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■ジョシュア×アルセイデス
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ウーティス寮サロン。
アンリが読書していると、騒がしい靴音が聞こえてきた。
アルフレッド・ヴィスコンティだ。
明るい短髪で、きょろきょろと辺りを見渡す。
「あれ。ジョシュアは?」
僕は次のページを捲る。薄い紙がペラッと音を立てた。
わざわざ僕が答える義理もない。
少し暇潰しになりそうだったから。
答えてあげることにした。
「彼女とデートに行ったけど」
「なーんだ、そうか……って、えー!?」
「煩いな」
レッドはバタバタと近付いて来た。
「マジでっ!? どんな子か知ってんのかよ!?」
僕はアイスティーに口付ける。
今日のリーフはレモングラスだ。
爽やかな柑橘系の苦味。悪くない。
「知っているよ。とても血筋の良い女性だね」
「美人なのか!?」
「ジョシュアに言わせるとね。まあ、目が大きくて、髪が綺麗なのは認めるけれど」
「マジかよー!」
「髪はジョシュアが梳いているからね」
「はああ!? てゆうか、なんでお前知ってんだよ!?」
「見たから」
「何見せ付けてんだよ、あいつ! お前、災難だったなー、アンリ」
とんっと肩に手を置かれる。僕に気安く触る人は少ない。
次のページを捲る。
「どうも」
興味津々の笑顔が、目の前に来る。
「なあ! 性格もいい子なのか?」
「ジョシュアには従順らしいけど。僕は彼女に嫌われている」
「なんで!?」
「知らないよ」
「どーせ、お前が彼女に冷たくしたんだろう?」
「してないよ、別に」
「なあなあっ! 彼女、何て名前?」
「アルセイデスだよ。ギリシア神話に登場する『森の精霊達』という意味だって」
「へえ。アルセイデスちゃんって言うのかー。名前も可愛いなっ!」
サロンの扉が開いて、噂していた男が現れた。
「うわっ! ジョシュア!?」
騒がしい大声に迎えられたジョシュアは、瞳を大きくしていた。
「…どうしたんだい、レッド?」
「い、いや…」
僕はジョシュアを見上げる。
「おかえり。彼女とのデート楽しかった?」
「ああ。気持ち良かったよ。今日は天気も良かったし」
レッドが怪訝そうな表情になる。
「…気持ち良かった?」
「うん。最高に。そうだ。今度、レッドも彼女に乗ってみるかい?」
「はああー!? お前、な、何勧めてんだよ!?」
「…いけなかった、かな?」
レッドはジョシュアの両肩を掴む。
正面切って、怒声を浴びせる。
「もっと彼女のこと大切にしろよ、ジョシュア!」
「レッドは乗らなくて良いのかい?」
「…お前がそんな奴だったなんて、見損なったぜっ!」
ジョシュアは困惑を隠せない。
「…レッド? どうして…」
「その胸に手を当てて聞いてみろ! ジョシュアの、ジョシュアのばかやろー!」
芝居染みた捨て台詞で、サロンから走り去って行った。
僕は次のページを捲る。
「…暑苦しいな。夏だと言うのに」
ジョシュアは困惑したまま、僕の傍に来た。
「アンリ…俺、何がいけなかったんだろう?」
「胸に手を当てて聞いてみれば?」
彼は言われた通りの動作をした。
目を閉じて、真剣に考え込んでいる。
「…全く。素直にやらないでよ」
「えっ?」
「まだ解らないの? あの単細胞は君の愛馬のこと、人間だと思い込んでるんだよ」
「…ああ、なんだ。そうだったのか。教えてくれてありがとう、アンリ。
俺、レッドに説明してくるよ。それじゃ」
ジョシュアがサロンを出て行った。
なんで僕がお礼を言われなくてはならないの。
叱り付ければいいのに。
「バカな人達」
僕は本を閉じる。
レモングラスのアイスティーを飲む。
冷たくて美味しい。
「退屈、しないな」
fin
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ウーティス寮サロン。
アンリが読書していると、騒がしい靴音が聞こえてきた。
アルフレッド・ヴィスコンティだ。
明るい短髪で、きょろきょろと辺りを見渡す。
「あれ。ジョシュアは?」
僕は次のページを捲る。薄い紙がペラッと音を立てた。
わざわざ僕が答える義理もない。
少し暇潰しになりそうだったから。
答えてあげることにした。
「彼女とデートに行ったけど」
「なーんだ、そうか……って、えー!?」
「煩いな」
レッドはバタバタと近付いて来た。
「マジでっ!? どんな子か知ってんのかよ!?」
僕はアイスティーに口付ける。
今日のリーフはレモングラスだ。
爽やかな柑橘系の苦味。悪くない。
「知っているよ。とても血筋の良い女性だね」
「美人なのか!?」
「ジョシュアに言わせるとね。まあ、目が大きくて、髪が綺麗なのは認めるけれど」
「マジかよー!」
「髪はジョシュアが梳いているからね」
「はああ!? てゆうか、なんでお前知ってんだよ!?」
「見たから」
「何見せ付けてんだよ、あいつ! お前、災難だったなー、アンリ」
とんっと肩に手を置かれる。僕に気安く触る人は少ない。
次のページを捲る。
「どうも」
興味津々の笑顔が、目の前に来る。
「なあ! 性格もいい子なのか?」
「ジョシュアには従順らしいけど。僕は彼女に嫌われている」
「なんで!?」
「知らないよ」
「どーせ、お前が彼女に冷たくしたんだろう?」
「してないよ、別に」
「なあなあっ! 彼女、何て名前?」
「アルセイデスだよ。ギリシア神話に登場する『森の精霊達』という意味だって」
「へえ。アルセイデスちゃんって言うのかー。名前も可愛いなっ!」
サロンの扉が開いて、噂していた男が現れた。
「うわっ! ジョシュア!?」
騒がしい大声に迎えられたジョシュアは、瞳を大きくしていた。
「…どうしたんだい、レッド?」
「い、いや…」
僕はジョシュアを見上げる。
「おかえり。彼女とのデート楽しかった?」
「ああ。気持ち良かったよ。今日は天気も良かったし」
レッドが怪訝そうな表情になる。
「…気持ち良かった?」
「うん。最高に。そうだ。今度、レッドも彼女に乗ってみるかい?」
「はああー!? お前、な、何勧めてんだよ!?」
「…いけなかった、かな?」
レッドはジョシュアの両肩を掴む。
正面切って、怒声を浴びせる。
「もっと彼女のこと大切にしろよ、ジョシュア!」
「レッドは乗らなくて良いのかい?」
「…お前がそんな奴だったなんて、見損なったぜっ!」
ジョシュアは困惑を隠せない。
「…レッド? どうして…」
「その胸に手を当てて聞いてみろ! ジョシュアの、ジョシュアのばかやろー!」
芝居染みた捨て台詞で、サロンから走り去って行った。
僕は次のページを捲る。
「…暑苦しいな。夏だと言うのに」
ジョシュアは困惑したまま、僕の傍に来た。
「アンリ…俺、何がいけなかったんだろう?」
「胸に手を当てて聞いてみれば?」
彼は言われた通りの動作をした。
目を閉じて、真剣に考え込んでいる。
「…全く。素直にやらないでよ」
「えっ?」
「まだ解らないの? あの単細胞は君の愛馬のこと、人間だと思い込んでるんだよ」
「…ああ、なんだ。そうだったのか。教えてくれてありがとう、アンリ。
俺、レッドに説明してくるよ。それじゃ」
ジョシュアがサロンを出て行った。
なんで僕がお礼を言われなくてはならないの。
叱り付ければいいのに。
「バカな人達」
僕は本を閉じる。
レモングラスのアイスティーを飲む。
冷たくて美味しい。
「退屈、しないな」
fin
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