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Marginal Prince Short Story
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■エンジュシナリオ2-1ベース
■エドガー×ヤン
ぽつん、とオウムの翼に雫が落ちた。
小さな瞳が空を見上げる。
濃い灰色の雲。透明な水滴がぽたぽたと振り、どしゃ降りになった。
「アメ! ザーザー!」
散歩中だったオウムは自分の家へ一目散に飛んで行った。
アルファルド寮サロンに入ると、濡れている生徒達が数名居た。
しかしサロンは静かなもので、彼等は騒ぐ様子もない。
青ざめた顔の生徒を見つけ、オウムだけが騒いでいる。
「パスカル、カオイロワルイナ! カゼヒクゾ!」
オウムの翼にタオルが触れた。
見上げると、羽根に付いた雫を拭っているのは小麦色の手。
「ジャワハルワール! タダイマー!」

外に居た生徒達が走っている。
持っていた本や鞄を頭に乗せて、建物の影に入る。
屋根の下から夏の大きな積乱雲を仰いでいた。
重そうな雨雲から、出し過ぎたシャワーが降り注ぐ。
熱帯地方のスコールのようだった。
シュヌーシア寮サロンは、雨に濡れた、と大騒ぎだ。
世話好きの上級生達が身体の弱い生徒を甲斐甲斐しく構っている。
バトラーは慣れた様子で寮生達にタオルを運んでいた。

ウーティス寮サロンの騒ぎ具合は、
アルファルドとシュヌーシアの中間くらいだった。
サロンにシュヌーシアの生徒が顔を出した。
生徒代表のヤン・ハシェクだ。
艶のない灰色の髪も今は雨できらきらと光っている。
紺のカーディガンも肩が酷く濡れている。眼鏡は雲って白っぽい。
「ごめん…ちょっと雨宿りさせて貰っても良いかな?」
サロンに居たエドガーが立ち上がる。
「あーあー。そんなびしょびしょで。大丈夫か、ヤン」
「うん。大丈夫だと思う。あ、良かった、濡れてない」
カーディガンの中から出したのは一冊の本。
我が身を盾にして、死守したようだ。
ヤンの髪からぽたと雫が落ちる。
珍しく俊敏な動作で、雫から本を避けた。
エドガーはヤンの灰色の頭をぺしっと叩く。
「バーカ。本のこと聞いてんじゃねーよ」
髪に触れたエドガーの手も濡れた。
「バトラー。こっちにもタオルひとつ頼む」
執事から柔らかいタオルを受け取り、
自分の手を拭いてから、ヤンの頭に被せる。
「お前なあ、他の奴は本を傘にして、走って来るんだぞ」
「え。でも、僕は濡れても何ともないけど、
 本はさ、濡れちゃったら、乾いても痕が残っちゃうし」
ぼそぼそと言いながら、タオルで髪に付いた雫を大雑把に拭き取る。
眼鏡を外してハンカチで拭いた。
「何ともねえことねえだろ、バカが。
 シャワー貸してやるから俺の部屋使え」
「ありがと、エド。だけど僕はいいや。それより傘借りてもいいかな?
 シュヌーシアに戻んなきゃ。小さい子達のこととか心配だし…はっくしゅ」
くしゃみをしたヤンに、エドガーは盛大な溜め息を吐く。
「ったく、お前はお前の心配をしろ!」
タオルで灰色の髪をわしゃわしゃと拭いた。


fin
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