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■ウーティス寮の愉快な仲間達
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「ユウタ! おっはよう!」
「おはよう、レッド」
ウーティスの朝。
食堂に向かう途中、ユウタはレッドに肩を叩かれた。
少し痛かったけど、朝陽のような笑顔が、
子役時代の彼と重なって、ちょっとドキッとした。
今でも時々、この人が目の前に居ることが信じられなくなる。
テレビやスクリーンの向こうに居たアルフレッド・ヴィスコンティが、
俺の前に居て「おはよう」なんて言ってくれるんなんて…
「なんだ、ぼーっとして。俺に見惚れた?」
「…ち、ちがうよ…あっ」
突然、レッドに引き寄せられる。
背に腕が回わっていて、目の前にレッドの顔があった。
「レ、レッド…?」
「俺って罪な男だな。夜だけでなく、朝もお前を虜にするなんて」
パチパチと拍手の音が聞こえる。
「いやー、熱演ですねー、レッド。朝から良いものを見せて貰いました♪」
「邪魔すんなよ、シルヴァン! この台詞、これからイイトコなんだぞ!」
「演技だったのかあ…ビックリさせないでよお、レッド」
項垂れるユウタ。
シルヴァンがぽんぽんと背中を叩く。
「ユウタの可愛いらしさも助演女優賞ものでしたよ♪」
「そうだぜ、ユウタ。俺、こういう台詞、練習中だからさ、
また不意打ちで相手して貰うからヨロシクなっ?」
「…な、なんで俺を相手に練習してんのさ」
「お前が一番、リアクション良いから♪」
後方から、冷たい声が近付いて来る。
「君達、朝からよくそんなに騒げるものだね」
「お前が朝弱過ぎなんだよっ!」
「煩いな。その見事な発声量を披露するのは、銀幕の中だけにして」
「じゃあ、アンリ。耳元で囁いてやろうか?」
レッドが肩に手を回そうとすると、さっと手を払い除ける。
「お断りだね」
「あははっ。相変わらず低血圧ですね、アンリ」
アンリはユウタの肩に手を置く。
「ユウタ。余り、彼等の傍に居ない方が良い」
「…ど、どうして?」
アンリはクスリと笑う。
「君にまで馬鹿が移ると、寮が騒がしくて敵わない」
ユウタの背にトンと触れて、先に行ってしまった。
レッドは声を絞り出す。
「あのやろぉ…」
「まあまあ、レッド」
「おはよ。朝なのに、みんな元気だね」
欠伸をかみ殺しながらハルヤが歩いて来た。
「お前、眠そうだなー。また遅くまで本読んでたのか?」
「うん…」
みんなの後ろに付いたハルヤは、
もう一度欠伸が出そうになって、急に微笑へ変わる。
何かを見て「あっ…」と言った。
「…今日から4月なんだね」
「そうですね。さて、僕達も朝食に向かいましょうか♪」
その日の夜。
サロンに集まっていた寮生達は笑い声が溢れていた。
特に一番笑い転げているのはレッド。
皆の中心で頬を膨らましているのはユウタだ。
ユウタの前のテーブルには、3枚の紙。
紙にはセロハンテープが付いている。
「じゃあ、俺の背中に、この紙を貼ったのは、
レッドとシルヴァンとアンリってこと? いつ貼ったの?」
「朝だよ、朝! お前、全然気が付かないからさー、
俺、最初っから笑っちまうところだったぜ!」
「…だから俺、構内を歩いている時、
やたらとみんなに見られてたのかあ…恥ずかしいよお…」
「ユウタ、恥ずかしがってる顔も可愛いぜ?
俺がお前の虜になっちまいそうだ♪」
「…ど、どーせ、それも台詞なんでしょ…」
肩を落とすユウタに、
ジョシュアは優しく声を掛け、事情を説明する。
「すまない、ユウタ。みんなのこと許してあげて。悪気は無いんだよ。
今日は、Poisson d'Avril(ポワソン・ダブリル)だから」
「ぽ、ぽわそん…何?」
「フランス語で、エイプリル・フールのことだよ。
もちろん、ジョークを言っても許される日なんだけど、
フランスでは子供達が魚の絵を描いた紙を、他の人の背中に貼って遊ぶそうなんだ。
ウーティスでは去年も、この遊びをやっていたんだよ」
「…なんで、魚なの?」
笑い疲れたレッドが大きく深呼吸する。
伸びをしたまま、ソファに凭れる。
「フランスでは魚に『愚か者』って意味があるみたいなんだ。
口をぱくぱくしてるところが間抜けに見えるらしいぜ?」
ハルヤが日本人向けに説明を補う。
「日本では、エイプリル・フールって『四月馬鹿』って意味でしょ?
ポワソン・ダブリルは『四月の魚』って意味なんだって。
去年は俺とレッドがやられたんだよねー」
「そうそう。俺なんか、朝、貼られた後、街で買い物してたんだぜ!?
なんか皆の視線が熱くて俺って未だに人気者なんだなあとか思ってたら、
背中に魚の紙付いてんだもんなー。
ジョシュアに剥がして貰うまで全然気が付かなかったし」
「単細胞だからでしょ?」
「アンリ、てめー!」
レッドが掴みかかる。
無表情のまま絡まれるアンリ。
それを温かく見守る寮生達。
ウーティス寮の4月1日は、今年も朝から夜まで笑い声に包まれる。
シルヴァンは、今年の魚に微笑みかける。
「ユウタのおかげで楽しい一日でした。
みんな、君を歓迎しているんですよ。
嫌いな子に、ちょっかいは出さないでしょう?」
「うん。今度は俺もレッドに魚を貼ろっかなー」
「それが良いですね。きっと成功しますよ」
「おいっ! お前等まで何言ってんだー?」
レッドが飛び掛かって、小さな風が吹く。
テーブルの上にあった紙が一枚舞い上がる。
紙の魚は楽しそうに宙を泳いだ。
fin
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「ユウタ! おっはよう!」
「おはよう、レッド」
ウーティスの朝。
食堂に向かう途中、ユウタはレッドに肩を叩かれた。
少し痛かったけど、朝陽のような笑顔が、
子役時代の彼と重なって、ちょっとドキッとした。
今でも時々、この人が目の前に居ることが信じられなくなる。
テレビやスクリーンの向こうに居たアルフレッド・ヴィスコンティが、
俺の前に居て「おはよう」なんて言ってくれるんなんて…
「なんだ、ぼーっとして。俺に見惚れた?」
「…ち、ちがうよ…あっ」
突然、レッドに引き寄せられる。
背に腕が回わっていて、目の前にレッドの顔があった。
「レ、レッド…?」
「俺って罪な男だな。夜だけでなく、朝もお前を虜にするなんて」
パチパチと拍手の音が聞こえる。
「いやー、熱演ですねー、レッド。朝から良いものを見せて貰いました♪」
「邪魔すんなよ、シルヴァン! この台詞、これからイイトコなんだぞ!」
「演技だったのかあ…ビックリさせないでよお、レッド」
項垂れるユウタ。
シルヴァンがぽんぽんと背中を叩く。
「ユウタの可愛いらしさも助演女優賞ものでしたよ♪」
「そうだぜ、ユウタ。俺、こういう台詞、練習中だからさ、
また不意打ちで相手して貰うからヨロシクなっ?」
「…な、なんで俺を相手に練習してんのさ」
「お前が一番、リアクション良いから♪」
後方から、冷たい声が近付いて来る。
「君達、朝からよくそんなに騒げるものだね」
「お前が朝弱過ぎなんだよっ!」
「煩いな。その見事な発声量を披露するのは、銀幕の中だけにして」
「じゃあ、アンリ。耳元で囁いてやろうか?」
レッドが肩に手を回そうとすると、さっと手を払い除ける。
「お断りだね」
「あははっ。相変わらず低血圧ですね、アンリ」
アンリはユウタの肩に手を置く。
「ユウタ。余り、彼等の傍に居ない方が良い」
「…ど、どうして?」
アンリはクスリと笑う。
「君にまで馬鹿が移ると、寮が騒がしくて敵わない」
ユウタの背にトンと触れて、先に行ってしまった。
レッドは声を絞り出す。
「あのやろぉ…」
「まあまあ、レッド」
「おはよ。朝なのに、みんな元気だね」
欠伸をかみ殺しながらハルヤが歩いて来た。
「お前、眠そうだなー。また遅くまで本読んでたのか?」
「うん…」
みんなの後ろに付いたハルヤは、
もう一度欠伸が出そうになって、急に微笑へ変わる。
何かを見て「あっ…」と言った。
「…今日から4月なんだね」
「そうですね。さて、僕達も朝食に向かいましょうか♪」
その日の夜。
サロンに集まっていた寮生達は笑い声が溢れていた。
特に一番笑い転げているのはレッド。
皆の中心で頬を膨らましているのはユウタだ。
ユウタの前のテーブルには、3枚の紙。
紙にはセロハンテープが付いている。
「じゃあ、俺の背中に、この紙を貼ったのは、
レッドとシルヴァンとアンリってこと? いつ貼ったの?」
「朝だよ、朝! お前、全然気が付かないからさー、
俺、最初っから笑っちまうところだったぜ!」
「…だから俺、構内を歩いている時、
やたらとみんなに見られてたのかあ…恥ずかしいよお…」
「ユウタ、恥ずかしがってる顔も可愛いぜ?
俺がお前の虜になっちまいそうだ♪」
「…ど、どーせ、それも台詞なんでしょ…」
肩を落とすユウタに、
ジョシュアは優しく声を掛け、事情を説明する。
「すまない、ユウタ。みんなのこと許してあげて。悪気は無いんだよ。
今日は、Poisson d'Avril(ポワソン・ダブリル)だから」
「ぽ、ぽわそん…何?」
「フランス語で、エイプリル・フールのことだよ。
もちろん、ジョークを言っても許される日なんだけど、
フランスでは子供達が魚の絵を描いた紙を、他の人の背中に貼って遊ぶそうなんだ。
ウーティスでは去年も、この遊びをやっていたんだよ」
「…なんで、魚なの?」
笑い疲れたレッドが大きく深呼吸する。
伸びをしたまま、ソファに凭れる。
「フランスでは魚に『愚か者』って意味があるみたいなんだ。
口をぱくぱくしてるところが間抜けに見えるらしいぜ?」
ハルヤが日本人向けに説明を補う。
「日本では、エイプリル・フールって『四月馬鹿』って意味でしょ?
ポワソン・ダブリルは『四月の魚』って意味なんだって。
去年は俺とレッドがやられたんだよねー」
「そうそう。俺なんか、朝、貼られた後、街で買い物してたんだぜ!?
なんか皆の視線が熱くて俺って未だに人気者なんだなあとか思ってたら、
背中に魚の紙付いてんだもんなー。
ジョシュアに剥がして貰うまで全然気が付かなかったし」
「単細胞だからでしょ?」
「アンリ、てめー!」
レッドが掴みかかる。
無表情のまま絡まれるアンリ。
それを温かく見守る寮生達。
ウーティス寮の4月1日は、今年も朝から夜まで笑い声に包まれる。
シルヴァンは、今年の魚に微笑みかける。
「ユウタのおかげで楽しい一日でした。
みんな、君を歓迎しているんですよ。
嫌いな子に、ちょっかいは出さないでしょう?」
「うん。今度は俺もレッドに魚を貼ろっかなー」
「それが良いですね。きっと成功しますよ」
「おいっ! お前等まで何言ってんだー?」
レッドが飛び掛かって、小さな風が吹く。
テーブルの上にあった紙が一枚舞い上がる。
紙の魚は楽しそうに宙を泳いだ。
fin
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