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■テオ×アンリ ジョシュア×アンリ
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ウーティス寮サロン。
アンリは一人、読書をしていた。
この前、オーギュストから借りた神秘学の本だった。
日本の神秘について書かれている。
セイメイというオンミョージの話が載っていた。
勢い良く扉が開いた。
「失礼するよ。やあ、アンリ。久しいね」
生徒代表のテオ・メネシスだった。
黄金に輝く髪も、快活な声も騒がしい。
このテンションの高さがどうも苦手だった。
アンリはセイメイに視線を落としたままだ。
「最近会ったばかりだと思うけど?」
「私にとっては長いのだよ、美しい君に会えない時間は」
テオはアンリの傍に跪いて、楽しそうにアンリの顔を見上げていた。
この人は相手に対して美辞麗句を並べ立てるのが趣味のようだった。
美しい、素晴らしい、などと平気で口にする。
それは相手を褒めることで利益があるとか、見返りを求めるものではない。
さも満足そうに手放しで賞賛する様子は、
自分が感じたままを言葉にして表現しているように見えた。
ますます意味が解らない。
何の得にもならないことをして何が面白いのだろう。
アンリは次のページを捲る。
日本にはセイメイを祭ったジンジャがあると書いてあった。
テオは吐息混じりに、陶酔境に浸った声で言う。
「そう、例えるならば、ジェラートのようだね、アンリは」
「…ジェラート?」
「君の指を口に含んだら、さぞ冷たくて甘いのだろうと思うよ」
アンリは反射的に手を握り締めてしまった。
不快感を露にして、軽く睨み付ける。
「テオ、そろそろ止めないと、僕への侮辱とみなすよ」
「気を悪くしたかい? すまない。君が余りに美しいものだから」
ゆったりと宜う様子には微塵の悪気も感じられない。
余計に性質が悪い。
「ねえ。何しに来たの? 僕を褒め殺す為に来たわけではないよね?」
「ああ、そうだった。ジョシュアの顔を見に来たんだ」
「ジョシュア? 彼に何の用?」
「おや。アンリ、気になるのかい?」
「別に」
「特に用事はないのだがね」
「本当?」
「ああ。ふいに顔が見たくなっただけだよ。君もそういうことがあるだろう?」
アンリは口を開きかけて、押し黙った。
何故、こんな問いに自分が答えなくてはならない。
ジョシュアの顔が見たくなること。
穏やかで、人を包み込むような表情を見たいと。
「そんなこと、僕は思わない」
「そうかい? アンリも私と同じかと思っていた」
「君と僕が同じところなんて、ひとつもないよ」
サロンの扉が開いて、噂の人物が現れた。
「こんにちは、テオ。来ていたんですね」
「やあジョシュア。今ね、少しアンリと話をしていたんだ」
「そうですか。あ、よければ紅茶でも淹れましょうか?」
「ありがとう。だが、構わないよ。私は失礼するから」
「えっ、そうですか?」
アンリは「ねえ」とテオに呼び掛ける。
「君、用事は終わったの?」
「ああ。顔が見れたからね、では失礼。またね、ジョシュア」
「あ、はい」
ジョシュアは不思議そうに、黄金の髪を見送った。
アンリは自分の手を広げる。
白く、冷たい指。
「ねえ。ジョシュア」
「ん?」
「僕の指って、ジェラートのよう?」
「…え? ど、どうしたの、アンリ?」
「さっき言われた、テオに」
「なんだ、テオか。彼らしいな。そうだね、言われてみると」
ジョシュアは微笑みながら、アンリの指を見つめる。
「俺も、アンリの指は冷たくて甘そうだなと思うよ」
アンリは少し首を傾げる。何故だろう、と思った。
テオに言われたのと同じ言葉だったのに。
今度は不快感を感じなかった。
fin
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ウーティス寮サロン。
アンリは一人、読書をしていた。
この前、オーギュストから借りた神秘学の本だった。
日本の神秘について書かれている。
セイメイというオンミョージの話が載っていた。
勢い良く扉が開いた。
「失礼するよ。やあ、アンリ。久しいね」
生徒代表のテオ・メネシスだった。
黄金に輝く髪も、快活な声も騒がしい。
このテンションの高さがどうも苦手だった。
アンリはセイメイに視線を落としたままだ。
「最近会ったばかりだと思うけど?」
「私にとっては長いのだよ、美しい君に会えない時間は」
テオはアンリの傍に跪いて、楽しそうにアンリの顔を見上げていた。
この人は相手に対して美辞麗句を並べ立てるのが趣味のようだった。
美しい、素晴らしい、などと平気で口にする。
それは相手を褒めることで利益があるとか、見返りを求めるものではない。
さも満足そうに手放しで賞賛する様子は、
自分が感じたままを言葉にして表現しているように見えた。
ますます意味が解らない。
何の得にもならないことをして何が面白いのだろう。
アンリは次のページを捲る。
日本にはセイメイを祭ったジンジャがあると書いてあった。
テオは吐息混じりに、陶酔境に浸った声で言う。
「そう、例えるならば、ジェラートのようだね、アンリは」
「…ジェラート?」
「君の指を口に含んだら、さぞ冷たくて甘いのだろうと思うよ」
アンリは反射的に手を握り締めてしまった。
不快感を露にして、軽く睨み付ける。
「テオ、そろそろ止めないと、僕への侮辱とみなすよ」
「気を悪くしたかい? すまない。君が余りに美しいものだから」
ゆったりと宜う様子には微塵の悪気も感じられない。
余計に性質が悪い。
「ねえ。何しに来たの? 僕を褒め殺す為に来たわけではないよね?」
「ああ、そうだった。ジョシュアの顔を見に来たんだ」
「ジョシュア? 彼に何の用?」
「おや。アンリ、気になるのかい?」
「別に」
「特に用事はないのだがね」
「本当?」
「ああ。ふいに顔が見たくなっただけだよ。君もそういうことがあるだろう?」
アンリは口を開きかけて、押し黙った。
何故、こんな問いに自分が答えなくてはならない。
ジョシュアの顔が見たくなること。
穏やかで、人を包み込むような表情を見たいと。
「そんなこと、僕は思わない」
「そうかい? アンリも私と同じかと思っていた」
「君と僕が同じところなんて、ひとつもないよ」
サロンの扉が開いて、噂の人物が現れた。
「こんにちは、テオ。来ていたんですね」
「やあジョシュア。今ね、少しアンリと話をしていたんだ」
「そうですか。あ、よければ紅茶でも淹れましょうか?」
「ありがとう。だが、構わないよ。私は失礼するから」
「えっ、そうですか?」
アンリは「ねえ」とテオに呼び掛ける。
「君、用事は終わったの?」
「ああ。顔が見れたからね、では失礼。またね、ジョシュア」
「あ、はい」
ジョシュアは不思議そうに、黄金の髪を見送った。
アンリは自分の手を広げる。
白く、冷たい指。
「ねえ。ジョシュア」
「ん?」
「僕の指って、ジェラートのよう?」
「…え? ど、どうしたの、アンリ?」
「さっき言われた、テオに」
「なんだ、テオか。彼らしいな。そうだね、言われてみると」
ジョシュアは微笑みながら、アンリの指を見つめる。
「俺も、アンリの指は冷たくて甘そうだなと思うよ」
アンリは少し首を傾げる。何故だろう、と思った。
テオに言われたのと同じ言葉だったのに。
今度は不快感を感じなかった。
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