忍者ブログ
Marginal Prince Short Story
Admin  +   Write
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

■ディーノ×アイヴィー
■シリアス
イイ子は眠る時間にインターホン。
海岸近くのコテージに客が来た。
家主は浅い眠りに入ったところだった。
電子音は鳴り止まない。
できれば無視したいが、早く出迎えないと、
ドアが蹴られることを学習していた。
重い息を吐き出しながら、ベッドを出る。
ドアを開けてやると、予想通り、濃い顔の男が立っていた。
父親の後を継ぐ、生粋のシチリアンマフィア。
血塗られた歴史を持つマンゾーニ家の次期ボス。
ディーノ・マンゾーニ。
どうして俺んちが、こんな男に通われるハメになったのか。
俺が可哀想な目に合うのは、大体マージナルプリンスどものせい。
プリンセス顔のマジプリが、このマフィアさんをボディガードとして雇ってる。
花祭りの日。狙われたお姫サマを守る為、
警備担当の俺とマフィアさんは、急遽手を組むことになった。
任務は無事終了。俺達のお姫サマはケガひとつしなくて済んだ。
そこで濃い顔とサヨナラすれば良かった。
別に打ち上げとかする必要なかったのに。
マフィアさんに「ウマイ店に連れていけ」って言われても無視すれば良かった。
けど、俺は仕方なく案内した。
道とか店とか聞かれると、つい親切に連れてっちまう。職業病だ。
だって俺は、タクシーのお兄さんだもの。
打ち上げでは島のウマイもんをたらふく食った。
正直、悪い飲み会じゃなかった。
帰り道、マフィアさんは言った。
「お姫サマに島に呼ばれた時は、またお前に会いに来る」と。
一方的に結ばれた約束は、しっかり守られ、以来、通われることになってしまった。

マフィアが後ろ手にドアを閉める。
潮風がひゅるりと滑り込んだ。
「よお、また来てやったぜ。アモーレ・ミーオ(俺の愛しい人)」
「また来てんじゃねえよ、マフィアさん」
「久し振りだから、拗ねてんのか?
うちのお姫サマがなかなか島に呼んでくれなくてな。待たせて悪かった」
闇夜に映える気障な白スーツ。
中はド派手な赤のワイシャツに、漆黒のネクタイ。
マフィアのファッションセンスは、一般人には計り知れない。
綺麗に磨かれた革靴。上物の靴音が近付く。
「俺も早くお前に会いたかったんだぜ?」
波のある黒髪は、肩より長い。褐色の大きな手が、俺の白い頬に添えられる。
イタリア訛りの英語は、厳つい見た目と比べると、優しく聞こえた。
「お前も俺様に会えなくて寂しかっただろう?」
「いいえ、ゼンゼン。つーか、いい加減、うちをホテルにすんの止めっ…」
グイと首が絞まって、一瞬、息が止まった。
胸ぐらを握られて、力任せに引き寄せられた。
動物の本能を剥き出しにした荒々しい舌に、自分の口内が犯される。
まるで猛獣に喰らい付かれているようだ。
こちらの舌が噛み切られそうで、逃れようとすれば追い回され、捉えられる。
自分の鼓動まで少し怯えているかのように震えてる。
心音が早まり、身体の一点に向かって熱が集まっていく。
額がじとりと滲むのが解る。
マフィアさんの濃いヒゲごと、ジョリジョリ押し付けられる。
一本一本が剛毛で痛い。
その途轍もない不快感は、徐々に薄れていく。
こんな野生的で傲慢なキスは、他の人間にされたことはない。
ディーノ・マンゾーニにしかできないものだろう。
野郎にやられて、しかもキスだけで、ワケが解らなくなる。
羞恥も屈辱も、この男からぶつけられる快楽には敵わなかった。
やっと拘束が解かれた時には、そのガタイの良い肩に寄り掛からないと立ってられなかった。
短い息を吐きながら、お説教を試みる。
「何してんだよ、いきなり…あのなあ、チュウっていうのは」
「俺がしたい時にするもんだよ」
「…この俺様野郎が。玄関で襲ってんじゃねえって言って」
肩を鷲掴みにされて、壁とマフィアに挟まれる。
「俺はお前が抱ければ何処でも良い」


まだ夜は明けていない。
重くなった身体を引き摺ってベッドから出る。
脱がされた青いワイシャツを羽織り、落ちていたズボンを拾って身に着ける。
マフィアの衣服も脱ぎ捨てられていた。
赤いワイシャツに黒ネクタイ。
踏み付けてやりたかったが、跨いで通る。
机にあった煙草とライターを掴んで、窓の傍に立つ。
細く開けると夜風が入ってきた。
汚された胸許にひやりと潮風が当たる。
黒い海と白い煙をぼうっと眺めてた。
部屋の奥から、慣れたカンジでシャワー上がりの男が出てくる。
乾いている時は、うねりのある髪も今だけは素直なストレート。
濡れた黒髪が艶々と光って見える。
長髪から落ちた雫が、フローリングにまで痕を付ける。
「髪くらいちゃんと拭けって」
マフィアは俺を見て、元々細い目を更に細くした。
「お前、いつも煙草吸ってるな、俺に抱かれた後は」
「…何それ、関係ないでしょ」
「100%の確率だぜ? 俺以外でもそうなのか?」
「知らないよ。てゆうか、マフィアって海外出張した時は、
毎回ダレかんちにお泊まりするポリシーでもあるワケ?」
褐色の首許には、如何にも悪党なゴールドの首飾り。
マフィアさんが息を漏らすように笑う。金色の鎖がじゃらりと揺れた。
「ほう。お前だけだとでも言って欲しいのか? 可愛いじゃねえか」
「見境ないね、って言ってんの。俺はアンリみたいな、
ピチピチお肌でもなければ、エンジェル系でもないのに」
「確かに、肌のツヤはお前とあのクソガキじゃ比べモンにならねえ。
だがお前は、俺達と同じ匂いがするから、放っておけねえんだよ」
「俺はそんなコロン付けてないよ」
腰にバスタオルを巻いただけのマフィアさんがこちらに来る。
俺との距離は10センチ。近い。
褐色の上半身にはあちこち古傷がある。
長身で細身。くっきり浮かんだ鎖骨が水滴で濡れていた。
さりげなく一歩離れる。それでも濡れた髪の匂いがする。
「なあ、アイヴィー」
低くしゃがれた声に名を呼ばれる。そんなことでゾクリとした。
「お前、俺と一緒にシチリアに来ないか?」
「…何ですか、それ。行ってどーすんの」
「マンゾーニのファミリーになるんだよ。そうすれば毎晩抱いてやれる」
「じゃあ行く、って俺が言うと思うワケ?」
「ああ。お前は俺様に惚れてるからな」
自信に満ちた笑み。歪んだ黒髭から目を逸らし、吐き捨てる。
「シチリアなんか行くわけねーし。俺は、あんたを捕まえる方の人間なんだよ」
「俺がいつ、何をした? 証拠があるんなら見せてみな?
この島にはお姫サマを守る為に来てるだけだぜ?」
「解ってるよ。だから、誰も、あんたらを捕まえられないんでしょーが」
おそらくマンゾーニ家の仕業だろう、と憶測される暗殺事件は幾つもある。
地下組織の有望株から某国の重鎮まで、噂は後を絶たない。
だが、このマフィアはシゴトでは自分の痕を残さないのだ。
「軍人をマフィアに引き入れようなんて、面白くないぜ、その冗談」
「俺は結構マジメに言ってんだぜ? シャバ風に言えばヘッドハンティングさ。
俺はお前を買ってんだ。なんせ、お前とは相性がイイ。シゴトをするにも、愛し合うにもな?」
またゴールドの鎖がいやらしく音を立てる。
どうやらパパとお揃いの品らしく、何をする時も外さない。
「お前も、そろそろこの島に飽きた頃だろう?」
「飽きてないよ。てゆうか、俺は軍の駒だから、そんなカンタンに抜けられないもんねー」
「んなもん、俺達が幾らでも協力してやるよ? お姫サマを悪人から守るのは俺達の専売特許だからな」
「悪人顔が何言ってんだか。言っとくケド、俺、気に入ってんの、この海が見えるおうち」
「奇遇だな。マンゾーニの第二邸は海がよく見える。シチリアの朝焼けは絶景だぜ?」
「だから、シチリアでモーニングコーヒーするつもりはっ」
背中から褐色の腕が回された。
俺の首に金の鎖が当たる。バックを取られると、いつもこれがぶつかった。
そうそう、とマフィアはわざとらしく切り出した。
「俺さ、お前のこと、調べたぜ?」
俺は何の言葉も返せなかった。
徐々に血の流れが早くなる。
「スキなオトコのことは、よく知っておきたいからな」
口の中が乾いていく。マフィアは薄汚い笑いを含みながら言った。
「安心しな? ますます落としたくなったからさ。やっぱ俺様の目に敵ったオトコだな、半端じゃねえ」
「何の、こと…」
「俺と来れば、存分に使わせてやるぜ、その腕を」
狼のような吐息が右耳に浴びせられる。
「俺達は、お仲間、だろ?」
「仲間じゃない。俺は、俺はもう…」
目を閉じていた。
真っ暗なのに、色を感じる。
かつて、瞼の上に飛び散ったもの。
自分のものではない。
気持ち悪いほど、生温い。
何年経っても思い出せる。
鼻に衝く匂い。
あれからずっと避けている。
地獄の色を。

「なあ」
執拗に下半身を密着させる。
「マンゾーニと血の掟を結べよ」
「血の、掟」
「マフィアの入会儀式さ。俺も昔やった。
別に難しいことじゃねえ。少し痛いくらいさ。
親指に針を刺して血の誓約を唱えるだけだ。
死ぬまでファミリーだと同意し、掟を破った時はどんな制裁も受けると誓う。
な? カンタンだろ?」
「だから、誰が、あんたのファミリーになんかに」
「こんなド田舎でバンビーノ(坊や)どものお守りするよりは、お前の性に合ってんじゃねえのか?
お前の本能は、もっと暴れたがってる。お前だって本当は解ってる筈だ」
自らの欲望に正直過ぎる男。
こいつに出会ってから、自分の中で何かが狂い始めていた。
直球の言葉を耳にする度、その厚い手に触れられる度に。
ピリ、ピリ、と自分を覆っていたカサブタが、剥がされていくような気がした。
聖アルフォンソ島では、誰も俺の過去を知らない。
『お気楽者のアイヴィー』として暮らしていける、地上の楽園。
全部消えることはなくても、傷口は少しずつ塞がろうとしていた。
なのにどうして、この浅黒い指を止められない。

黒髪から落ちた水滴が俺の肩を濡らす。低い声がゆっくりと囁いた。
「俺はお前が欲しい」
俺の過去を知って尚、離れようとしない。
この浅黒い腕は、俺をきつく抱き締めて来る。
「待っててやるよ、お前が俺に溺れるまで。
そう長くは持たないだろうからな。お前はとっくに足を踏み入れてる」
耳たぶを軽く咥えられる。動物がじゃれつくような、舌先での愛撫。
擦り付けられる口髭のチクチクとした痛みにすら感じてしまう。
今夜は何度もイかされたのに。
「…も…止めろって…」
マフィアがサディスティックに嘲笑う。
逆効果にしかならない言葉だと、知っていたのに。


fin
PR
カレンダー
06 2026/07 08
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
キャラ名、CP名などで作品検索可
アーカイブ
カウンター
バーコード
material by bee  /  web*citron
忍者ブログ [PR]