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■アンリ
「おーい、アンリー!」
サロンで読書中、煩いのがやってきた。
「近くに居るんだから、もう少し小さな声で喋れない?」
「あのさ! 『週刊アルフォンソニュース!』の再現VTRにゲスト出演してくれねえ?」
「再現VTR? ああ、あのスキャンダルコーナーの?」
「そう、それ!」
『週刊アルフォンソニュース!』とは、
アルフレッド率いる生徒達が制作・出演・放送しているテレビ番組。
島内限定のローカル放送で、ご丁寧に録画プロテクトまで掛かっている。
その中に、僕達生徒のスキャンダルを暴露する、という意味不明の自虐コーナーがある。
本当に島の外に出せないネタが放送されるので人気はあるらしい。
確かに、この学院はニュースの宝庫だ。聖アルフォンソ学院の生徒達は、
存在自体がスキャンダルになる場合があるくらいだから、常にネタには困らない。
コーナー内では、本人出演の再現VTRまで用意している。
「王様の耳はロバの耳」と言うか、本人がそれでストレスの解消になるのならいいけれど。
僕には精神的露出狂の趣味はない。
「お断りだね。放送して欲しいネタなんかないよ」
「違うって。やるのは他の奴のスキャンダル。そのVで、どうしても女役が必要なんだよ」
ああ、そういうこと。
「やだ」
「早ぇよ! お前、文化祭では女装すんじゃん! Vではセリフもないし、
いつもみたいに、ぶすっとした顔で映ってりゃいいからさ?」
「それが僕にものを頼む態度?」
「めんどくせーオンナだなー、お前」
「やらない」
「あー、わりぃ、わりぃ。お願いしますー!」
「知っているでしょう? 僕におねだりする時は、どうすればいいか」
「前から気になってたんだけど、それ、キョーカツって言うんじゃねえの?」
「ビ、ジ、ネ、ス」
「キョーカツ!」
「そう。じゃあ、やーめ」
た、と言い終わる前に、アルフレッドが声を上げた。
「ちょ、ちょっと待った!」
他愛の無い。アルフレッドは人差し指を立てた。
「これでどーだ!?」
彼の手に僕の手を重ねた。
「アンリ! やってくれるんだな!」
中指と薬指を立ててあげた。
「…って、おい。3かよ」
「5にして欲しいの? いいよ?」
「わーったよ! 3な! その代わり俺好みのワンピース着させてやるっ!」
放送当日。
ウーティス寮では、サロンに全員集合して『週刊アルフォンソニュース!』を見ることになった。
僕は、主役の生徒の妹役で、5秒ほどの出演だった。番組が終わると、ユウタは拍手までしていた。
「めちゃくちゃ面白かったよ、レッド!」
ハルヤは苦笑している。
「なんてゆうか、今週の番組、物凄く力入ってたね」
「とってもキュートでしたよ、アンリ! 僕、萌えちゃいましたっ!」
「モエ? それはどういう意味なんだい?」
「あ、ジョシュアは知らなくていい言葉だよ。
シルヴァンが知ってる日本語って、偏りが激しいから、気にしないであげて」
「そう?」
シルヴァンは番組プロデューサーと握手している。
「レッド! グッジョブでした!」
「あったりまえだぜ!」
「でも、番組製作費が高かったんじゃないですか、今週は。
アンリを脱がせるのに、一体どのくらい使ったんです?」
ジョシュアが顔を顰める。
「アンリ、まさか出演料を取ったの?」
アルフレッドが片手を挙げる。
「ああ、いいんだよ、ジョシュア。俺のポケットマネーから出してっから」
「僕、まだ受け取ってないんだけど」
「解ってるって。番組見てから渡そうと思ってたんだよ」
ポケットから白い封筒を取り出した。
「これがアンリのギャラ。ゲスト出演、サンキュな!」
その軽さに嫌な予感がした。
封筒を引っ繰り返して、落ちてきたのは。コインが3枚。
「……3ドルって、どういうこと」
「だって、お前が3でいいって言ったんじゃん。それで天使の顎でも買ってくれよ」
「300に決まってるでしょう」
ひらりと身を交わして、ドアのところまで逃げた。
「じゃあ、残りの297ドルは」
アルフレッドが、瞬時にハリウッドスターの顔になる。
「綺麗だったぜ、アンリ」
自分の唇に指を当て、僕に投げた。何故か、ユウタが顔を赤くしている。
「じゃ!」
悪徳プロデューサーがサロンから走り去っていく。
逃げられた。ジョシュアとハルヤが笑い合っている。
お調子者が僕に笑い掛ける。
「良かったですね。ハリウッドスターからの投げキッスなんて、
297ドルでも買えないですよ。大サービスのギャランティを貰いましたね、アンリ?」
むかつく。
単細胞のくせになまいきだ。
fin
「おーい、アンリー!」
サロンで読書中、煩いのがやってきた。
「近くに居るんだから、もう少し小さな声で喋れない?」
「あのさ! 『週刊アルフォンソニュース!』の再現VTRにゲスト出演してくれねえ?」
「再現VTR? ああ、あのスキャンダルコーナーの?」
「そう、それ!」
『週刊アルフォンソニュース!』とは、
アルフレッド率いる生徒達が制作・出演・放送しているテレビ番組。
島内限定のローカル放送で、ご丁寧に録画プロテクトまで掛かっている。
その中に、僕達生徒のスキャンダルを暴露する、という意味不明の自虐コーナーがある。
本当に島の外に出せないネタが放送されるので人気はあるらしい。
確かに、この学院はニュースの宝庫だ。聖アルフォンソ学院の生徒達は、
存在自体がスキャンダルになる場合があるくらいだから、常にネタには困らない。
コーナー内では、本人出演の再現VTRまで用意している。
「王様の耳はロバの耳」と言うか、本人がそれでストレスの解消になるのならいいけれど。
僕には精神的露出狂の趣味はない。
「お断りだね。放送して欲しいネタなんかないよ」
「違うって。やるのは他の奴のスキャンダル。そのVで、どうしても女役が必要なんだよ」
ああ、そういうこと。
「やだ」
「早ぇよ! お前、文化祭では女装すんじゃん! Vではセリフもないし、
いつもみたいに、ぶすっとした顔で映ってりゃいいからさ?」
「それが僕にものを頼む態度?」
「めんどくせーオンナだなー、お前」
「やらない」
「あー、わりぃ、わりぃ。お願いしますー!」
「知っているでしょう? 僕におねだりする時は、どうすればいいか」
「前から気になってたんだけど、それ、キョーカツって言うんじゃねえの?」
「ビ、ジ、ネ、ス」
「キョーカツ!」
「そう。じゃあ、やーめ」
た、と言い終わる前に、アルフレッドが声を上げた。
「ちょ、ちょっと待った!」
他愛の無い。アルフレッドは人差し指を立てた。
「これでどーだ!?」
彼の手に僕の手を重ねた。
「アンリ! やってくれるんだな!」
中指と薬指を立ててあげた。
「…って、おい。3かよ」
「5にして欲しいの? いいよ?」
「わーったよ! 3な! その代わり俺好みのワンピース着させてやるっ!」
放送当日。
ウーティス寮では、サロンに全員集合して『週刊アルフォンソニュース!』を見ることになった。
僕は、主役の生徒の妹役で、5秒ほどの出演だった。番組が終わると、ユウタは拍手までしていた。
「めちゃくちゃ面白かったよ、レッド!」
ハルヤは苦笑している。
「なんてゆうか、今週の番組、物凄く力入ってたね」
「とってもキュートでしたよ、アンリ! 僕、萌えちゃいましたっ!」
「モエ? それはどういう意味なんだい?」
「あ、ジョシュアは知らなくていい言葉だよ。
シルヴァンが知ってる日本語って、偏りが激しいから、気にしないであげて」
「そう?」
シルヴァンは番組プロデューサーと握手している。
「レッド! グッジョブでした!」
「あったりまえだぜ!」
「でも、番組製作費が高かったんじゃないですか、今週は。
アンリを脱がせるのに、一体どのくらい使ったんです?」
ジョシュアが顔を顰める。
「アンリ、まさか出演料を取ったの?」
アルフレッドが片手を挙げる。
「ああ、いいんだよ、ジョシュア。俺のポケットマネーから出してっから」
「僕、まだ受け取ってないんだけど」
「解ってるって。番組見てから渡そうと思ってたんだよ」
ポケットから白い封筒を取り出した。
「これがアンリのギャラ。ゲスト出演、サンキュな!」
その軽さに嫌な予感がした。
封筒を引っ繰り返して、落ちてきたのは。コインが3枚。
「……3ドルって、どういうこと」
「だって、お前が3でいいって言ったんじゃん。それで天使の顎でも買ってくれよ」
「300に決まってるでしょう」
ひらりと身を交わして、ドアのところまで逃げた。
「じゃあ、残りの297ドルは」
アルフレッドが、瞬時にハリウッドスターの顔になる。
「綺麗だったぜ、アンリ」
自分の唇に指を当て、僕に投げた。何故か、ユウタが顔を赤くしている。
「じゃ!」
悪徳プロデューサーがサロンから走り去っていく。
逃げられた。ジョシュアとハルヤが笑い合っている。
お調子者が僕に笑い掛ける。
「良かったですね。ハリウッドスターからの投げキッスなんて、
297ドルでも買えないですよ。大サービスのギャランティを貰いましたね、アンリ?」
むかつく。
単細胞のくせになまいきだ。
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