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Marginal Prince Short Story
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■アルフレッド
ラストシーン 1/4 続編
ああ、ビデオはこれで終わり。ちょっとしか映ってないって言ったろ?
今のが俺で、画面には映ってないけど、この時、カメラ回してたのがブライアンさ。
マジで短いフィルムだけど、見てみた感想ってあるか?

えっ? すげえな、シルヴァン!
そうなんだ、主人公が海を見ながら、過去を思い出してるシーンなんだよ。
コレが映画のラストになる筈だった。

一緒に映画撮ろうぜって誘ったのは俺なんだけど、ストーリーの内容なんて、そん時は考えてなかった。
あいつと映画作りたい、ってそれだけだったから。
俺が『キャプテン・ライアンと最後の海賊達』のパート2から外されてムシャクシャしてた時、
ブライアンも大学の卒業製作の時期だったから丁度イイじゃんとも思ってさ。

シナリオは撮りながら二人で決めていこうって話になって、
ただ、ラストシーンだけぼんやり決まってるって話したら、
ブライアンが「じゃあ、その場面からテスト撮影しよう」って。

それが今見て貰った、主人公が海岸を一人で歩いてるシーンなんだ。
ラストは、主人公から海にパンして、青い海をバックに白い文字でスタッフロールってかんじ。

けど、今思うと、俺って勢いしかなかったよなあ。
ブライアンの頭の中には大体のストーリーはあったかもしれないけど、
クランクインの時に台本がない映画に出演したことなんて、一度もなかった。

今まで俺がやってきたのは、誰かから与えられた役。
いや、周りの大人やファンが求めてる『天才子役アルフレッド・ヴィスコンティ』を演じてたような気がする。

カメラの前で笑ってる俺、芝居で泣いてる俺、雑誌のインタビューに答える俺。
そのどれもが『みんなが期待してるアルフレッド・ヴィスコンティ』っていう『役』に思えてきて。
どこまでが演技で、どこまでが素なのか、だんだん曖昧になってきてさ。
じゃあ、今ここに居る俺は誰なんだだろう、って訳解んないことまで考え始めちまってた。

そんな時に出会ったのがブライアンだった。
俺の兄貴達と同じ大学に居る、映画学科の同級生。
超スランプに入ってた俺は、兄貴達とブライアンのバンドに入れて貰った。

それから、ブライアンと映画の話するようになって。一緒に映画見たり、色々相談に乗って貰ったり、
っていうか、俺がグチグチ言うのを聞いてくれたんだ。
俺、家族とは仕事の話、しなかったから。なんつーか、変にライバル意識とかプライドとかあったから。

ブライアンは話聞くの上手い奴だったし。俺の兄貴より、全然、兄貴っぽかった。
あいつが年上だったからかな、俺も、その、なんつーか、甘えやすかったのかもしんねー。

そんで、あいつは、とにかく映画が好きな奴で、
ガキの頃から役者やってた俺より、いや、誰よりも映画が好きで好きで、
幼なじみのあんたも知ってるかもしんないけど、ホント、映画マニアっつーか、映画バカだろ?

あいつが趣味で作ったっていうショートフィルムとか見せて貰ったりしたんだけど、これが結構イケててさ。
すぐに、こいつの作品に出たいって思ったんだよ、この俺が。

んで、『キャプテン・ライアン』の続編に俺が出れなくなった時に……って、さっきも言ったっけ?
とにかく、そん時に「カネは出すから映画撮ろうぜ、俺が主演、お前が監督で」って誘ったんだ。
そしたら、ブライアンもOKしてくれてさ、話はトントン進んでった。

態度でかいプロデューサーも、口煩いスポンサーも居ない、ウルトラ自由な作品で、ブライアンと一緒に作れるなんてさ、
マジでサイコーな映画ができるって信じてた。
あの日、テスト撮影をした時も。


本格的な撮影開始は、次の休日からにすっか?
って話してたんだよ。そしたらブライアンの奴、

「あ、ごめん。その日はダメなんだ」とか言いやがる。

いきなり何だよって思うだろ? だから、
デートの約束でも入ったのか? 毎週毎週デートでスケジュールに穴空けられたら、
いつまで経ったって俺達の映画にエンドマークが付けらんないぜ?
ってからかったら、こう言われた。

「友達に会うんだよ。映画を本格的に撮り始める前に会っておきたいから。
それに、僕は映画が恋人だって知ってるだろ?」

詩人だよなー、ブライアンって。

「比喩じゃないよ。僕はずっと映画に恋してる。
映画が始まる前の5分間がどんなにワクワクするかとか、
映画が終わって、館内がふっと明るくなった時のあのかんじとか。
君には解らないだろうね、スクリーンの中で生まれ育ったアルフレッド・ヴィスコンティには」

ごめん、て笑顔で謝られたよ。

「レッドが悪いって言ってるわけじゃないんだ。
君は最初から映画の中に居た。天才的な才能とセンスを持って生まれた代わりに、
映画に恋焦がれる気持ちを知ることができなかった。
ひとつ得たら、ひとつ失う。人生にはそういうルールがあるんだと思ってる、僕はね」

あいつは、どっか悟ってるとこあるんだよな。
俺より色んなことを知ってた。映画の知識はハンパなかったし、他にも色々。大学生だからかもしんねーけどさ。
あの日もこんなこと言ってた。

「ねえ、レッド。映画のレゾンデートルって、考えたことはあるかい?」

れぞっ……なに?

「レゾンデートル。フランスの哲学用語で『存在理由』って意味さ」

んなもん知るかよ。

「つまりね? この世に映画が存在する意味はなんなのかってこと。そういうの、気にしたことある?」

あるわけねーだろ。

「じゃあ宿題。今度に撮影する時に、撮影が終わった頃が良いかな。うん。その時に聞かせて?」

映画の存在理由。
んなこと、長い役者人生の中で、一度も考えたことなかった。

「そんなに難しい顔しなくても大丈夫だよ、レッド。
答えは人それぞれ。きっと僕のとレッドのは違う。でも、それでいいんだ。
僕達の映画がクランクアップしたら、答え合わせしよ?
いい答えが聞けるのを楽しみにしてるよ、レッド」


で、またな、ってサヨナラしたんだよ、めちゃくちゃフツーにな。
それが、奴との最後になるなんて、誰が思うかよ。

あ、なんか俺ばっかりグダグダ喋っちまったな。ワリィ。
なあ、シルヴァン。次はあんたの話、聞かせてくんねえか?

あんたが、『本格的に撮影を始める前に、ブライアンが会っておきたかった友達』なんだろ?
あいつ、なんか言ってたか?
俺達の映画のこととか、俺のこと。


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