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Marginal Prince Short Story
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■ハルヤ×ミハイル 他多数
■ゲーム・小説ベース
---------------------------
「ミハイル、連れて来たよー!」

ユウタの後ろから、金髪の少年が顔を出す。
「こ、こんにちは…」
ミハイルがウーティス寮のサロンに遊びに来た。
手には白い紙袋を握り締めている。
サロンに居たのは、ジョシュアとハルヤだった。
ジョシュアは柔らかい微笑を見せる。
「ようこそ、ミハイル。ウーティスに来てくれてありがとう。嬉しいよ」
「ジョシュア…優しいんだね…」
ハルヤは本を閉じて片手を挙げた。
「こんちは、ミハイル。また来てくれたんだ?」
金髪の少年は俯きがちに挨拶を返す。
「こ、こんにちは。ハルヤ…また来て、ごめんね…」
眼鏡の奥の瞳が大きく開かれる。
「あ、ごめん…そう聞こえちゃった?
あの、俺、嬉しいよ? また来てくれて」
「そ、そう、なの?」
「うん。あれ? ミハイル、いいにおいする…」
甘い匂いに誘われたように、ハルヤが顔を近付ける。
「え。ちょ、ちょっと…ハルヤ…」
ミハイルの頬がピンクに染まると、ユウタは大きな声を出した。
「あ、あのさっ! ミハイル、おやつ持って来てくれたんだよね!?」

ミハイルは「あ、そうだった」と持っていた紙袋の中から、
もたもたと四角い箱を取り出して、テーブルの上に置く。
蓋を開けると甘い香り。
中に入っていたのはホットアップルパイ。
「あのね、『誘惑の代償』…みんな食べる?」
聖アルフォンソ島ではアップルパイにそんな名前が付いていた。
『誘惑の代償』から温かい湯気とシナモンの香りが昇る。
「さっきね、今日のおやつにって、ドニが作ってくれたの」
「ドニって?」
ユウタの質問に、ミハイルが答えようとすると、
シルヴァンが二人の後ろから突然顔を出した。
「ドニ・ドーム。シュヌーシア寮のシェフですよ」
「うわあ、シルヴァン! いつから居たの!?」
「今からです♪ 楽しそうな声に誘われましてね。
あ、ドニは各国家庭料理が得意なんですよ。
アップルパイって、アメリカでは家庭の味ですから。ね、ミハイル?」
「うん…シルヴァン…違う寮なのに、ドニのこと、よく知ってるんだね」
「街で会うんですよ、シェフトリオに。彼等、仲が良いみたいで。
揃って市場に行ったり、夜も三人でお酒飲んだりしてるんです」
「…お酒?」
「ええ。僕、前に同席したことがあるんですが、
やっぱりシェフなんですね、彼等。
酒の席でも、最後は料理の話になっちゃうんです。
お互いにレシピを交換したり、楽しそうでしたよ」
「そうなんだ…ぼく、全然知らなかった」
「あ。ドニは、ミハイルのこと自慢してましたよ?」
「ドニが? ぼく…を?」
「『うちの寮には歌の上手い妖精が居るんだぜ』、
『妖精は俺の誘惑の代償を毎回美味しかったって言ってくれるんだ』って。
ドニ、ミハイルのこと、大好きみたいでしたよ?」
「…よ、妖精だなんて、ぼく…」
「ドニお手製の『誘惑の代償』、温かいうちに頂きましょうか。
皆さんも食べますよね?」

サロンは温かなティータイムが始まる。
シルヴァンが皆の分を切り分け、ジョシュアが紅茶を淹れる。
最上級生達がお茶の準備をしている間、下級生はゲストをもてなしていた。
ユウタがミハイルをソファに呼ぶ。
「ね。ミハイル、ココに座って?」
「うん、ありがと」
ユウタの隣に座って、膝の上に手を置く。
少しだけ顔を上げると、前に居るハルヤを見つめて、言った。
「東洋の神秘…」
ハルヤは、ぱちくりと眼鏡の奥の瞳を瞬かせる。
「ど、どうしたの、ミハイル?」とユウタ。
「あ、あのね、ソクーロフ博士がね、前にハルヤのこと、そう呼んでたの…」
「えっ…俺?」
「うん。ぼくには、どういう意味なのか解らないんだけど…ハルヤ、知ってる?」
「いや、俺、今初めて聞いたから…」
「そ、そう…あ、ごめんね、ヘンなこと言って…」
ジョシュアはティーポットに湯を注ぎながら、
「博士はきっとハルヤのこと褒めてるんじゃないかな、テオみたいに」
ユウタがぴょこんと顔を上げる。
「テオって?」
「ああ、ごめん。ユウタは知らないよね。俺の前に生徒代表だった人だよ」
「へえ」
「彼はね、ハルヤのこと、東洋の真珠って呼んでいたんだ」
「えええ!?」
「ちょっとジョシュア、そんなこと教えなくていいよ…」
「ごめん」
ミハイルの金髪が傾いてキラキラと光る。
「…真珠?…ハルヤは真珠だったの? 真珠ってキレイな人ってこと?」
東洋の真珠が、慌てて誤解を解こうとする。
「ち、違うんだよ、ミハイル。あの人、ちょっと変わってるから…」
「僕は素晴らしい呼び方だと思ってましたけど♪ ね、ジョシュア?」
「うん。俺もそう思ってた」
「やだ…止めてよ、シルヴァンもジョシュアも…恥ずかしいよ…」
ミハイルは、くすくすと笑みを零した。
「照れたハルヤって可愛いんだね」
「ミハイルまで…てゆうか、ミハイルに可愛いとか言われても…」
「え?」
「だって、俺なんかよりずっと、ミハイルの方が可愛いし」
「そ、そんな…こと…ハルヤの方が」
「ううん。ミハイルの方が」
二人の様子を見て、シルヴァンはそっと笑う。
ジョシュアに耳打ちする。
「なんだか和みますね、この二人」
「そうだね」
譲り合いが終わらない二人の間に、シルヴァンが入っていく。
「まあまあ。お二人とも可愛いですよ? はい、どうぞ」
シルヴァンは皆の前に1ピースずつ、アップルパイを置く。
「あ、ねえ、シルヴァン。俺、2つ欲しいな」
「いいですよ。ユウタ、好きなんですか? 誘惑の代償」
「レッドが好きなんだよ、コレ。だから、ひとつ残しとこうと思って」
「そう言えば、レッド居ませんね」
「うん。今、ジムでワークアウトしてる」
「そうですか。じゃ、コレはレッドの分にしましょう」

紅茶を並べるジョシュアは、ミハイルの前で膝を着く。
「ミハイルはロシア出身だったね。お砂糖よりジャムの方が良いかな?」
「えっ、ジャム、あるの?」
「うん。ジャムをスプーンに乗せて、舐めながら紅茶を飲むんだよね、ロシアでは」
「ジョシュア…ロシアンティーのこと、詳しいんだね…」
「紅茶好きな人に聞いたんだ。彼、最近ロシアンティーを飲んでるんだよ」
「あつっ」
小さな叫び声。口を押さえていたのはハルヤだった。
「ハルヤ? 大丈夫?」とミハイルが心配そうな声を出す。
「ん。リンゴで、舌、ヤケドしちゃったみたい…」
「ごめんね、ハルヤ。ぼくのせいでっ」
「ああ、ううん。ミハイルのせいじゃないから」
「ごめんね、ハルヤ…あっそうだ、お水…冷たいお水で冷やすの。ないかな?」
「冷水を口に含むのは正しい応急処置ですね、僕がお持ちしますよ」
シルヴァンが部屋を出て行く。
長い髪を見送った後、ミハイルがしょんぼりと呟く。
「ハルヤ…ごめんね…ぼく、ぼくの」
「ミハイル、ほんと大丈夫だから」
「でもっ、ぼくが『誘惑の代償』を持ってきたから…」
「あの、そんな泣きそうな顔することじゃないからさ。ね?」
「そーだよ。ミハイル」とユウタが励ます。
「ハルヤは優しいから、こんなことで怒ったりしないから。大丈夫だよ?」
「ほんと? ハルヤ、怒ってない?」
「うん。怒ってないよ」
「あの…ぼくのこと、嫌いになってない?」
「ならないよ。てゆうか」
「な、なに?」
「ミハイルのこと、ちょっと好きになったかも」

がちゃん、とコップの割れる音が、ドアの向こうから聞こえてきた。


fin
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