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■シルヴァン アイヴィー ジョシュア
■新入生は自由人5 続編
アイヴィーは自宅のロングソファでくつろいでいる。
長電話しているシルヴァンを、煙草を片手に見守っていた。
アイヴィーの携帯電話が光る。さっき送ったメールの返事が来たようだ。
---------------------------------
>目標を捕獲。俺んちに居たわ。
了解。では司令は直帰ということで。
お疲れ様でした。
クロイツ
---------------------------------
サンキュ、とだけ打って返信した。今日のお仕事はこれでおしまい。
シルヴァンのほうは、と顔を上げる。
「朝七時ですか!? 早いですねえ……ああ、いえ! 七時ですね! 必ず帰ります!」
生徒代表のお説教もやっと終わりそうだ。
「今日は本当にすみませんでした。じゃあ、おやすみなさい、クラウス」
シルヴァンが受話器を置いて、アイヴィーに言う。
「またクラウスに怒られちゃいましたね」
「何、ニヤニヤしてんだよ」
「勝手に出歩くな、と怒ってくれる人なんて、この二年間は居なかったんだなーと思いまして」
アイヴィーは紫煙を吹かす。
「これからはお前さんがムチャする度に言われんぞ? イヤっちゅうほどな」
「ですね」
にこっと笑った。
「さて。お前さん、腹は減ってないんだよな?」
「ええ。レアさんがご馳走して下さったので。今夜はアタシのオゴリ、って」
「だよな……え? 俺のツケで飲み食いしてきたんじゃなくて?」
「レアさんがそう言ったんですか? アイヴィー、からかわれたんですよ」
「なんだ、そうだったのか。ガッツリぼったくられるのかと思ったぜ」
「素敵なバラードも歌って下さって。また来てね、って言ってくれました」
「オトコが大好物だからな、レアちゃんは」
アイヴィーは煙草を灰皿に押し付けて、立ち上がった。
「じゃあ俺はシャワー浴びてくるわ。お前さんは好きにしてな。寝ててもいいし、遊んでても。あ、家の中でな?」
「もうどこにも行きませんよ、今夜は」
アイヴィーがシャワーを終えて、髪の雫をタオルで拭きながら戻ってくると、
リビングには、FMラジオの音楽番組が流れていた。
ソファにシルヴァンの姿がない。見回すとベランダに居た。
ディレクターズ・チェアの上で膝を抱えていた。
真っ暗な海に視線を向け、背中を丸めている。
泣いているのかと思ったくらい、淋しそうな後ろ姿だった。
声を掛けようか迷っていると、長い髪が翻った。
「上がったんですね、アイヴィー。ラジオをお借りしています」
「あ、ああ」
「こんなにゆっくりラジオを聞いたのは久し振りです」
泣いていたんじゃないらしいと解って、喉の渇きを思い出した。
キッチンに入って、冷蔵庫を開ける。飲み物とチーズとサルサソースの瓶くらいしか入ってない。
緑色の缶ビールを取って、お客さんにも声を掛けた。
「お前さんもなんか飲むか? ハイネケンか水かインスタントコーヒーしかないが」
「貴方と同じもので、と言いたいところですが、今日はもう止めておきます。お水頂けますか」
透明のボトルを取って、冷蔵庫を閉めた。
ミネラルウォーターをグラスに注ぐ。トクトクと小気味の良いリズム。
「大分飲まされたのか?」
「ええ、大分」
「ふうん。そんな顔には見えねえけど?」
「今夜の僕が何かヘンなこと言っても忘れて下さいね?」
グラスと缶を持って、リビングへ行く。
「ほい」
「ありがとうございます」
シルヴァンは、ただの水を本当に美味しそうに飲んだ。
キツイ飲み方をした後の水がどれほどウマイかはアイヴィーも知っていた。
乾いた土に降る雨みたい、とでも言えばいいのか。文才なんかないから解らない。
アイヴィーはソファに腰掛け、リングプルを引いた。快感とも言える音がして、飲み口が現れる。
喉を駆け抜けていく炭酸。今日も一日お仕事が終わりました。
「あっ、これ『スタンド・バイ・ミー』ですよね?」
ラジオから流れてくる曲にシルヴァンが反応した。
ポップで憂いのあるベースライン。映画と同名の名曲である。
「四人の少年が死体を探す旅に出る、というお話なんですよね? この映画」
「古い映画知ってんだなあ。お前さんの年じゃまだ生まれてないだろ?」
「ええ。映画が大好きな友人が居たので、僕も少し詳しいんです」
「ブライアン・シュミットか? 大佐の息子の」
「大佐から聞いたんですか?」
「ちょこっとな。軍人の家に生まれながら映画学科に入った、役立たずな夢追い人だって」
シルヴァンは微笑んで、グラスを両手で包む。
「彼に付き合って、僕もたくさん映画を見ました。
彼と遊ぶ時は、映画館の前で待ち合わせることも多かったですし。
昔の作品も彼から聞かされて、大抵のあらすじなら知ってるんです、ラスト以外は」
「オチは知らないってことか?」
「ええ。映画を見ていない人に結末を話すのはルール違反だから、というのが彼の口癖でした。
だから僕、未だに『スタンド・バイ・ミー』の結末を知らないんです。
変ですよね。僕が知らないままでいても、ブライアンが結末を教えてくれることはないのに」
アイヴィーは次の言葉を見失う。
曲は「傍に居て」と繰り返していた。
「あっ、僕、アイヴィーに聞きたいことがあったんです!」
強引な話題変更。
何も聞かなかったように「ん?」応じることくらいしかアイヴィーにはできなかった。
「ウーティス寮に居るジョシュアって、あのジョシュア・グラントですよね?」
「ああ」
「驚きました。『世紀のカップル』の忘れ形見と、こんなところで会うなんて」
「だろうな。俺も最初は、貰った生徒資料を二度見しちまった」
「アイヴィーも驚きましたか。大きくなりましたよね、彼。
テレビでよく流れる映像では、彼、お父さんが亡くなったことを理解できなかった頃でしょう?」
――ねえ、ママ。パパ、どうして箱の中でお休みしてるの?――
父親の葬儀があった時、ジョシュアはまだ五歳だった。
その無垢な台詞は、関連ゴシップや暴露本が発表される度に流された。
「あの王子様と同じ教室で、授業を受ける日がくるとは思いませんでしたよ」
抱えた膝の上に顎を置き、溜め息混じりに呟いた。
「僕、仲良くなれますかねえ、王子様と」
「ああ?」
「今日、彼が受けている特別講義を見学させて貰ったんです、『動物行動学』なんて専門的な講義を」
「へえ」
「彼の隣に居たら、僕だけがすごく場違いな気がして」
「場違い?」
「品行方正な王子様に比べて僕は、二年も住所不定で、結構悪いこともやりましたし。
彼は由緒正しき血統書犬、僕は汚れた野良犬です。
なのに、急にプリンスなんて呼ばれて、自分でも笑っちゃいますよ。
僕の居場所には思えなくて、あの館は清潔過ぎて、息苦しいんです。
どうして僕、こんな所に居るんだろうって」
「んなもん、ここに居る奴は皆そう思ってるさ」
「えっ?」
「人と自分比べて、なんかイイコトあんのかよ?
それもジョシュアが相手じゃ、大抵の奴は見劣りする。んなこと気にするだけ時間の無駄なんだよ。
お前さんはお前さんでしかないんだから、あるがまま、好き勝手に生きりゃいいのさ。
その為に、新しい名前くれたんだろ? シュミット大佐は」
きっとそうだ、とアイヴィーは思う。
大佐はシルヴァンに、自由に生きろと望んでる。
ブライアンの分まで、役立たずな夢追い人であれと。
それから三日程過ぎた夜。
ウーティス寮ダイニングルームでは、いつものようにシェフがメニューを説明している。
「本日のディナーにはブラジル料理をご用意しました」
同国出身のアルベルトが「イェイ!」と拳を上げる。
生徒に喜んで貰えてシェフも嬉しそうだ。
「メインディッシュはこちらのシュラスコ、ブラジルのバーベキューでございます」
「あっ、僕、これ好きです!」
続いて歓声を上げたのはシルヴァンだった。
先日の一件で流石に反省したのか、あれからは毎日、寮のディナーに出席している。
今日も向かいの席にシルヴァンがちゃんと居てくれて、ジョシュアはほっとした。
シルヴァンが居ると、ディナーが賑やかになる。
やはりアルベルトと気が合うようで、ディナーの時間も二人はよく喋っている。
話題は今日の体育。サッカーの授業で、二人は息のあったコンビプレイを見せ、アルベルトがハットトリックを決めたのだ。
動物行動学では眠そうにしていた時とはまるで違い、体育の時間のシルヴァンは生き生きと走り回っていた。
夕食後。ジョシュアは自室で過ごしていた。
明日までの課題も終わっているし、今は読みかけの本もない。
少し時間ができると、無意識のうちに窓辺に立っている。
ジョシュアはこの窓から月桂樹の森を眺めるのが好きだった。
風に揺れる木々を見ていると心が落ち着いた。
ゆっくりと過ぎる夜の時間。
突然、空から人が降ってきた。
見事に着地した人物の背中には長い髪が下ろされている。
ジョシュアは急いで窓を開けた。
「シルヴァン!?」
振り向いた彼は一瞬驚きを見せ、苦笑しながら、
「おや、ジョシュア。ええっと、良い夜ですね」
その苦笑いを見て、彼はまた外出届を提出せずに、遊びに行くつもりなのだとジョシュアは察した。
ジョシュアの曇った表情を見て、未提出がバレたことをシルヴァンは察する。
この場をどう乗り切ろうかシルヴァンが考えていると、ジョシュアはこう言った。
「これから、出掛けるのかい?」
「あ、ええ」
「解った。朝になる前に帰ってきてね。君が居ないと皆も心配するから」
シルヴァンの表情が明るくなる。ジョシュアの元へ駆け寄って、
「心配? 皆さんが? ジョシュアも、ですか?」
「うん。当たり前だよ、この前も本当にみんな心配してた」
ジョシュアの手を握って、ぶんぶんと振りながら、
「ありがとうございますっ! ジョシュア!」
「えっ? ちょっ」
「朝までに絶対戻りますねっ! それじゃあ行ってきまーす!」
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■新入生は自由人5 続編
アイヴィーは自宅のロングソファでくつろいでいる。
長電話しているシルヴァンを、煙草を片手に見守っていた。
アイヴィーの携帯電話が光る。さっき送ったメールの返事が来たようだ。
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>目標を捕獲。俺んちに居たわ。
了解。では司令は直帰ということで。
お疲れ様でした。
クロイツ
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サンキュ、とだけ打って返信した。今日のお仕事はこれでおしまい。
シルヴァンのほうは、と顔を上げる。
「朝七時ですか!? 早いですねえ……ああ、いえ! 七時ですね! 必ず帰ります!」
生徒代表のお説教もやっと終わりそうだ。
「今日は本当にすみませんでした。じゃあ、おやすみなさい、クラウス」
シルヴァンが受話器を置いて、アイヴィーに言う。
「またクラウスに怒られちゃいましたね」
「何、ニヤニヤしてんだよ」
「勝手に出歩くな、と怒ってくれる人なんて、この二年間は居なかったんだなーと思いまして」
アイヴィーは紫煙を吹かす。
「これからはお前さんがムチャする度に言われんぞ? イヤっちゅうほどな」
「ですね」
にこっと笑った。
「さて。お前さん、腹は減ってないんだよな?」
「ええ。レアさんがご馳走して下さったので。今夜はアタシのオゴリ、って」
「だよな……え? 俺のツケで飲み食いしてきたんじゃなくて?」
「レアさんがそう言ったんですか? アイヴィー、からかわれたんですよ」
「なんだ、そうだったのか。ガッツリぼったくられるのかと思ったぜ」
「素敵なバラードも歌って下さって。また来てね、って言ってくれました」
「オトコが大好物だからな、レアちゃんは」
アイヴィーは煙草を灰皿に押し付けて、立ち上がった。
「じゃあ俺はシャワー浴びてくるわ。お前さんは好きにしてな。寝ててもいいし、遊んでても。あ、家の中でな?」
「もうどこにも行きませんよ、今夜は」
アイヴィーがシャワーを終えて、髪の雫をタオルで拭きながら戻ってくると、
リビングには、FMラジオの音楽番組が流れていた。
ソファにシルヴァンの姿がない。見回すとベランダに居た。
ディレクターズ・チェアの上で膝を抱えていた。
真っ暗な海に視線を向け、背中を丸めている。
泣いているのかと思ったくらい、淋しそうな後ろ姿だった。
声を掛けようか迷っていると、長い髪が翻った。
「上がったんですね、アイヴィー。ラジオをお借りしています」
「あ、ああ」
「こんなにゆっくりラジオを聞いたのは久し振りです」
泣いていたんじゃないらしいと解って、喉の渇きを思い出した。
キッチンに入って、冷蔵庫を開ける。飲み物とチーズとサルサソースの瓶くらいしか入ってない。
緑色の缶ビールを取って、お客さんにも声を掛けた。
「お前さんもなんか飲むか? ハイネケンか水かインスタントコーヒーしかないが」
「貴方と同じもので、と言いたいところですが、今日はもう止めておきます。お水頂けますか」
透明のボトルを取って、冷蔵庫を閉めた。
ミネラルウォーターをグラスに注ぐ。トクトクと小気味の良いリズム。
「大分飲まされたのか?」
「ええ、大分」
「ふうん。そんな顔には見えねえけど?」
「今夜の僕が何かヘンなこと言っても忘れて下さいね?」
グラスと缶を持って、リビングへ行く。
「ほい」
「ありがとうございます」
シルヴァンは、ただの水を本当に美味しそうに飲んだ。
キツイ飲み方をした後の水がどれほどウマイかはアイヴィーも知っていた。
乾いた土に降る雨みたい、とでも言えばいいのか。文才なんかないから解らない。
アイヴィーはソファに腰掛け、リングプルを引いた。快感とも言える音がして、飲み口が現れる。
喉を駆け抜けていく炭酸。今日も一日お仕事が終わりました。
「あっ、これ『スタンド・バイ・ミー』ですよね?」
ラジオから流れてくる曲にシルヴァンが反応した。
ポップで憂いのあるベースライン。映画と同名の名曲である。
「四人の少年が死体を探す旅に出る、というお話なんですよね? この映画」
「古い映画知ってんだなあ。お前さんの年じゃまだ生まれてないだろ?」
「ええ。映画が大好きな友人が居たので、僕も少し詳しいんです」
「ブライアン・シュミットか? 大佐の息子の」
「大佐から聞いたんですか?」
「ちょこっとな。軍人の家に生まれながら映画学科に入った、役立たずな夢追い人だって」
シルヴァンは微笑んで、グラスを両手で包む。
「彼に付き合って、僕もたくさん映画を見ました。
彼と遊ぶ時は、映画館の前で待ち合わせることも多かったですし。
昔の作品も彼から聞かされて、大抵のあらすじなら知ってるんです、ラスト以外は」
「オチは知らないってことか?」
「ええ。映画を見ていない人に結末を話すのはルール違反だから、というのが彼の口癖でした。
だから僕、未だに『スタンド・バイ・ミー』の結末を知らないんです。
変ですよね。僕が知らないままでいても、ブライアンが結末を教えてくれることはないのに」
アイヴィーは次の言葉を見失う。
曲は「傍に居て」と繰り返していた。
「あっ、僕、アイヴィーに聞きたいことがあったんです!」
強引な話題変更。
何も聞かなかったように「ん?」応じることくらいしかアイヴィーにはできなかった。
「ウーティス寮に居るジョシュアって、あのジョシュア・グラントですよね?」
「ああ」
「驚きました。『世紀のカップル』の忘れ形見と、こんなところで会うなんて」
「だろうな。俺も最初は、貰った生徒資料を二度見しちまった」
「アイヴィーも驚きましたか。大きくなりましたよね、彼。
テレビでよく流れる映像では、彼、お父さんが亡くなったことを理解できなかった頃でしょう?」
――ねえ、ママ。パパ、どうして箱の中でお休みしてるの?――
父親の葬儀があった時、ジョシュアはまだ五歳だった。
その無垢な台詞は、関連ゴシップや暴露本が発表される度に流された。
「あの王子様と同じ教室で、授業を受ける日がくるとは思いませんでしたよ」
抱えた膝の上に顎を置き、溜め息混じりに呟いた。
「僕、仲良くなれますかねえ、王子様と」
「ああ?」
「今日、彼が受けている特別講義を見学させて貰ったんです、『動物行動学』なんて専門的な講義を」
「へえ」
「彼の隣に居たら、僕だけがすごく場違いな気がして」
「場違い?」
「品行方正な王子様に比べて僕は、二年も住所不定で、結構悪いこともやりましたし。
彼は由緒正しき血統書犬、僕は汚れた野良犬です。
なのに、急にプリンスなんて呼ばれて、自分でも笑っちゃいますよ。
僕の居場所には思えなくて、あの館は清潔過ぎて、息苦しいんです。
どうして僕、こんな所に居るんだろうって」
「んなもん、ここに居る奴は皆そう思ってるさ」
「えっ?」
「人と自分比べて、なんかイイコトあんのかよ?
それもジョシュアが相手じゃ、大抵の奴は見劣りする。んなこと気にするだけ時間の無駄なんだよ。
お前さんはお前さんでしかないんだから、あるがまま、好き勝手に生きりゃいいのさ。
その為に、新しい名前くれたんだろ? シュミット大佐は」
きっとそうだ、とアイヴィーは思う。
大佐はシルヴァンに、自由に生きろと望んでる。
ブライアンの分まで、役立たずな夢追い人であれと。
それから三日程過ぎた夜。
ウーティス寮ダイニングルームでは、いつものようにシェフがメニューを説明している。
「本日のディナーにはブラジル料理をご用意しました」
同国出身のアルベルトが「イェイ!」と拳を上げる。
生徒に喜んで貰えてシェフも嬉しそうだ。
「メインディッシュはこちらのシュラスコ、ブラジルのバーベキューでございます」
「あっ、僕、これ好きです!」
続いて歓声を上げたのはシルヴァンだった。
先日の一件で流石に反省したのか、あれからは毎日、寮のディナーに出席している。
今日も向かいの席にシルヴァンがちゃんと居てくれて、ジョシュアはほっとした。
シルヴァンが居ると、ディナーが賑やかになる。
やはりアルベルトと気が合うようで、ディナーの時間も二人はよく喋っている。
話題は今日の体育。サッカーの授業で、二人は息のあったコンビプレイを見せ、アルベルトがハットトリックを決めたのだ。
動物行動学では眠そうにしていた時とはまるで違い、体育の時間のシルヴァンは生き生きと走り回っていた。
夕食後。ジョシュアは自室で過ごしていた。
明日までの課題も終わっているし、今は読みかけの本もない。
少し時間ができると、無意識のうちに窓辺に立っている。
ジョシュアはこの窓から月桂樹の森を眺めるのが好きだった。
風に揺れる木々を見ていると心が落ち着いた。
ゆっくりと過ぎる夜の時間。
突然、空から人が降ってきた。
見事に着地した人物の背中には長い髪が下ろされている。
ジョシュアは急いで窓を開けた。
「シルヴァン!?」
振り向いた彼は一瞬驚きを見せ、苦笑しながら、
「おや、ジョシュア。ええっと、良い夜ですね」
その苦笑いを見て、彼はまた外出届を提出せずに、遊びに行くつもりなのだとジョシュアは察した。
ジョシュアの曇った表情を見て、未提出がバレたことをシルヴァンは察する。
この場をどう乗り切ろうかシルヴァンが考えていると、ジョシュアはこう言った。
「これから、出掛けるのかい?」
「あ、ええ」
「解った。朝になる前に帰ってきてね。君が居ないと皆も心配するから」
シルヴァンの表情が明るくなる。ジョシュアの元へ駆け寄って、
「心配? 皆さんが? ジョシュアも、ですか?」
「うん。当たり前だよ、この前も本当にみんな心配してた」
ジョシュアの手を握って、ぶんぶんと振りながら、
「ありがとうございますっ! ジョシュア!」
「えっ? ちょっ」
「朝までに絶対戻りますねっ! それじゃあ行ってきまーす!」
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