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Marginal Prince Short Story
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■ジョシュア×アンリ
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「不愉快だ」

アンリは吐き捨てるように言った。
右腕には焦茶色の紙袋を抱えている。
アルフォンソ島のスーパーの袋だ。
中には、今夜バーベキューパーティで使う食材が入っている。

「なんで僕が、買い出しなんかしなくてはならないの」
「アンリがじゃんけんに負けるからだろう?」

隣を歩くジョシュアも紙袋を持っている。
こちらの方が幾分大きい。

二人並んで、学院の外を歩くなんて久し振りだ。
こんな可笑しなことになったのは、あのお調子者のせいだ。
放課後、寮に戻るとサロンで皆が騒いでいた。
レッドの思い付きのせいで、今夜バーベキューパーティをするらしい。
大体、何を祝ってのパーティなの。
最近パーティが多過ぎる。馬鹿騒ぎも大概にして貰いたい。
強制的にじゃんけんに参加させられて。
僕一人が負けた。

アンリの紙袋が、くしゃりと音を立てる。

「ジョシュア」
「ん?」
「じゃんけんに負けたのは僕なのに、どうして付いて来たの」
「アンリが1人でお使いできるか心配でね」
「僕を幼児だと思っているの」

僕の言葉は、柔らかな笑顔に吸い込まれてしまう。
彼はオレンジ色の空を仰ぐ。

「もう日が暮れてきたね、少し遅くなってしまったかな」

太陽は鎔鉱炉のように、赤く燃えていた。
都会と違い、高層ビルの無い街。
この島の空は、とても広い。
今、僕の目はオレンジしか映していない。

「明日も良い天気になりそうだね」

そう言う横顔も、オレンジ色をしていた。


他愛の無い会話を繰り返しながら、学院の方へと歩いていく。
公園を通り掛かった時、ジョシュアが足を止めた。
園内を見ている。中央に噴水がある。
他には、滑り台、シーソーなどのカラフルな遊具がある普通の公園だ。

「ジョシュア?」
「あの子、どうしたのかな…」

ブランコに一人で座っている男の子が居た。
5歳前後だろうか。今にも泣き出しそうな顔で、鎖を握り締めている。
その光景を、ジョシュアは深刻に見つめている。

アンリは呆れたとばかりに息を吐く。

「生徒代表殿? 彼の世話は君の仕事ではないよ」
「でも…」
「全く。お人好し、だね」

ブランコの鎖が鳴って、男の子が飛び降りた。
「ママ!」と叫んで、駆け出す。
その先には、一人の女性。
男の子は、彼女の足に飛び付いた。

母親は愛おしげに、我が子の髪を撫でる。
二人は、さも当たり前かのように手を繋いだ。
親子は公園を出て、僕達の傍を通り過ぎた。

「ママー、今日のごはんなにー?」

先程の泣きそうな表情が幻だったかのように、弾むような声だった。
母親の返事は聞こえなかった。
数秒後、男の子の喜ぶ声が耳に届いた。

夕焼けの下で、親子の長い影が出来る。
影の手も、しっかりと結ばれていた。

僕が子供の時。
僕の影は、いつもひとりぼっちだった。

「アンリ」

ジョシュアの微笑は夕焼けを浴びている。
彼は手を差し出して、小首を傾げた。

「手、繋いで帰ろうか?」


fin
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