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Marginal Prince Short Story
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■ユウタ ジョシュア アンリ
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「おっかしーなー。どこいったんだろ…」

ユウタはサロンのあちこちを探し回っている。
床に膝をついて、テーブルの上、ソファの下など覗いてみる。
見つからない。

「ユウタ。どうしたんだい?」

扉を開けたジョシュアが、跪いている寮生に尋ねる。
その後ろにはアンリが居た。
ユウタは、二人を見上げて言う。

「あっ、あのね、俺のクロックマンシャーペンが
なくなっちゃったんだ。見てないかな?」

「…クロックマン?」

「あの、うさぎのマスコットがついてるシャーペンなんだけど」

「ああ、シルヴァンが好きなうさぎだね。
ごめん、俺は見てないな。アンリは見掛けたかい?」

アンリが首を横に振ると、ユウタは肩を落とす。

「そっかあ。俺、もうちょっと探してみる」

アンリの隣からジョシュアが離れる。
ユウタの肩に手を置いた。

「ユウタ。俺も手伝うよ」
「ジョシュア…ありがと」
「なくなったのは、いつ?」
「昨日の夜。此処に、置いていっちゃったんだ」

ユウタがジョシュアに状況を説明する。
アンリは暖炉の傍に背を預け、二人の会話を聞いていた。

ユウタは、時間軸を行ったり来たりしながら、要領悪く説明している。
その混濁した話を、ジョシュアが適確に質問することで、話を整理していた。

要は、どう考えても此処にある筈であること、
他の寮生やバトラーに聞いても発見できなかった、という話らしい。

二人が手分けして、部屋の中を探し始める。
それまで黙っていたアンリが口を開く。

「ねえ」

二人の視線が集まる。
アンリは腕を組む。

「彼の仕業じゃない?」

ユウタは首を傾げる。

「彼って?」
「この学院に古くから…」

台詞が温かい手に覆われた。
ジョシュアが唇に指を当てている。
冷たい目が、何、と問う。
ユウタに聞こえないよう、小声で言う。

「ユウタの前で、それは言ってはいけないよ」

温かい手を静かに避ける。

「何故いけないの?」

ジョシュアは、アンリの耳許に唇を寄せる。

「ユウタはダメなんだ、幽霊の話」
「では、まだ言っていないの?」
「ああ。秘密にしている」

アルフォンソ学院の建物はどれも古い。
築100年でまだ新しい方だ。
当然、囁かれる怪談は後を絶たない。

悪戯好きの幽霊が住んでいるという噂があった。
所業は、新入生の持ち物を盗むだけ、という至って可愛らしいものだが、
毎年のように繰り返されるので、その存在は否定し難いものがあった。

上級生になると「今年も来たのか」と風物詩のように受け止めたり、
生徒のうちの一人として、むしろ愛着を感じている上級生も居た。
悪戯をされた新入生の中には、怖がって泣き出す生徒も10年に1度ほど居るらしい。

ジョシュアはこの学院に入学してから6年目になるが、
泣いた子にはまだ遭遇していなかった。

ユウタが声を上げる。

「急にどうしたの? 二人して」
「ああ、ユウタ。何でもないよ。気にしないで」
「う、うん」

アンリは壁から背を起こす。

「悪いけど、用事を思い出したから、部屋に戻るね。
Je pense qu'il n'est pas trouve.(見つからないと思うし)」

扉が閉まる。
ユウタは、ねえ、とジョシュアに尋ねる。

「今、アンリ、何て言ったの?」
「え。えっと…『見つかると良いね』かな?」
「へえ。そうなんだ。アンリ、意外と優しいんだね」
「そう、だね。じゃあ、ユウタ。もう少し探してみようか?」


fin
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