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Marginal Prince Short Story
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■シルヴァンのヒミツに触れます
■アイヴィーとシルヴァンの出会い
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アイヴィーは、タクシードライバーとして空港に来ていた。
アルフォンソ学院の入学生を迎えに。

その筈が…空港近くの廃ビル。誰も来ない屋上に。
…なんで、こんな男を連れ込んでんだ、俺は。
男が僅かに暴れる。

「ムダな抵抗は止めてね? 俺、手荒なマネは好きじゃないの」

「じゃ、じゃあ、何ですか、この胸倉の手はっ!」

「あー。そーゆーこと言うんだ? 不法侵入者のお兄さん?
この島に潜り込もうなんて、命知らずだね。これからどうなるか、解ってる?」

「…わ、わかりません」

「髪の長いお医者様の前で、跪くことになると思うよ?
とってもコワイヒトなんだわ、ソイツ」

「い、い、命だけは…」

「あらら。命乞い? でかいズータイしてる割りに弱気なんだね。
残念だなあ。俺、どっちかって言うと、Mだから♪」

「ふざけるなっ!」

男が懐からナイフを抜いた。アイヴィーは口笛を吹く。

「お~。おにーさん、ヒキョーだね~? 俺、そういうのはスキよ?」

手を捻って避けますか、そう思った時。
遠くから石が飛んできて、その手に当たった。
隙を突いて、気を失わせる。小さく呻き、男は倒れた。

アイヴィーは短刀を拾う。石が飛んできた方向を見る。
後方で、髪の長い美人が微笑んでいた。

「すみません、余計なことでしたね。貴方お一人で充分のようです」

「いいや、サンキュー。あんたみたいな美人に助けて貰えて光栄だぜ?」

「残念ですが、僕、男ですよ? では失礼します」

「お、おい! せっかくだから、これ運ぶの手伝っていけって!」

「お断りです。もう、足は洗ったんですから。
さよなら、正義のヒーローさん」

長髪をなびかせて、屋上から飛び降りる。
無事に着地した彼は、俺に向かってキスを投げた。


その後、やっと来た応援に男を渡す。
警備部隊の連中が男を車に乗せる。
アイヴィーは「なあ」と声を掛ける。

「このおにーさん、ソクローフんとこに持って行くのか?」

「はい。そうですが?」

「んじゃ、明日は機嫌悪いだろうなあ。
コイツ、なんにも知らないだろうぜ、下っ端っぽいし」

「そうお伝えしておきます。では失礼致します」

「ん、お疲れさん…ってやべ! こんなことしてる場合じゃなかった!」


空港のカフェに急ぐ。
乗客との待ち合わせ場所。
今日は、タクシードライバーとして来ていたんだ。
アルフォンソ学院の入学生を迎えに。

「おや。また会いましたね、正義のヒーローさん?」

そこで待っていたのは、さっきの長髪美人だった。

彼をタクシーに乗せて、車を走らせる。

「お前が、マージナルプリンスとはな。全く、今年は面白い奴ばっかりだな」

「マージナル、プリンス?」

「アルフォンソ学院の生徒を此処ではそう呼ぶのさ。辺境の王子、ってな」

「成程。では、貴方のような方は、何とお呼びするのです?」

「ん?」

「タクシードライバーは仮の姿ですね? あの立回り、
まるで、どこかの軍にでも所属されているように見えましたが?」

「お前も、軍の匂いがしたぜ? …少し、ブランクがあるようだが?」

「…どうやら、貴方とは仲良くしておいた方が良さそうですね。
すみません、紹介が遅れました。僕の名は、シルヴァン・クラークです」

「俺はアイヴィーだ。ハイ、コレ名刺。気が向いたらいつでも呼びな。
アルフォンソ島観光に連れてってやるよ」

「ありがとうございます、アイヴィー。必ずご連絡します」

「おう。楽しみにしてるぜ、シルヴァン」


学院前に着く。
入学生を生徒代表に引き渡す。
マージナルプリンスの代表は、
白馬に乗って、シルヴァンを攫っていった。

タクシードライバーの仕事は此処までだ。
月桂樹の森の片隅で煙草を吸う。
もちろん、此処は禁煙だ。

「シルヴァン・クラーク、か。軍では聞いたことの無い名だが、
あのキレーな顔、どっかで…」


――シュミット中尉。そちらは?

――フォーフェンの子だよ。今日一日、軍を見学させてやりたいんだ。

――へえ。あの名高い諜報部員殿のお子さんですか。

――ああ。将来、有望な子だと思うよ。

――本当ですね。将来、確実に美人になる。

――アイヴィーさん。残念ですが、僕、男ですよ?

――あははっ、それはそれは失礼を。お坊ちゃん。

――止めて下さい、そんな呼び方。僕の名は…


あの子、か? フォーフェンは家族全員事故死した筈。
だが。アルフォンソ島には、ミイラだってやってくる。
あの月桂樹の館は、訳有りの子息の隠れ家だ。

例えば、已むに已まれぬ事情があって、事故死したことにし、
名を変えて、マージナルプリンスになったのだとしたら。

あの身のこなしは、軍の教えに沿ったものだ。
そして何より。

「やっぱ、美人になったな、エルリック」


fin
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