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■ジョシュア×アンリ
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アンリが入学してから、ひと月経った頃。
同じ寮のジョシュア・グラントが、部屋に訪れた。
差し出された紙に、アンリは首を傾げる。
「ミュージカルのチケット?」
「うん。教授から頂いたんだ。一緒にどうかな?」
ジョシュアが手に持っているのは、二枚のチケット。
島の中心街にある、劇場で行われるようだ。
「教授、急に用事ができたそうでね。アンリ、ミュージカルは好き?」
ジョシュアの腕が掴まれる。
冷たい手に触れられて、少し驚く。
アンリは真剣にジョシュアを見つめて、言った。
「行っては駄目」
琥珀の瞳が、いつもより光って見えた。
「…アンリ…?」
「あ、ごめん…」
手を離し、視線を逸らした。
「どうしたの、アンリ?」
「わからない…でも…」
アンリが困惑した表情を見せる。
あっ、と小さく呟き、ポケットからタロットを取り出す。
22枚のカードを、テーブルの上に散らす。
「ジョシュア。一枚、引いて」
「…あ、うん」
言われるまま、カードを取る。
そこに描かれた絵は、落雷で崩壊する塔。
アンリは「良くないね…」と眉を顰める。
「どういうカードなんだい?」
「『塔』だよ。災いを意味するカードだ」
「えっ」
「通常、タロットは正位置と逆位置では正反対の意味を持つのだけど、
このカードの場合は、どちらも悪い意味を示す」
「そう…」
「急にこんなこと言われても、信じられない、よね。
どうするかは、君の好きにすればいい」
「信じるよ、アンリ。今日は行かないことにする」
アンリは、ほっとした表情を見せる。
「うん。その方が、良いと思うよ」
翌朝。テレビで交通事故のニュースが流れる。
ジョシュアは、その事故現場を見て、背筋が凍るようだった。
潰れた車の背景に映っていたのは、劇場の建物だ。
アンリの部屋に向かう。
彼も同じニュースを見ていた。
アンリは冷笑する。
「気味が悪いでしょ? こんな人間」
「アンリ…」
「僕、子供の時からこうだから。君も、僕に近付かない方が良い」
「そんなわけないだろう。ありがとう、アンリ。俺のこと助けてくれて」
「…気味が悪くないの?」
「まさか。君のような子を見て、誰がそんなことを言うんだい?」
「父」
「え?」
「もうずっと前だけどね。彼が『塔』のカードを引いた時も、
似たようなことがあって…彼は僕を罵ったから」
「アンリ。君が居なければ、俺はきっと今、此処に居なかったね。
感謝してる。君が居てくれて良かった」
「…君も。生きていて、良かった」
fin
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アンリが入学してから、ひと月経った頃。
同じ寮のジョシュア・グラントが、部屋に訪れた。
差し出された紙に、アンリは首を傾げる。
「ミュージカルのチケット?」
「うん。教授から頂いたんだ。一緒にどうかな?」
ジョシュアが手に持っているのは、二枚のチケット。
島の中心街にある、劇場で行われるようだ。
「教授、急に用事ができたそうでね。アンリ、ミュージカルは好き?」
ジョシュアの腕が掴まれる。
冷たい手に触れられて、少し驚く。
アンリは真剣にジョシュアを見つめて、言った。
「行っては駄目」
琥珀の瞳が、いつもより光って見えた。
「…アンリ…?」
「あ、ごめん…」
手を離し、視線を逸らした。
「どうしたの、アンリ?」
「わからない…でも…」
アンリが困惑した表情を見せる。
あっ、と小さく呟き、ポケットからタロットを取り出す。
22枚のカードを、テーブルの上に散らす。
「ジョシュア。一枚、引いて」
「…あ、うん」
言われるまま、カードを取る。
そこに描かれた絵は、落雷で崩壊する塔。
アンリは「良くないね…」と眉を顰める。
「どういうカードなんだい?」
「『塔』だよ。災いを意味するカードだ」
「えっ」
「通常、タロットは正位置と逆位置では正反対の意味を持つのだけど、
このカードの場合は、どちらも悪い意味を示す」
「そう…」
「急にこんなこと言われても、信じられない、よね。
どうするかは、君の好きにすればいい」
「信じるよ、アンリ。今日は行かないことにする」
アンリは、ほっとした表情を見せる。
「うん。その方が、良いと思うよ」
翌朝。テレビで交通事故のニュースが流れる。
ジョシュアは、その事故現場を見て、背筋が凍るようだった。
潰れた車の背景に映っていたのは、劇場の建物だ。
アンリの部屋に向かう。
彼も同じニュースを見ていた。
アンリは冷笑する。
「気味が悪いでしょ? こんな人間」
「アンリ…」
「僕、子供の時からこうだから。君も、僕に近付かない方が良い」
「そんなわけないだろう。ありがとう、アンリ。俺のこと助けてくれて」
「…気味が悪くないの?」
「まさか。君のような子を見て、誰がそんなことを言うんだい?」
「父」
「え?」
「もうずっと前だけどね。彼が『塔』のカードを引いた時も、
似たようなことがあって…彼は僕を罵ったから」
「アンリ。君が居なければ、俺はきっと今、此処に居なかったね。
感謝してる。君が居てくれて良かった」
「…君も。生きていて、良かった」
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