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Marginal Prince Short Story
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夏はビールとディーノと××2 続編
黒服の五名様は、あっけなくディーノの挑発に乗った。
この店が先払い式のキャッシュ・オン・デリバリーだったのは幸いだ。
俺はとりあえず、危険人物の皆さんを店の外に追い出して、
なるべく人目に付かない路地裏にお誘いした。

そこまでは良かったんだけど、やっぱ敵・味方の二択で言うと、
俺はディーノの味方をしなくちゃいけないわけで。

「今日はサイアクだわ」

俺の背後から「ああ?」と声が聞こえる。

「なんで俺が、ディーノと背中合わせて戦わなきゃいけないんだよ」

「興奮してんのか? まだイクなよ?」

「バッカじゃないの!? やられても助けてやんねーからなっ!?」

「ケッ。誰に言ってんだー? 派手に行くぜ!」


夏の夜に始まった大乱闘は、あっけない程、すぐに片が付いた。
暴れん坊マフィアは、倒れている五人を見下ろしなら、パンパンと手を払う。

「もー、終わっちまったかー。物足りねーヤツらだぜ。ヘヘッ」

「あーあー。ホントに派手にやってくれちゃって」

「おめーだって、こーするつもりだったんだろうが」

「あのねえ。一応、俺達のお仕事は、
『生徒を狙う存在からなるべく速やかに、穏便かつ完全に放逐すること』
なんだからさ。最初はもうちょっと穏便に」

「完全に放逐ってことは、結局ブッ飛ばすってことだろ」

「最終的にはそーなるかもだけど。まずはお話するでしょ。穏便に」

「フン。話して解ってくれたヤツが、今までに居たのか?」

「それは……たまーに、だけど居ることは居るよ? すぐ逃げてくヤツとか」

「腰抜けが」

「それで良いんだよ、俺達にとっては」

黒服の五名様は、もれなくコテンパンに伸されていたが、
全員、息をしていた。一緒に戦っていて解ったけど、
ディーノはただ遊んでいるだけで、全然本気じゃなかった。

おそらく、本来の力の一割も出してなかっただろう。
まあ、本気のディーノを、実際に見たことはないけど。想像はできる。

ディーノはスピードがあって、一打一打が強い。
その上、奇抜な攻撃を仕掛けるのが異常に上手かった。
相手にとって全く予想外の攻撃は、それ自体が高い殺傷力となる。
今日のディーノが、もしナイフやピストルを持っていったら、瞬殺だっただろう。

ディーノは顔がゴツ過ぎるから、細身なイメージないけど、
背が高いから身体は細いほうだ。華奢と言う程ではないけど、
決して太くは見えないあの腕から、かなり強烈なパンチを繰り出していたし、
相手に蹴りを入れる時を見ても、結構高く、足は上がるみたいだったし。

特に拳を真っ直ぐ前に出す時のかんじとかが、綺麗だった。
綺麗、なんてディーノに使う言葉じゃないけど。他の言葉が見つからない。

次に誰が、どのように動くか、もディーノは正確に予測して、行動していた。
広く視野を持ち、周りの些細な動きにも目を配っていないとできないことだ。

うちの警備組織に、ディーノ以上の実力を持った男が居るだろうか。
居る、と言える自信がない。俺を含めて。

普段のディーノは、口を開いたら下ネタばっかだし、
ファザコンだし、ガキっぽい言動が多いけど。
戦い方は、別人かと思うくらい、スマートだった。

戦闘は、多少センスもあるけど、何より経験が物を言う。
教科書を何度も読んだら上手くなるもんじゃない。
今まで実際に、何度戦って、何度死にかけたかだ。

実は、アイツがビールを飲んでる時に見てしまった。
ディーノの胸に古傷があったのを。
黒いモジャモジャで見え難くはなってたけど、あの傷はかなり深い。
しかも、あれだけ心臓に近ければ、
生死を彷徨う程の傷だったことは間違いない。

ディーノはアンダーグラウンドの人間。
アイツも地獄を見て、生き抜いてきた人間なんだろう。かつての俺以上に。

――本気のコイツとやったら、俺はどうなるだろう――

もしかしたら。
たった一瞬でも、そう考えた自分に嫌気が差した。

「さーて。飲み直すかっ」

ディーノの言葉に、俺の左肩がコケた。

「まだ飲むんかいっ! もうおうち帰れって!」

「帰れ帰れって言われると、ますます帰りたくねーなー」

「じゃあ、帰らないでクダサイ」

「おし。帰らねえ!」

「そう言うと思ったわっ!」

すると、車が三台こちらに向かってくるのが見えた。警備組織の車だ。
先頭を走っているのは、シルプルなデザインをしたシルバーの車。
あれはおそらく、うちの副司令官が所有している、フォード・モンデオ。
どうやら、副司令官が部下達を引き連れてやってきてくれたらしい。

「ん? あれは、おめーのお仲間か?」

「そうみたいだね。丁度イイや。このヒト達、運んで貰えるし」

「なんか面倒くさいヤツが居そうだな。
んじゃ俺は、ビールも飲んだし、帰るわ」

「えっ? 帰んの?」

思わずそう言ってしまった。帰って欲しくないから言ったんじゃない。
急に帰ると言われてビックリしたからなのに。ニヤニヤされた。

「俺様が居ねえとサビシイのか?」

「ダレがっ」

「なら、今日はこれでガマンしな?」

一瞬で間合いを詰められた。

予想外過ぎて、何もできなかった。
しまった、と思った時には、もう遅くて。
ヌルッとした生暖かいものが、俺の口の中に入っていた。

強引に奥まで入り込み、弱いトコロを攻められる。
固くて太い、黒ヒゲがジョリジョリ当たってる。

相手の肩に手を置き、押し戻そうとしてるのに、
上手く、力が、入らない。


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