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■ユウタ×エンジュ
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「エンジュ、ありがと。買い物まで手伝って貰っちゃって」
ユウタは右腕に焦茶色の紙袋を抱えている。
アルフォンソ島のスーパーの袋だ。
中には、今夜バーベキューパーティで使う食材が入っている。
「重いのばっか持ってくれてるし…」
「これくらい何ともない」
隣を歩くエンジュも紙袋を抱えている。
こちらの方が幾分大きい。
レッドのアイディアで、今夜はバーベキューパーティ。
買い出しじゃんけんに俺が負けて。
スーパーに来るまで間に、街の裏通りでエンジュを見掛けた。
「エンジュ。あんなところで何してたの?」
「何も」
「なんかさ、しゃがんでたじゃん? 具合でも悪かったの?」
「いいや。あの通りには、猫が一匹住んでいる」
「あ。そうなんだ。エンジュ、猫、好きなの?」
「別に。あいつが勝手に寄ってくるだけだ」
「俺も見たいな、その猫。連れてって、エンジュ」
「お前は、本当に…」
「え?」
「…いや。来い、こっちだ」
「やったあ。ありがと!」
「礼には及ばない」
「あっ、ねえ。エンジュもバーベキューパーティに来て?」
「俺が?」
「うん。ウーティスのみんなでやるんだ。ね、いいでしょ?」
「そうだな」
「うわあ、やったー! みんなも喜ぶよ!」
「変な寮だな、パーティなんかするなんて。アルファルドとは全然違う」
「だって、レッドがやろうやろう言うんだよー」
他愛も無い会話を繰り返しながら、後を付いて行く。
公園を通り掛かった時、エンジュが足を止めた。
園内を見ている。中央に噴水がある。
他には、滑り台、シーソーなどのカラフルな遊具がある普通の公園だ。
「エンジュ、どうしたの?」
「いや」
ブランコに一人で座っている男の子が居た。
5歳前後だろうか。今にも泣き出しそうな顔で、鎖を握り締めている。
「エンジュ…あの子、見てたの?」
「別に」
「あっ、あれ、お母さんかな?」
ブランコの鎖が鳴って、男の子が飛び降りた。
「ママ!」と叫んで、駆け出す。
その先には、一人の女性。
男の子は、彼女の足に飛び付いた。
母親は愛おしげに、我が子の髪を撫でる。
二人は、さも当たり前かのように手を繋いだ。
親子は公園を出て、俺達の傍を通り過ぎた。
「ママー、今日のごはんなにー?」
先程の泣きそうな表情が幻だったかのように、弾むような声だった。
母親の返事は聞こえなかった。
数秒後、男の子の喜ぶ声が耳に届いた。
夕焼けの下で、親子の長い影が出来る。
影の手も、しっかりと結ばれていた。
「良かったね、お母さんが来て」
「そうだな」
「あ。そう言えば、エンジュの家族ってどんな人なの? 兄弟とか居るの?」
「妹が居た」
「居たって…」
「もう居ない」
俺の足が止まる。
すっとエンジュが俺を追い抜かした。
俺の視界が前髪で覆われる。
「ごめん、俺…」
「早く来い。猫を見に行くのだろう?」
「あ、うん」
背中を追い駆けて行く。
俺が追い着くと、エンジュは歩くスピードを少し落としてくれた。
「エンジュ、妹のこと好きなんだね」
「何故、そう思う?」
「なんか、お兄ちゃんって顔してた」
「どんな顔だ、それは」
「優しい顔」
「俺は、優しくなどない」
「優しいよ。俺のこと助けてくれたもん。…ねえ。エンジュ」
俺は手を差し出す。
俺の手の平はオレンジ色になる。
エンジュは首を傾げる。
揺れた黒髪はセピア色に見えた。
「なんだ、その手は」
「手、繋ごう? 俺が半分貰ってあげる」
「何を」
「エンジュの淋しい気持ち」
エンジュは一度だけ目を瞬いて、
ふっと微笑を漏らした。
「お前、変な奴だな」
fin
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「エンジュ、ありがと。買い物まで手伝って貰っちゃって」
ユウタは右腕に焦茶色の紙袋を抱えている。
アルフォンソ島のスーパーの袋だ。
中には、今夜バーベキューパーティで使う食材が入っている。
「重いのばっか持ってくれてるし…」
「これくらい何ともない」
隣を歩くエンジュも紙袋を抱えている。
こちらの方が幾分大きい。
レッドのアイディアで、今夜はバーベキューパーティ。
買い出しじゃんけんに俺が負けて。
スーパーに来るまで間に、街の裏通りでエンジュを見掛けた。
「エンジュ。あんなところで何してたの?」
「何も」
「なんかさ、しゃがんでたじゃん? 具合でも悪かったの?」
「いいや。あの通りには、猫が一匹住んでいる」
「あ。そうなんだ。エンジュ、猫、好きなの?」
「別に。あいつが勝手に寄ってくるだけだ」
「俺も見たいな、その猫。連れてって、エンジュ」
「お前は、本当に…」
「え?」
「…いや。来い、こっちだ」
「やったあ。ありがと!」
「礼には及ばない」
「あっ、ねえ。エンジュもバーベキューパーティに来て?」
「俺が?」
「うん。ウーティスのみんなでやるんだ。ね、いいでしょ?」
「そうだな」
「うわあ、やったー! みんなも喜ぶよ!」
「変な寮だな、パーティなんかするなんて。アルファルドとは全然違う」
「だって、レッドがやろうやろう言うんだよー」
他愛も無い会話を繰り返しながら、後を付いて行く。
公園を通り掛かった時、エンジュが足を止めた。
園内を見ている。中央に噴水がある。
他には、滑り台、シーソーなどのカラフルな遊具がある普通の公園だ。
「エンジュ、どうしたの?」
「いや」
ブランコに一人で座っている男の子が居た。
5歳前後だろうか。今にも泣き出しそうな顔で、鎖を握り締めている。
「エンジュ…あの子、見てたの?」
「別に」
「あっ、あれ、お母さんかな?」
ブランコの鎖が鳴って、男の子が飛び降りた。
「ママ!」と叫んで、駆け出す。
その先には、一人の女性。
男の子は、彼女の足に飛び付いた。
母親は愛おしげに、我が子の髪を撫でる。
二人は、さも当たり前かのように手を繋いだ。
親子は公園を出て、俺達の傍を通り過ぎた。
「ママー、今日のごはんなにー?」
先程の泣きそうな表情が幻だったかのように、弾むような声だった。
母親の返事は聞こえなかった。
数秒後、男の子の喜ぶ声が耳に届いた。
夕焼けの下で、親子の長い影が出来る。
影の手も、しっかりと結ばれていた。
「良かったね、お母さんが来て」
「そうだな」
「あ。そう言えば、エンジュの家族ってどんな人なの? 兄弟とか居るの?」
「妹が居た」
「居たって…」
「もう居ない」
俺の足が止まる。
すっとエンジュが俺を追い抜かした。
俺の視界が前髪で覆われる。
「ごめん、俺…」
「早く来い。猫を見に行くのだろう?」
「あ、うん」
背中を追い駆けて行く。
俺が追い着くと、エンジュは歩くスピードを少し落としてくれた。
「エンジュ、妹のこと好きなんだね」
「何故、そう思う?」
「なんか、お兄ちゃんって顔してた」
「どんな顔だ、それは」
「優しい顔」
「俺は、優しくなどない」
「優しいよ。俺のこと助けてくれたもん。…ねえ。エンジュ」
俺は手を差し出す。
俺の手の平はオレンジ色になる。
エンジュは首を傾げる。
揺れた黒髪はセピア色に見えた。
「なんだ、その手は」
「手、繋ごう? 俺が半分貰ってあげる」
「何を」
「エンジュの淋しい気持ち」
エンジュは一度だけ目を瞬いて、
ふっと微笑を漏らした。
「お前、変な奴だな」
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