞こえる。


「…ずっと、君の声が聞きたかった」


聞いたことない、アンリの声。
今、あの優しい顔で、姉貴を見てるの?


「この前、ユウタに言われたんだ」


急に呼ばれた俺の名前。


「ユウタは、僕にこう聞いた。

『アンリは姉貴のこと、好きなの?』って。

ユウタに言われるまで、気が付かなかった。

僕はこれまで、誰かに好かれたことも、

誰かを好きだと思ったこともなかったから。

でもやっと分かった。……愛してる。」


俺は走って、その場から離れた。


俯いたまま、寮の廊下を走る。

頭の中は真っ暗で、バカみたいに心臓が動いてる。

なんで、俺、こんなにパニクってんだろう。

何も考えられない。


ただアンリの声だけが響いてる。




誰かにぶつかった。

「ごめんね、ユウタ。大丈夫?」

「ハルヤ…」

「え…ユウタ、泣いてる?」

自分の頬を触ると、濡れていた。

「…あ、あの、これは、何でもなくて…」

「そんな顔見せられて『そーですか』ってわけにいかないよ」


ハルヤの部屋に連れて行かれた。
さっき聞いたことを話すと、ハルヤは手を頭の後ろで組んだ。

「アンリの『愛してる』は俺も聞いてみたかったかも」

「ハ、ハルヤ!!?」

「でも、兄弟が告白される所は、見たくないな」

「ハルヤは…見たことあるの?」

「昔ね。ほんと子供の頃だけど」

「お兄さんが、告白されるとこ?」

「うん。兄様、すごくモテる人だったから、何度もね。
でも、何度見ても慣れないし、嫌だったな」

「嫌?」

「うん。兄様はいつも断るから。相手の子が泣き出す時もあるし。
そういうの見ると、可哀想だなって思いながら、
俺、どこかさ、ほっとしてるんだよね」

「ほっと、する?」

「俺、小さい頃から結構人見知りでさ。本当に仲が良い人って、
兄様ぐらいしか居なかったから、余計に。
『兄様が取られちゃったらどうしよう』って思って。コドモだよね…俺」

「いーじゃん。その時は、本当に子供だったんだから」

「…うん。その時はね」

ハルヤは少し困ったように笑った。




次の朝。
アンリからケータイが帰って来た。

俺はベッドに転がる。
ケータイを見る。

「次、姉貴から電話掛かって来たら、
俺、どんな顔して会えばいいんだろう…」

ケータイが鳴る。
画面には『着信 姉ちゃん』の文字。
深呼吸してから、通話ボタンを押す。
テレビ電話のボタンは押せなかった。
耳にケータイを当てる。

「あ、姉貴…おはよ」

「ユウタ? なんで、テレビ電話にしないの?」

「い、いや、別に。特に意味は無いけど…」

耳元で吐息が聞こえる。

「やっぱり、聞いてたか。昨日の電話」

「え!? …な、何のこと!?」

「アンリさんが言ってた。
『今、派手な足音がしたから、
ユウタに聞かれてしまったかも』って」

「あ、あははは……ゴメン」

「いいよ。私、アンリさんに、
『ありがとうございます』としか言えなかったし」

「え?」

「『私もです』って言えれば良かったんだけど、
なんか違う気がして、どうしても言えなかった」

「なにそれ…」

「あ。ごめん、私、もう行かなきゃ。じゃあね、ユウタ」

「ちょ、ちょっと姉貴っ!」


ケータイは待受画面に戻ってた。




サロンに行くと、ハルヤ、レッド、シルヴァンが居た。
俺はみんなに尋ねる。

「あ、あの、アンリは?」

レッドが振り向く。

「アンリなら、ジョシュアとどっか行ったみたいだったぜ?」

「そ、そう。ありがと」

ハルヤが俺に駆け寄って、小声で言う。

「なんかあったの?」

俺は頷いて、ハルヤの腕を引く。

「みんな、ちょっとハルヤ借りるね?」

「おう」

「必ず返して下さいねー♪」



俺の部屋にハルヤを連れて来た。
ハルヤはソファに座って、俺を見つめる。

「そっか。アンリ、片思いだったみたいだね」

「な、なんで解るの!?」

「解るよ。ユウタ、泣いてないもん」

「…ハルヤのいじわる」

「あははっ、ごめんごめん。
でもさ、ユウタにとっては、これで良かったんじゃないの?」

「そう、なのかな。でも、アンリが…」

「アンリなら大丈夫だよ。今、専属のお医者さんが、
カウンセリングしてくれてるみたいだからね?」




姉貴は「アンリさんに代わって」と言わなくなった。
誰かにケータイを渡さなくなってから。
『ケータイ依存症』を感じなくなった。
やっぱ俺の傍にあるからなのかな。

最近の姉貴は、俺と話してくれる。
只の気まぐれかもしれないけど。


「…分かってるってば、姉貴。

あーはいはい。そろそろ切るね?

え? なに? …うん。俺も。

じゃあまた。おやすみ、姉貴」


いつかまた姉貴に「代わって」と言われたら、
俺には、代わってあげることしかできないけど。

本当は、もう誰にも。


渡したくないんだよ、姉貴。


fin

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