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Marginal Prince Short Story
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■レッド アンリ シルヴァン ハルヤ ソクーロフ
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聖アルフォンソ学院。グラウンド。
レッドは体育の授業を受けていた。

プロ仕様のサッカーグラウンドは広くて、
フィールドに立っているだけでわくわくする。
今日は紅白戦。本格的なゲームが行われている。

レッドは赤組のオフェンス。
試合は2対0で赤組が圧倒している。
2点ともレッドが入れていた。
赤組のディフェンスではシルヴァンが好セーブを見せていた為、
白組はなかなか点が入れられない。

ボールが白組に飛んで行ったところで、レッドはベンチに行く。
スポーツドリンクで喉を潤した後、
一人涼しい顔をしている体育見学者に声を掛けた。

「おい、アンリ。体調不良っていう割には、普通に本読んでんじゃん」

「若い君達とスポーツなんかしたら、怪我するよ」

「…若いって、同い年だろうが!」

「僕は頭脳労働派なの。本より重い物は持てない」

「どこのお姫様だ、お前は! ったく。俺の勇姿、目に焼き付けておけよっ!」

「…ボールが来たよ。早く試合に戻れば?」

「おっしゃ! んじゃまた1点決めてやるかなっ!」

砂埃を巻き上げながら、駆けて行ったレッドは、
宣言通りシュートを決めた。本人はまだまだ元気そうだが、
白組は体力、気力共に、気の毒なほど疲弊していた。

チーム編成が悪過ぎる、とアンリは思った。
レッドとシルヴァンを同じチームにするから、こうなるんだ。
レッドの運動神経は突出しているし、スポーツは大好きだ。
どんなスポーツも楽しそうに全力でプレーしている。

曲者はシルヴァンだ。彼の能力も非常に高い。
彼が体育の時間で、息を切らしたり、汗を拭う姿を見たことが無い。
力を抑えているというのだろうか。
あれだけの活躍を見せながら、へらへら笑えるなんて。

またレッドが1点入れた。これで4対0だ。

「面白くない試合…」

本を読もうと視線を落とした所で、ホイッスルが聞こえた。
試合が止まっている。
生徒達の輪の中で、うずくまっている生徒が一人。
レッドのよく通る声が聞こえてくる。

「大丈夫か、ハルヤ! 膝、血だらけじゃん!」

うずくまっているのはハルヤだった。
左膝が赤く染まっている。

「ハルヤを蹴ったのはお前か!?」

「止めてよ、レッド。俺がよそ見してて、ぶつかったんだ。
ごめんね、大丈夫だった?」

ハルヤに怪我をさせた生徒は、
腕にかすり傷を負った程度で、出血はしていなかった。
シルヴァンは、ハルヤの傷を見る。
それほど深くはないが、また赤い雫が砂に落ちる。

「ハルヤ…立てそうですか?」

「うん。たぶん……いてっ」

「僕が保健室へ連れて行きます。皆さんは試合を続けて…」

「シルヴァンはダメに決まってんだろ!」

「えー。どうしてダメなんですかー」

「お前は試合に使えるからダメ! あそこに使えないのが居んだろ。
おい、アンリ! 保健室まで付いてってやれ」

「…なんで僕が」

「大丈夫だよ、レッド。俺一人で…うっ」

「どこが大丈夫なの」

アンリは、ハルヤの腕を、自分の首に回す。

「…ごめんね、アンリ」

「全くだ」


ハルヤに肩を貸してやりながら、保健室まで連れて行く。
足を引きずりながら、やっと辿り着いた。
ソクーロフ博士が出迎える。

「おや。ハルヤ…今日は腹痛ではないようだね?」

「はい。体育で転んじゃって」

「そうか。おいで、手当てしよう。アンリ、付き添いありがとう。
君もゆっくりしていきたまえ」

「僕は此処に用はない。失礼するよ」

「あ、アンリ! あの、ありがと」

「どういたしまして」



ソクーロフ博士は、ハルヤの傷を洗いながら、くすりと笑いを漏らした。

「少し変わったかな、アンリは」

「…変わりましたか?」

「アンリが保健室に顔を見せるなんて、まず無いからね」

「あ、そうですね。アンリ、保健室嫌いだから…。
どうしてだろう。俺は保健室って好きだけどなあ」

「怖いんだよ」

「…保健室が?」

ソクーロフ博士は一瞬、美しい笑みを見せる。

「ハルヤ。先日、面白い薬…いや、よく効く薬が手に入ってね?」

「新しい薬ですか?」

「そう。君なら…必ず効くよ、ハルヤ」



ベンチに戻って来たアンリを見つけて、レッドが走ってくる。

「ハルヤの怪我の具合、どうだった?」

「知らない。引き渡してきただけだから。今頃、サディストの餌食になってるんじゃない?」

「博士をオオカミみたいに言ってんじゃねーよ!」



保健室では、怪我人が白衣の医師を見上げていた。

「あっ、あのっ、博士…」

「ん? 薬が効いてきたかい、ハルヤ?」

「はい。傷の痛みは引いてきました…でも…」

「でも、何かな?」

「なんか身体が熱く、なってきてる気が、するんですけど…」

「大丈夫。そういう薬だよ。ちょっとした副作用だ」

「そう、なんですか…」

ハルヤの呼吸に変化が現れる。
徐々に息が荒くなっていく。

「…はあ…んっ…博士…身体が、熱い、です…」

「息が上がっているね。ブレザーを脱いでも良いよ?」

「はい…」

「まだ、暑いかな?」

「はい…博士…なんか俺…頭が重くなって…」

「流石、ハルヤだ。よく効いているようだね。可愛いよ、ハルヤ」

「ソクーロフ、博士…あっ、あのっ…」

「なんだい? 私に、何かして欲しいことがあるのかな?」





ウーティス寮サロンにハルヤが戻ったのは、それから2時間後。
放課後になってからだった。

「ただいま…」

「ハルヤ、遅かったじゃないですか。
今、保健室へお迎えに行こうと思っていたところですよ」

「…ごめん、シルヴァン。俺、保健室で眠っちゃったみたいなんだ」

「どうしてです? 怪我を診て貰いに行ったのでしょう?」

「解んない。なんか、よく覚えてなくて…」

「…覚えてない?」

「ソクーロフ博士には『急激な運動の後だったから、
疲れて眠ったんだろう』って言われたんだ」

「でも…ハルヤ、サッカーの時、それほど動いてませんよね?」

「あ、うん。そうだよね…」

「やはり僕がお連れするべきでした。
今度保健室に行く時は、必ず僕をご指名して下さいね?」

「…指名って、ホストじゃないんだから…」

「保健室に、護衛は必要だと思うよ?」

「あ、アンリ…」

「あの鬼畜医師は、記憶を操作できるらしいからね?」

「記憶を? まっさか」

「いえ。その噂は僕も聞いたことがあります。アンリ、その情報は確かですか?」

「確かだよ。それより、ハルヤにサディストの爪痕が、
残っていないか調べた方が良いんじゃない?」

「そうですね。ハルヤ、ちょっと失礼します」

「うわあっ! ばかばか! 脱がせるなっ!」


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