忍者ブログ
Marginal Prince Short Story
Admin  +   Write
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

■ユウタ×ミハイル
-------------------
「ごめんね、ユウタ。僕のせいで…」

ミハイルは右腕に焦茶色の紙袋を抱えている。
アルフォンソ島のスーパーの袋だ。
中には、今夜バーベキューパーティで使う食材が入っている。

「僕のせいで、お買い物、重たくなっちゃって、ごめんね…」
「もう何言ってんだよ。ミハイル一人分でそんなに重たくなんないって」
「ほんと? ほんとに?」
「ほんとだよ。ミハイルが一緒に来てくれて助かってる」

隣を歩くユウタも紙袋を持っている。
こちらの方が幾分大きい。

レッドの提案で、今夜はバーベキューパーティ。
まあ、そこまではいつものことなんだけど。
今日はミハイルも一緒。
ミハイルは最近レッドが出演した映画を見てる。
それで俺、レッドに教えてあげたんだ。
「ミハイルが映画面白いって言ってたよ」って。
そしたらレッド、喜んじゃって。
早速、ミハイルを呼んでパーティしようって話になっちゃったんだよね。
買い出しじゃんけんは俺が負けて。
出掛けようとしたら、ミハイルに制服のしっぽを掴まれた。
「僕も一緒に行ってもいい?」って聞かれたんだ。

ミハイルの紙袋が、くしゃりと音を立てる。

「ユウタ」
「なあに、ミハイル」
「あの、僕ね」
「うん」
「僕ね、今日、初めてだったの」
「ん?」
「初めて、島のスーパーでお買い物したの」
「え。ほんと?」
「うん。僕、普段は学院の外にも行かないし」
「そっかあ。で、どうだった? 初めてのスーパー」
「うん。いろんな物がいっぱいあって、僕、びっくりしちゃった」
「だから、ミハイル、きょろきょろしてたんだ」

他愛の無い会話を繰り返しながら、学院の方へと歩いていく。
公園を通り掛かった時、ミハイルが足を止めた。
ユウタのおでこと、ミハイルの背中がぶつかる。

「ごめんね、ユウタ、僕のせいでっ」
「ああ、全然ヘーキだよ。ミハイル、公園がどうかしたの?」
「ううん、ごめんね。何でもないの…」

ユウタは園内を見てみる。中央に噴水がある。
他には、滑り台、シーソーなどのカラフルな遊具がある普通の公園だ。
ブランコに一人で座っている男の子が居た。
5歳前後だろうか。今にも泣き出しそうな顔で、鎖を握り締めている。

「ミハイル。あの子、気になるの?」
「あ、うん。どうしたのかなって、ちょっと思って…」

ブランコの鎖が鳴って、男の子が飛び降りた。
「ママ!」と叫んで、駆け出す。
その先には、一人の女性。
男の子は、彼女の足に飛び付いた。

母親は愛おしげに、我が子の髪を撫でる。
二人は、さも当たり前かのように手を繋いだ。
親子は公園を出て、俺達の傍を通り過ぎた。

「ママー、今日のごはんなにー?」

先程の泣きそうな表情が幻だったかのように、弾むような声だった。
母親の返事は聞こえなかった。
数秒後、男の子の喜ぶ声が耳に届いた。

夕焼けの下で、親子の長い影が出来る。
影の手も、しっかりと結ばれていた。

「良かったあ、お母さん迎えに来てくれて。ね、ミハイル」
「うん。良かった」

ミハイルの微笑は夕焼けを浴びている。
スカイブルーの大きな瞳が、少し翳る。

「ね。ユウタ」
「うん?」
「あの…」
「うん」
「あの、ね」
「うん」
「えっと…あっ、ごめん、やっぱり…」
「ミハイル。俺に遠慮なんかしなくて良いんだよ?」
「ほんと? 怒らない?」
「怒るわけないよ。何でも言って?」

ミハイルの足が止まる。
恥ずかしそうに、紙袋を両腕で抱き締めた。

「僕も、手、繋ぎたいな」


fin
PR
カレンダー
06 2026/07 08
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
キャラ名、CP名などで作品検索可
アーカイブ
カウンター
バーコード
material by bee  /  web*citron
忍者ブログ [PR]