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■ユウタの場合
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ウーティス寮サロン ユウタの部屋。
ユウタはぼんやりしながら、ベッドに転がっていた。
今日は7月7日。
シルヴァンの提案で今日は寮の皆で七夕パーティ。もうすぐ始まる時間だ。
「七夕」という言葉を久し振りに聞いた。
幼稚園や小学校の頃には、短冊に願い事を書いて、星にお祈りしてた。
自分が何を書いたのか覚えてないけど、
姉貴の短冊には、俺の悪口が書いてあったような気がする。
「ユウタがもう少し、男っぽくなりますように」とか。
それに対抗して、俺も姉貴のこと書いたんだったかな。
「姉ちゃんがもう少し、優しくなりますように」とか。うん、きっとそうだ。
10年位前のことなのに意外と覚えてるもんだなあ。
姉貴にメールしてみようかな。
「寮の皆で七夕パーティするんだよ。昔、短冊に何て書いたか覚えてる?」って。
姉貴は覚えてるかもしれない。
俺が赤ちゃんの時のこととかよく覚えてるからな、姉貴。
「ユウタは赤ちゃんの頃から泣き虫で」とか言わなくて良いことを、
近所の友達に言ったりするから困る。友達にも納得されるのも困った。
やっぱりパーティが始まる前に姉貴にメールしておこう。
身体を起こしたところで、今は携帯を持っていないことに気が付いた。
さっき、携帯を貸してと言われて、渡してしまった。
またベッドに倒れる。
「…どんな話、してんのかな」
知りたいけど、知りたくない。
なんだか、急にひとりぼっちのような気持ちになる。
姉ちゃんが同い年の友達とばっかり遊ぶようになった時とおんなじ気持ちだ。
今までは俺も入れて一緒に遊んでくれたのに、
ある日突然、仲間外れにされた時があった。
姉ちゃんにくっつき過ぎてたから、だったのかな。
姉ちゃんが中学生になって、初めて制服姿を見せられた時とか、
初めてお化粧して、いつもより綺麗な顔を見た時とか。
なんか、姉ちゃんが一人で大人になっちゃうみたいで、ちょっとイヤだった。
だけど俺も、今は姉ちゃんから離れて、皆と暮らしてる。
博士にアドバイスされて、姉ちゃんのこと「姉貴」って呼べるようになったし、
自分のこと「俺」って言うようになったし。俺、少しはオトコになったかな?
――ユウタがもう少し、男っぽくなりますように――
昔、姉ちゃんが短冊に書いてくれたからかもしれないね。
ユウタは、こっそり笑う。
「姉貴は、ちっとも優しくなってないけどねー」
ドアがノックされた。
はい、と返事すると、レッドが入ってきた。
「ユウタ、何してんだよ。タナバタ、始めるぜ!」
「うんっ」
レッドの後ろに付いて行く。その行為をレッドは許してくれてる。
アルフレッド・ヴィスコンティのシャッターチャンスを狙う人や、
世界中のファンの人達がしたくてもできないことを、
俺は当たり前のように許して貰ってる。
いつもは忘れそうになってることを時々思い出してドキドキする。
『あの』わんぱくコリンと同じ学校に居て、これから一緒にパーティをする。
何度も繰り返し見たドラマの主人公と。
レッドの背中は大きくて、俺よりずっと背が高い。
誰かの背中を見るのは、ユウタにとって安心することだった。
こういう光景は昔と似てる。姉貴の背中を追い駆けてた時と一緒。
だから今、姉貴が傍に居なくても平気なのかもしれない。
…姉貴のこと、思い出しちゃうことはあるんだけどね。
少し早く歩いて、レッドの隣に付く。
「ねえねえ、レッド」
廊下を歩きながら、レッドが振り向く。
背の高い人を見上げるのもなんか好きだった。
「俺、レッドの歌、聞きたいな。パーティで歌って?」
レッドはユウタの首に腕を回した。
その力強さにユウタは、けほっ、と咳をする。
「おーっし! んじゃ、今夜はユウタの為に歌ってやっか!」
fin
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ウーティス寮サロン ユウタの部屋。
ユウタはぼんやりしながら、ベッドに転がっていた。
今日は7月7日。
シルヴァンの提案で今日は寮の皆で七夕パーティ。もうすぐ始まる時間だ。
「七夕」という言葉を久し振りに聞いた。
幼稚園や小学校の頃には、短冊に願い事を書いて、星にお祈りしてた。
自分が何を書いたのか覚えてないけど、
姉貴の短冊には、俺の悪口が書いてあったような気がする。
「ユウタがもう少し、男っぽくなりますように」とか。
それに対抗して、俺も姉貴のこと書いたんだったかな。
「姉ちゃんがもう少し、優しくなりますように」とか。うん、きっとそうだ。
10年位前のことなのに意外と覚えてるもんだなあ。
姉貴にメールしてみようかな。
「寮の皆で七夕パーティするんだよ。昔、短冊に何て書いたか覚えてる?」って。
姉貴は覚えてるかもしれない。
俺が赤ちゃんの時のこととかよく覚えてるからな、姉貴。
「ユウタは赤ちゃんの頃から泣き虫で」とか言わなくて良いことを、
近所の友達に言ったりするから困る。友達にも納得されるのも困った。
やっぱりパーティが始まる前に姉貴にメールしておこう。
身体を起こしたところで、今は携帯を持っていないことに気が付いた。
さっき、携帯を貸してと言われて、渡してしまった。
またベッドに倒れる。
「…どんな話、してんのかな」
知りたいけど、知りたくない。
なんだか、急にひとりぼっちのような気持ちになる。
姉ちゃんが同い年の友達とばっかり遊ぶようになった時とおんなじ気持ちだ。
今までは俺も入れて一緒に遊んでくれたのに、
ある日突然、仲間外れにされた時があった。
姉ちゃんにくっつき過ぎてたから、だったのかな。
姉ちゃんが中学生になって、初めて制服姿を見せられた時とか、
初めてお化粧して、いつもより綺麗な顔を見た時とか。
なんか、姉ちゃんが一人で大人になっちゃうみたいで、ちょっとイヤだった。
だけど俺も、今は姉ちゃんから離れて、皆と暮らしてる。
博士にアドバイスされて、姉ちゃんのこと「姉貴」って呼べるようになったし、
自分のこと「俺」って言うようになったし。俺、少しはオトコになったかな?
――ユウタがもう少し、男っぽくなりますように――
昔、姉ちゃんが短冊に書いてくれたからかもしれないね。
ユウタは、こっそり笑う。
「姉貴は、ちっとも優しくなってないけどねー」
ドアがノックされた。
はい、と返事すると、レッドが入ってきた。
「ユウタ、何してんだよ。タナバタ、始めるぜ!」
「うんっ」
レッドの後ろに付いて行く。その行為をレッドは許してくれてる。
アルフレッド・ヴィスコンティのシャッターチャンスを狙う人や、
世界中のファンの人達がしたくてもできないことを、
俺は当たり前のように許して貰ってる。
いつもは忘れそうになってることを時々思い出してドキドキする。
『あの』わんぱくコリンと同じ学校に居て、これから一緒にパーティをする。
何度も繰り返し見たドラマの主人公と。
レッドの背中は大きくて、俺よりずっと背が高い。
誰かの背中を見るのは、ユウタにとって安心することだった。
こういう光景は昔と似てる。姉貴の背中を追い駆けてた時と一緒。
だから今、姉貴が傍に居なくても平気なのかもしれない。
…姉貴のこと、思い出しちゃうことはあるんだけどね。
少し早く歩いて、レッドの隣に付く。
「ねえねえ、レッド」
廊下を歩きながら、レッドが振り向く。
背の高い人を見上げるのもなんか好きだった。
「俺、レッドの歌、聞きたいな。パーティで歌って?」
レッドはユウタの首に腕を回した。
その力強さにユウタは、けほっ、と咳をする。
「おーっし! んじゃ、今夜はユウタの為に歌ってやっか!」
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