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■ディーノ×アンリ
■アンリシナリオベース
-----------------------
聖アルフォンソ学院 通信室。
アンリは、完全防音のプライベートブースに入った。
もうすぐ午後の講義が始まるというのに、呼び出しを受けた。
しかも次は神秘学の特別講義だ。邪険な態度で受話器を取る。
「何の用? 少しは時差を考えて」
「おや。今日は機嫌が悪いな、お姫様?」
マフィアは低い声で笑った。
シチリアの地下組織、中でも最悪と噂されるマンゾーニ家。
次期ボス、ディーノ・マンゾーニからの電話だった。
彼等に僕の警護を依頼していた。
僕達は莫大な金の下に結託したビジネスパートナーだった。
僕はマフィアに聞こえるように溜め息を吐く。
「早く用件を言って。僕、この後、講義なの」
「ああ。そういやお前、学生だったな」
「ディーノ…早く」
「気が短いな。今度、聖アルフォンソ祭があるって言っていただろう?」
「それがどうかした?」
「お前は、仮装行列にどんなドレスで参加するんだ?」
「…ビジネスの話をしないのなら切るよ」
マフィアは狼のように低く笑う。
そして、告げた。
「あちらさん、本気らしいぜ? 祭当日、お前を殺しに来る」
死の宣告を受けてさえ、僕は冷笑していた。
今日、引いたタロットカードが思い浮かぶ。
トランペットを奏でる天使の絵。『審判』のカードだ。
「Le Jugement」
「審判がどうかしたのか?」
「悪い知らせが入る、ってタロットに出ていたんだけど…本当に悪いね」
「へえ。大当たりだな。さすが、サン・ジェルマンの血を引く者だ」
「当てられても、嬉しくないよ」
「凄い数を送り込んでくるようだ。舞踏会ができそうだぜ?」
「彼は、そんなに消したいんだね…僕のこと」
僕一人を抹消する為に、大勢の人間を使う。
どうして、そこまでしなくてはならないの?
僕は、そんなに、生きていてはいけない存在なの?
「殺させねえよ、アンリ」
マフィアは真摯な声で言う。
「言っただろう? 俺がお前を守る」
一瞬の沈黙の後。
僕は笑みを含みながら、言う。
「そういうビジネスパートナーだものね、僕達は。宜しく頼むよ?
僕からの報酬が途絶えて欲しくなければ、気を抜かないことだね」
マフィアの声に僅かな怒気が込められる。
「お前、金だけ積まれれば、マフィアは動くと思っているのか?」
「違った?」
「俺達はな、命と誇りを懸けられない相手とはファミリーにはならない」
「さすがだね、誇り高きマンゾーニ家は」
「何故、お前が殺されなくてはならない? だから俺達はお前に付いている」
ディーノの言葉が頭に鳴り響く。
何故、殺されなくてはならない?
それはこちらが聞きたいことだ。
こんなこと、馬鹿げてる。
何故、僕があの人に命を狙われなくてはならないの?
「いいか、アンリ。向こうが本気で来るのは間違いない」
「うん」
「俺達も本気でお相手させて貰う。相当派手な舞踏会になるぜ」
「…うん。解ってる」
派手ということは、血が流れるということだ。
あの人と僕、たった二人の問題なのに、
巻き込まれている人間達が大勢居る。
僕も自分の身を守る為に、マンゾーニという刀を手に入れ、
この下らない争いに巻き込んでしまった。
どうして、こんなことを続けなければならないのだろう。
「なあ、アンリ。本当に良いのか?」
「何が?」
「このイタチごっこは、どちらかが死ぬまで終わらない。そうだろ?」
「ああ。多分ね」
「なら、何故こちらから仕掛けない? お前の一言で俺達は」
「ディーノ。その必要は、ないと言った筈だ」
言葉を遮られたマフィアは、笑いを含んで言う。
「防戦一方っては、俺達のシュミじゃないんだが?」
「君達と一緒にしないで。僕には僕の遣り方がある」
「お前、馬鹿だろ。あんな奴に何の情を感じている?」
「…僕は、降り懸かる火の粉を払っているだけだ」
「見掛け通り甘いんだな、俺達のお姫様は」
「ディーノ。君達は僕の指示通りに動く。そうだね?」
「ああ。解ってるよ。仰せのままに。お姫様」
「用件はこれでおしまい? 悪い連絡ありがとう」
「待てって。最後に報酬について確認しておきたいことがある」
「何?」
「舞踏会が終わったら、俺と踊ってくれるよな?」
歪んだ口許が見えるようだった。
いつのまにか僕の左手は耳朶に触れていた。
熱い。
この男の歯が当たった場所だった。
手を離して、近くにあった髪に触れる。
毛先まで梳くと、手から力が抜けた。
「…好きにすれば」
「そいつを聞いて安心したぜ」
「その代わり、必ず…僕を守って」
「ああ。任せろ。じゃあな、俺のお姫様」
「ねえ」
「ん?」
右手に力を込める。
受話器が小さく軋んだ。
「…君も、死なないで」
fin
■アンリシナリオベース
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聖アルフォンソ学院 通信室。
アンリは、完全防音のプライベートブースに入った。
もうすぐ午後の講義が始まるというのに、呼び出しを受けた。
しかも次は神秘学の特別講義だ。邪険な態度で受話器を取る。
「何の用? 少しは時差を考えて」
「おや。今日は機嫌が悪いな、お姫様?」
マフィアは低い声で笑った。
シチリアの地下組織、中でも最悪と噂されるマンゾーニ家。
次期ボス、ディーノ・マンゾーニからの電話だった。
彼等に僕の警護を依頼していた。
僕達は莫大な金の下に結託したビジネスパートナーだった。
僕はマフィアに聞こえるように溜め息を吐く。
「早く用件を言って。僕、この後、講義なの」
「ああ。そういやお前、学生だったな」
「ディーノ…早く」
「気が短いな。今度、聖アルフォンソ祭があるって言っていただろう?」
「それがどうかした?」
「お前は、仮装行列にどんなドレスで参加するんだ?」
「…ビジネスの話をしないのなら切るよ」
マフィアは狼のように低く笑う。
そして、告げた。
「あちらさん、本気らしいぜ? 祭当日、お前を殺しに来る」
死の宣告を受けてさえ、僕は冷笑していた。
今日、引いたタロットカードが思い浮かぶ。
トランペットを奏でる天使の絵。『審判』のカードだ。
「Le Jugement」
「審判がどうかしたのか?」
「悪い知らせが入る、ってタロットに出ていたんだけど…本当に悪いね」
「へえ。大当たりだな。さすが、サン・ジェルマンの血を引く者だ」
「当てられても、嬉しくないよ」
「凄い数を送り込んでくるようだ。舞踏会ができそうだぜ?」
「彼は、そんなに消したいんだね…僕のこと」
僕一人を抹消する為に、大勢の人間を使う。
どうして、そこまでしなくてはならないの?
僕は、そんなに、生きていてはいけない存在なの?
「殺させねえよ、アンリ」
マフィアは真摯な声で言う。
「言っただろう? 俺がお前を守る」
一瞬の沈黙の後。
僕は笑みを含みながら、言う。
「そういうビジネスパートナーだものね、僕達は。宜しく頼むよ?
僕からの報酬が途絶えて欲しくなければ、気を抜かないことだね」
マフィアの声に僅かな怒気が込められる。
「お前、金だけ積まれれば、マフィアは動くと思っているのか?」
「違った?」
「俺達はな、命と誇りを懸けられない相手とはファミリーにはならない」
「さすがだね、誇り高きマンゾーニ家は」
「何故、お前が殺されなくてはならない? だから俺達はお前に付いている」
ディーノの言葉が頭に鳴り響く。
何故、殺されなくてはならない?
それはこちらが聞きたいことだ。
こんなこと、馬鹿げてる。
何故、僕があの人に命を狙われなくてはならないの?
「いいか、アンリ。向こうが本気で来るのは間違いない」
「うん」
「俺達も本気でお相手させて貰う。相当派手な舞踏会になるぜ」
「…うん。解ってる」
派手ということは、血が流れるということだ。
あの人と僕、たった二人の問題なのに、
巻き込まれている人間達が大勢居る。
僕も自分の身を守る為に、マンゾーニという刀を手に入れ、
この下らない争いに巻き込んでしまった。
どうして、こんなことを続けなければならないのだろう。
「なあ、アンリ。本当に良いのか?」
「何が?」
「このイタチごっこは、どちらかが死ぬまで終わらない。そうだろ?」
「ああ。多分ね」
「なら、何故こちらから仕掛けない? お前の一言で俺達は」
「ディーノ。その必要は、ないと言った筈だ」
言葉を遮られたマフィアは、笑いを含んで言う。
「防戦一方っては、俺達のシュミじゃないんだが?」
「君達と一緒にしないで。僕には僕の遣り方がある」
「お前、馬鹿だろ。あんな奴に何の情を感じている?」
「…僕は、降り懸かる火の粉を払っているだけだ」
「見掛け通り甘いんだな、俺達のお姫様は」
「ディーノ。君達は僕の指示通りに動く。そうだね?」
「ああ。解ってるよ。仰せのままに。お姫様」
「用件はこれでおしまい? 悪い連絡ありがとう」
「待てって。最後に報酬について確認しておきたいことがある」
「何?」
「舞踏会が終わったら、俺と踊ってくれるよな?」
歪んだ口許が見えるようだった。
いつのまにか僕の左手は耳朶に触れていた。
熱い。
この男の歯が当たった場所だった。
手を離して、近くにあった髪に触れる。
毛先まで梳くと、手から力が抜けた。
「…好きにすれば」
「そいつを聞いて安心したぜ」
「その代わり、必ず…僕を守って」
「ああ。任せろ。じゃあな、俺のお姫様」
「ねえ」
「ん?」
右手に力を込める。
受話器が小さく軋んだ。
「…君も、死なないで」
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