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■ジョシュア
日曜日の朝。ウーティス寮ダイニングルーム。
聖アルフォンソ学院の朝食は、毎朝ビュッフェ方式。
寮の専属シェフが用意した一流ホテル並みのメニューが並ぶ。
今、席に着いているのは三人。高等部三年のジョシュア、シルヴァンは、
揃って、食後のホットコーヒーを飲んでいた。
「食った、食ったー」
高等部の二年レッドがオレンジジュースを飲み干しながら席を立つ。
「シルヴァン、出かける準備できたら俺の部屋来いよー」
「はーい。解りましたー」
シルヴァンの返事を聞いて、レッドがダイニングルームを出て行く。
コーヒーカップを持ったまま、ジョシュアがシルヴァンに尋ねる。
「今日は二人で出かけるのかい?」
「はい。街まで行ってきます。次のライブに使うライブハウスを選びに。
あと、レッドがギターや服を見に行きたいと言うので、
あちこちのお店を見に行くと思いますよ。
僕は、帰りにゲームセンターにも寄りたいと思ってますけど。
今日のアクティヴィティは『バンド活動エトセトラ』ですかね」
レッドとシルヴァンはデッドプリンスというバンドを組んでいるが、
メンバーはもう一人居る。高等部二年のハルヤだ。
バンドの活動なのに、ハルヤは一緒に行かないのだろうか、
とジョシュアが思っていると、シルヴァンのほうから話し始めた。
「ハルヤも誘ったんですけど、断られちゃったんですよー」
「断られた?」
「ええ。『俺、二人に付き合える体力ないし、めんどくさいから』って。
この前、ちょっと振り回し過ぎちゃったからですかねえ?」
「ああ……もしかしたら……そうかもしれないね」
そう言えば、いつかの日曜日。デッドプリンス三人で出かけた時があった。
午前中から出かけて、帰ってきたのは夜遅く。門限ギリギリの時間だった。
一日中、街で遊び倒してきたようで、
ハイテンションなレッドとシルヴァンに比べると、
ハルヤは疲労困憊といった表情をしていた。
「それじゃ、僕もお先に失礼しますね」
シルヴァンが席を立ち、ダイニングルームのドアを開ける。
「おっと。おはようございます」
ジョシュアからはシルヴァンの背中しか見えなかったが、
ドアの向こうで誰かと会ったらしい。
シルヴァンと入れ違いにダイニングルームに入ってきたのは、
まだ眠そうな顔をした高等部一年生。今年入った新入生、ユウタだ。
頭の右側に少し寝癖が付いている。
「おはよう、ユウタ」
「おはよ……あれ? ジョシュアだけ? もしかして俺が一番最後?」
「ううん。あと、アンリとハルヤも来ていないよ。
まだ眠っているんじゃないかな? 二人とも朝は苦手みたいだから」
「そっか。うわあ、今日の朝ご飯も美味しそうだなあー」
ここでの料理が珍しいようで、朝食のメニューに対して、
まだ新鮮なリアクションを見せる新入生を最上級生は微笑ましく見ていた。
ユウタが料理を少し食べたあと、ジョシュアはこう尋ねた。
「ユウタは、今日のアクティヴィティ、何をするか決まっているのかい?」
「それが、まだ決まってないんだよー。
毎週、毎週、日曜日に何かやんなきゃいけない、ってのが、
まだ慣れないっていうか。何して良いのか解んなくて」
「そんなに気負わなくても良いんだよ?
アクティヴィティは何をやっても大丈夫なんだから」
「うん。それは解ってるんだけどね……」
「レッドとシルヴァンは『バンド活動エトセトラ』だって言ってたよ?
ライブに使うライブハウスを選んだり、
買い物をしたり、ゲームセンターにも行くって」
「そっかー。俺もレッド達みたいに自由に考えられたら良いんだけど。
あ、ジョシュアは今日、何するの?」
「俺はアルセイデスと一緒に過ごそうと思ってるんだ」
アルセイデスとはジョシュアが幼少期から一緒に居るという馬のことだ。
今はこの学院の厩舎に居て、先日、ユウタもアルセイデスに会って、
少し乗馬の練習をさせて貰った。栗毛と大きな黒目が綺麗な馬だった。
「ってことは、ジョシュアは乗馬かあ。
休日に乗馬なんて……ジョシュアってやっぱりすごいなあ」
「そう、かな?」
「俺は何しようかなー。あー、悩んでる間に一日終わっちゃいそうだよー」
頭を抱えているユウタを見て、ジョシュアが微笑む。
「それじゃあ、今日は俺に付き合って貰えないかな? 良かったら、だけど」
「えっ? 一緒に行って良いの!?」
「うん。この前、ユウタと一緒に乗馬の練習をした時も、
初めてにしては本当に上手だったし、
今日一日練習したら、もっと上手くなるんじゃないかな?」
「そ、そうかな? あ、あの……」
「ん?」
「もし……もし、俺が馬に乗れるようになったら、
姉貴、ビックリするかな? 俺のこと見直すかな?」
「うん。きっと」
「じゃ、じゃあ、ジョシュアコーチ! 今日は一日、よろしくお願いしますっ!」
朝食のあと、ユウタはジョシュアと一緒に厩舎へ向かった。
厩舎の前に着くと、ジョシュアは立ち止まって、突然こんなことを言い出した。
「実はね、今日はユウタにプレゼントがあるんだ」
「えっ? プレゼント!? 俺に?」
「うん。この前一緒に乗馬をした時、
やっぱり、ユウタの分もあったほうが良いな、と思ってね」
こっちだよ、とジョシュアに連れられて行った先は、
厩舎とは別に建てられているクラブハウスだった。
ハウス内にはシャワールーム完備の更衣室や談話室などが入っている。
ジョシュアに連れて来られたのは、ロッカールーム。
『ジョシュア』と名前が入っているロッカーの隣には、
『ユウタ』と名前が入っていた。
「え? 俺専用のロッカー!? 俺、そんなに使わないかもしれないのに!?」
「ロッカーだけじゃないよ。プレゼントはこの中の」
ユウタの名前が入ったロッカーを開ける。中には乗馬服が入っていた。
ブラウンのジャケットに白のシャツ、クリーム色のズボンに黒のブーツ等、
乗馬に必要な物が一式全て揃っているようだった。
「こここ、この乗馬服がプレゼント!?」
「うん。気に入って貰えたかな?」
「う、嬉しいけど……こ、こんな、英国紳士みたいなの、
俺なんかには似合わないよ!? ジョシュアは似合うと思うけど」
「大丈夫。ユウタなら似合うよ。ねえ。一度、着てみて貰えないかな?」
言い方は優しくて控えめだが、どこか押しの強いジョシュアの笑顔に負けて、
ユウタは恥ずかしそうな顔で渋々頷いた。
「ありがとう、ユウタ。着替える間、携帯を預かっておくよ」
数分後、ユウタは頬をほんのりピンクに染めながら更衣室から出てきた。
「乗馬服の着方ってこれで良いのかな……」
「よく似合うよ、ユウタ。普段より大人っぽく見えるね」
「えっ、そ、そう?」
「うん。どうだい? お姉さんの目から見ても似合っているだろう?」
ジョシュアは右手にユウタの携帯電話を持っていた。
テレビ電話が通話状態になっており、その液晶画面にはユウタの姉が映っていた。
「あ、あああ、姉貴ー!? ジョシュア、いつの間に電話してたのっ!?」
「ユウタが着替えている間にね。勝手に使ってすまない。
でも、ユウタの乗馬服姿を彼女にも見て欲しくて。
――ね? 似合っているだろう?」
ジョシュアがユウタの姉に問い掛ける。
弟は顔を真っ赤にしながら、姉の言葉を待った。
fin
日曜日の朝。ウーティス寮ダイニングルーム。
聖アルフォンソ学院の朝食は、毎朝ビュッフェ方式。
寮の専属シェフが用意した一流ホテル並みのメニューが並ぶ。
今、席に着いているのは三人。高等部三年のジョシュア、シルヴァンは、
揃って、食後のホットコーヒーを飲んでいた。
「食った、食ったー」
高等部の二年レッドがオレンジジュースを飲み干しながら席を立つ。
「シルヴァン、出かける準備できたら俺の部屋来いよー」
「はーい。解りましたー」
シルヴァンの返事を聞いて、レッドがダイニングルームを出て行く。
コーヒーカップを持ったまま、ジョシュアがシルヴァンに尋ねる。
「今日は二人で出かけるのかい?」
「はい。街まで行ってきます。次のライブに使うライブハウスを選びに。
あと、レッドがギターや服を見に行きたいと言うので、
あちこちのお店を見に行くと思いますよ。
僕は、帰りにゲームセンターにも寄りたいと思ってますけど。
今日のアクティヴィティは『バンド活動エトセトラ』ですかね」
レッドとシルヴァンはデッドプリンスというバンドを組んでいるが、
メンバーはもう一人居る。高等部二年のハルヤだ。
バンドの活動なのに、ハルヤは一緒に行かないのだろうか、
とジョシュアが思っていると、シルヴァンのほうから話し始めた。
「ハルヤも誘ったんですけど、断られちゃったんですよー」
「断られた?」
「ええ。『俺、二人に付き合える体力ないし、めんどくさいから』って。
この前、ちょっと振り回し過ぎちゃったからですかねえ?」
「ああ……もしかしたら……そうかもしれないね」
そう言えば、いつかの日曜日。デッドプリンス三人で出かけた時があった。
午前中から出かけて、帰ってきたのは夜遅く。門限ギリギリの時間だった。
一日中、街で遊び倒してきたようで、
ハイテンションなレッドとシルヴァンに比べると、
ハルヤは疲労困憊といった表情をしていた。
「それじゃ、僕もお先に失礼しますね」
シルヴァンが席を立ち、ダイニングルームのドアを開ける。
「おっと。おはようございます」
ジョシュアからはシルヴァンの背中しか見えなかったが、
ドアの向こうで誰かと会ったらしい。
シルヴァンと入れ違いにダイニングルームに入ってきたのは、
まだ眠そうな顔をした高等部一年生。今年入った新入生、ユウタだ。
頭の右側に少し寝癖が付いている。
「おはよう、ユウタ」
「おはよ……あれ? ジョシュアだけ? もしかして俺が一番最後?」
「ううん。あと、アンリとハルヤも来ていないよ。
まだ眠っているんじゃないかな? 二人とも朝は苦手みたいだから」
「そっか。うわあ、今日の朝ご飯も美味しそうだなあー」
ここでの料理が珍しいようで、朝食のメニューに対して、
まだ新鮮なリアクションを見せる新入生を最上級生は微笑ましく見ていた。
ユウタが料理を少し食べたあと、ジョシュアはこう尋ねた。
「ユウタは、今日のアクティヴィティ、何をするか決まっているのかい?」
「それが、まだ決まってないんだよー。
毎週、毎週、日曜日に何かやんなきゃいけない、ってのが、
まだ慣れないっていうか。何して良いのか解んなくて」
「そんなに気負わなくても良いんだよ?
アクティヴィティは何をやっても大丈夫なんだから」
「うん。それは解ってるんだけどね……」
「レッドとシルヴァンは『バンド活動エトセトラ』だって言ってたよ?
ライブに使うライブハウスを選んだり、
買い物をしたり、ゲームセンターにも行くって」
「そっかー。俺もレッド達みたいに自由に考えられたら良いんだけど。
あ、ジョシュアは今日、何するの?」
「俺はアルセイデスと一緒に過ごそうと思ってるんだ」
アルセイデスとはジョシュアが幼少期から一緒に居るという馬のことだ。
今はこの学院の厩舎に居て、先日、ユウタもアルセイデスに会って、
少し乗馬の練習をさせて貰った。栗毛と大きな黒目が綺麗な馬だった。
「ってことは、ジョシュアは乗馬かあ。
休日に乗馬なんて……ジョシュアってやっぱりすごいなあ」
「そう、かな?」
「俺は何しようかなー。あー、悩んでる間に一日終わっちゃいそうだよー」
頭を抱えているユウタを見て、ジョシュアが微笑む。
「それじゃあ、今日は俺に付き合って貰えないかな? 良かったら、だけど」
「えっ? 一緒に行って良いの!?」
「うん。この前、ユウタと一緒に乗馬の練習をした時も、
初めてにしては本当に上手だったし、
今日一日練習したら、もっと上手くなるんじゃないかな?」
「そ、そうかな? あ、あの……」
「ん?」
「もし……もし、俺が馬に乗れるようになったら、
姉貴、ビックリするかな? 俺のこと見直すかな?」
「うん。きっと」
「じゃ、じゃあ、ジョシュアコーチ! 今日は一日、よろしくお願いしますっ!」
朝食のあと、ユウタはジョシュアと一緒に厩舎へ向かった。
厩舎の前に着くと、ジョシュアは立ち止まって、突然こんなことを言い出した。
「実はね、今日はユウタにプレゼントがあるんだ」
「えっ? プレゼント!? 俺に?」
「うん。この前一緒に乗馬をした時、
やっぱり、ユウタの分もあったほうが良いな、と思ってね」
こっちだよ、とジョシュアに連れられて行った先は、
厩舎とは別に建てられているクラブハウスだった。
ハウス内にはシャワールーム完備の更衣室や談話室などが入っている。
ジョシュアに連れて来られたのは、ロッカールーム。
『ジョシュア』と名前が入っているロッカーの隣には、
『ユウタ』と名前が入っていた。
「え? 俺専用のロッカー!? 俺、そんなに使わないかもしれないのに!?」
「ロッカーだけじゃないよ。プレゼントはこの中の」
ユウタの名前が入ったロッカーを開ける。中には乗馬服が入っていた。
ブラウンのジャケットに白のシャツ、クリーム色のズボンに黒のブーツ等、
乗馬に必要な物が一式全て揃っているようだった。
「こここ、この乗馬服がプレゼント!?」
「うん。気に入って貰えたかな?」
「う、嬉しいけど……こ、こんな、英国紳士みたいなの、
俺なんかには似合わないよ!? ジョシュアは似合うと思うけど」
「大丈夫。ユウタなら似合うよ。ねえ。一度、着てみて貰えないかな?」
言い方は優しくて控えめだが、どこか押しの強いジョシュアの笑顔に負けて、
ユウタは恥ずかしそうな顔で渋々頷いた。
「ありがとう、ユウタ。着替える間、携帯を預かっておくよ」
数分後、ユウタは頬をほんのりピンクに染めながら更衣室から出てきた。
「乗馬服の着方ってこれで良いのかな……」
「よく似合うよ、ユウタ。普段より大人っぽく見えるね」
「えっ、そ、そう?」
「うん。どうだい? お姉さんの目から見ても似合っているだろう?」
ジョシュアは右手にユウタの携帯電話を持っていた。
テレビ電話が通話状態になっており、その液晶画面にはユウタの姉が映っていた。
「あ、あああ、姉貴ー!? ジョシュア、いつの間に電話してたのっ!?」
「ユウタが着替えている間にね。勝手に使ってすまない。
でも、ユウタの乗馬服姿を彼女にも見て欲しくて。
――ね? 似合っているだろう?」
ジョシュアがユウタの姉に問い掛ける。
弟は顔を真っ赤にしながら、姉の言葉を待った。
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