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Marginal Prince Short Story
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■シルヴァン×アイヴィー
聖アルフォンソ島 ダンスホール。
ダンスミュージックが流れ、今まさに踊り狂ってる最中。
キラキラと回るライトが眩しい。
此処は比較的、年齢層の高い場所だった。
しかし、この空間では夜になると、皆、若返るようで、年も忘れて楽しくやっていた。
アイヴィーは彼等の中には入らず、隅っこの席に居た。
小さな丸テーブルには、熱々のグリルソーセージ。
フォークで突き刺し、粒マスタードをたっぷり付けて咥える。
隣の席に連れの姿はない。連れと言っても、年下のオトコ。
そいつは今、ホールの中央で踊っている。
他のオンナの手を取って。


その数時間前。
アイヴィーは自宅でブランチを作っていた。
この島では『漁師の後悔』と呼ばれるツナサンド。
普段はツナ缶とマヨネーズをぐしゃぐしゃしたものをパンに挟むだけなのだが、
今日は天気が良かったせいか、変に機嫌が良くて、
フランスパンを一度オーブントースターに入れてみようという気になった。
よくカフェで見る、コンガリきつね色のツナサンドをイメージしていた。
だが、何分くらいでその美味しそうな色になるのか解らなかった。
テキトーに五分にセットしてみる。
煙草でも吸って待とうかと思い、火を付ける。
浮かぶ白煙。愛用の香りが心地好い。
FMラジオはリスナーからのリクエストを募集している。
今日のテーマは「花」らしい。島の花祭りが近いせいだろう。
やたらイイ声のDJは続けて、今夜のライブスケジュールを伝えていた。
ふと目に入った窓の外。淡いマリンブルー。海もなんとなく春色に見えた。
DJは今日の一曲目を紹介している。
これも花の歌。DJイチオシの曲らしい。

――花が咲いても、君には会えない――
――花が散っても、君には会えない――

思いのほか、最初から切ない選曲だ。
すると、うちの電話が鳴った。
口から指に煙草を預ける。もう片方の手で受話器を手に取る。
春だろうが冬だろうが、大体ハイテンションな声が耳に飛び込んで来た。
「シルヴァンですー。ご機嫌いかがですか?」
『デッドプリンス』なんて、可笑しなバンド名ながら、島じゃちょっとした人気もん。
高等部の、もう最高学年になっちまった19歳だ。
アイヴィーは自然と軽口を叩く。
「はいはい。お前さんの声が聞けてご機嫌麗しいぜ、マイハニー?」
そう言ってやると、受話器の向こうは嬉しそうに返してきた。
「キャッ! ダーリンったら僕のこと大好きなんだからっ」
アイヴィーは声に出さずに笑って、受話器を肩に挟む。
空いた手で灰皿を引き寄せ、煙草を置いた。
「で、今日はどうした?」
「今夜一緒にダンスホールへ行きませんか? マルタのスペシャルフラワーライブがあるんです!」
「ああ、そういや、さっきラジオでそんなこと言ってたな」
「それですそれです。ね、行きましょう?」
「あいよ。ハニーに誘われちゃ断れないからな」
「ありがとうございます。じゃ、18時にいつものところでお待ちしていますね、マイダーリン」
灰皿からゆるりと舞う煙。
誘われるように、受話器を置いて煙草を手にする。
明るい色の海を見ながら、つまらない独り言を口にする。
「はー。今日もモテるなー、オレ」
さっき、DJは『島一番の歌姫、選りすぐり』と声を張り上げていた。
今日は花に纏わる様々な楽曲を歌うらしい。
確かにちょっと聞いてみたいかんじはしていた。
チン、とオーブントースターに呼ばれた。パンが焼けたようだ。
蓋を開けると、黒い匂いがした。
イメージしていた綺麗な焦げ色ではない。
ガリガリと黒焦げを剥がす音がキッチンに響いた。


fin
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