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Marginal Prince Short Story
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■ウーティス寮とアイヴィー
■6月24日の蔦様とのチャットから
お泊まり会の続編
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アイヴィーの家。早朝の寝室。
眼鏡を掛けていないハルヤが静かな寝息を立てている。
シルヴァンがその寝顔に忍び寄る。
もう暫くこのまま見ていたいが、もう起きて貰わないと、
最後のイベントが失敗に終わってしまう。
タイムキーパーとしての任務を果たすべく、ハルヤの肩を揺する。
部屋の反対側でまだ眠っている、
レッドとユウタを起こさぬように、ハルヤの耳元で囁いた。

「…ハルヤ、ハルヤ、起きて下さい?」
「ううん…」
「ハルヤ? 起きないと、おはようのキ」
「…おはよう。シルヴァン」
「なんで起きちゃうんですかー」
「そりゃ起きるよ…」
「んー。じゃ、時間もありませんし、キッチンに行きましょうか?」


ウーティス寮。
アンリは名を呼ばれて、ベッドの中で目を覚ました。
部屋の明るさから朝らしいと解る。
まだ重い瞼を開けると、朝にも関わらず爽やかな笑顔が見えた。
身支度が終わり、制服まで着ている生徒代表だった。
ベッドの傍で身を屈めている。

「アンリ。朝だよ?」
「ん…」
「おはよう。アンリ」
「起こさなくて、いいのに…」

身動ぎして、髪がアンリの顔にぱさりと掛かる。
それすらも払おうとしない。
反応の鈍いアンリを見て、生徒代表の笑顔は更に優しくなる。

「相変わらず寝起きが悪いね、アンリは」
「当たり前、でしょう…」

まだ擦れている声で、小さく呟かれた。

「二人で朝食にしよう?」
「要らない…」
「駄目だよ、アンリ。起きて?」

肩に置かれた手を払うように、アンリは背を向けた。

「嫌…眠い…」

「…困ったな」

あたたかくそう言うと、ジョシュアはベッドに腰を下ろした。


アイヴィーの家 寝室。
ユウタが目を覚ます。お腹にレッドの足がある。
「んー。レッドー。おもいよー」
どんっと降ろすとレッドが起きた。
「イテッ!」
「レッドの足、俺のお腹に乗ってたよ」
「あ? マジで? 悪ぃ悪ぃ」
「レッドのせいかな…あんなヘンな夢見たの…」
「ヘンな夢?」
「うん。たぶん夢、だと思うんだけど…昨日の夜ね、ア、アイヴィーと…」

ドアが開いた。長い髪を一つに結わえたシルヴァンだ。

「あ。もう起きてたんですね。おはようございます、レッド、ユウタ」
レッドが「おっす」と片手を挙げる。
昨夜はユウタとレッドが先に寝室に引き上げた。
シルヴァン達はリビングに残った。
睡眠時間はこちらの方が長い筈だが、シルヴァンは既に着替えを済ませている。

「シルヴァン、早いな、起きんの。もしかして寝てないのか?」
「いえ。大丈夫ですよ。2時間は寝てますから」
「2時間? お前、何やってたの?」
「ああ、いえ。別に…」

空笑いしたシルヴァンは、ふとユウタを見る。
自分が現れてから、ユウタは目も合わせていない。
二人の会話にも入らずに、顔を上げない。
レッドに無理強いされて酒を飲まされたから、具合が悪いのかもしれない。
そう思ったシルヴァンが、声を掛ける。

「おや。ユウタ? 頭でも痛いんですか?」
「あっ、ううん。ななな、何でもない…よ、シルヴァン」
思い切り挙動不審で、シルヴァンは首を傾げる。

「…そうですか? あ、今日の朝ごはん、ハルヤが作ってくれたんですよ」
「えっ。ハルヤが?」
「行こうぜ、ユウタ!」
「う、うん…」
ユウタはシルヴァンを避けるように、レッドの後ろに付いていった。

リビングに到着すると、ユウタは懐かしい朝食の匂いを感じた。
テーブルには、純和風の朝食が並んでいる。
焼魚、卵焼き、漬物、ご飯にお味噌汁。

「すっごい! これ、ハルヤが作ったの!?」
「あ、うん。美味しいかどうかわかんないけど」
「でも…こんなに日本の食べ物、どうしたの? 昨日は買ってないよね?」

昨日アイヴィーの家に乗り込む前、スーパーで食材を買ったが、
パスタやサラダなど洋食に使うものしか買っていなかった筈だ。
ましてやお米なんか買っていない。
ハルヤは微笑みながら、今回の打ち明け話をした。

「お米とお味噌は、俺の非常食みたいなもんで、
 アイヴィーんちに置かせて貰ってるんだ。
 漬物は、昨日ユウタが寝た後で俺とシルヴァンが作った浅漬けだよ。
 ユウタに喜んで貰えるかなと思って。こっそり用意してたんだ」

ユウタを先に眠らせよう、と事前に計画されていた。
てっとり早くアルコールで、という話になり、
お酒はアイヴィーのを使うことにした。

「ユウタ、入学から一か月だし、最近元気なかったからさ。少しは元気出たかな?」

少し涙目になったユウタが、ハルヤに飛び付く。

「ありがとっ、ハルヤ!」
「良かった。でもね、ユウタ。これは俺のアイディアじゃないんだよ?」

ハルヤの胸で、ユウタが顔を上げる。
一年先輩のハルヤは、同じ日本国出身の後輩を心配していた。
和食が懐かしくなるのはよく解る。去年の自分がそうだった。
だから、この急なお泊まり会計画を聞かされた時も、
ちょっとめんどくさいけど協力しなきゃなと思った。
ユウタ以外は全員共犯者。
皆も元気のないユウタが気になっていたようで、ユウタの為ならと快諾した。
ハルヤは後輩の背を撫でながら、今回の首謀者を見やる。

「生魚以外にしろよ、って言われてね? だから朝ご飯は焼魚」


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