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WARNING!
■エンジュシナリオ5-1の続編
聖アルフォンソ島 植物園。
アンリは携帯を切ると、エンジュに手渡した。
受け取った携帯を制服のポケットに入れる。
園内には他に誰も居なかった。アンリは、エンジュに話がある、と言った。
エンジュは黙ってアンリの出方を伺っている。
二人の前にはトリカブトの花。
花は紫。観賞用の切花としてはアコニタムという名も持つ。
ギリシャ語のakos(楯)が語源とも言われる。
アンジェロは此処で、毒草を育てていた。
おそらくは、兄を殺す目的で。
兄の信用を得る為、暗殺に協力したのかもしれない。
そこまでして、ただ一つの命を狙った。
毒々しくも美しい花を眺めながらアンリは言った。
「単刀直入に言うね。君、生徒代表殿に何か恨みでもあるの?」
「お前には関係のないことだ」
アンリは、予想通り、という微笑を浮かべる。
二人の間を白い蝶が通る。花の芳香に誘われて、此処には虫達も集う。
「確かにね。ただ、文化祭の時。君がジョシュアに熱い視線を、
送っていたのが少し気になったんだ。君の手に握られていたものもね?」
トリカブトの葉には深い切り込みがある。その形は剣の柄にも見えた。
毒物アコニチンが多く含まれるのは根。神経毒の一種であり、中枢神経を侵す。
軽度の中毒では、顔面の筋肉運動が減り、無表情になるらしい。
「だからどうした?」
「僕もね、剣を持っているんだ。残虐なシチリアンマフィア、というね。
自衛用だから、他者への攻撃に使うつもりはなかったんだけど。
彼は王冠を持つ者だ。こんな孤島で果てて良い人物じゃない」
琥珀の瞳は凍てついていた。
「次はないから。彼のこと、可笑しな眼で見ないで」
エンジュは無表情なまま、トリカブトの葉に触れた。
その柔らかい緑の剣は、人の命を奪う凶器になる。
葉を千切ろうとして、彼は止めた。
「案ずるな。次はない。俺はこの学院を離れる」
顔には何の感情も映していない。
緑翠の瞳には静かな闘志と、何か他の色も滲んでいた。
「祖国に帰っても、命を狙われるだけではない?」
「お前には関係ない」
アンリは冷笑する。紫の花に蝶が止まった。
蜜にも毒は含まれているが、アコニチンは昆虫には効かない。
蝶は羽音を立てて、また他の花へと飛び立った。
「学院から一歩出ると、身の安全が保証されないなんて、どうかしてるよね」
独り言のように呟かれたそれに、言葉が返ってくる。
「剣を持つお前も、どうかしているな」
蝶が羽ばたいている。エンジュの言う通りだとアンリは思った。
小さな蝶。その羽根は脆い。君を狙う魔の手は絶えない。
それは無邪気な子供か、それとも同じ種族の生き物かもしれない。
一体、何処まで逃げ切れるのかな、僕は。
アンリは息をひとつ吐いた。
「時間を取らせて悪かったね。この話はこれでおしまいにするよ。
剣に会いに街へ行かなくてはいけないし。君を狙う必要はないと言っておくね?」
「勝手にしろ」
アンリは優雅に微笑んだ。
「君の性格は嫌いじゃないよ、エンジュ。
…Le Chariot. 戦車は、独立の道を駆ける」
「戦車?」
「気にしなくて良いよ。君のカードが思い浮かんだだけだから。ではね、エンジュ」
植物園から消えて行く背中。エンジュは何も言わず、見つめていた。
自分は学院に戻ろうと、ポケットに手を入れる。
何かが手に触れた。手の中にあるケータイ。
取り出して、ケータイを開く。
何もしないまま閉じて、ポケットに仕舞った。
fin
■エンジュシナリオ5-1の続編
聖アルフォンソ島 植物園。
アンリは携帯を切ると、エンジュに手渡した。
受け取った携帯を制服のポケットに入れる。
園内には他に誰も居なかった。アンリは、エンジュに話がある、と言った。
エンジュは黙ってアンリの出方を伺っている。
二人の前にはトリカブトの花。
花は紫。観賞用の切花としてはアコニタムという名も持つ。
ギリシャ語のakos(楯)が語源とも言われる。
アンジェロは此処で、毒草を育てていた。
おそらくは、兄を殺す目的で。
兄の信用を得る為、暗殺に協力したのかもしれない。
そこまでして、ただ一つの命を狙った。
毒々しくも美しい花を眺めながらアンリは言った。
「単刀直入に言うね。君、生徒代表殿に何か恨みでもあるの?」
「お前には関係のないことだ」
アンリは、予想通り、という微笑を浮かべる。
二人の間を白い蝶が通る。花の芳香に誘われて、此処には虫達も集う。
「確かにね。ただ、文化祭の時。君がジョシュアに熱い視線を、
送っていたのが少し気になったんだ。君の手に握られていたものもね?」
トリカブトの葉には深い切り込みがある。その形は剣の柄にも見えた。
毒物アコニチンが多く含まれるのは根。神経毒の一種であり、中枢神経を侵す。
軽度の中毒では、顔面の筋肉運動が減り、無表情になるらしい。
「だからどうした?」
「僕もね、剣を持っているんだ。残虐なシチリアンマフィア、というね。
自衛用だから、他者への攻撃に使うつもりはなかったんだけど。
彼は王冠を持つ者だ。こんな孤島で果てて良い人物じゃない」
琥珀の瞳は凍てついていた。
「次はないから。彼のこと、可笑しな眼で見ないで」
エンジュは無表情なまま、トリカブトの葉に触れた。
その柔らかい緑の剣は、人の命を奪う凶器になる。
葉を千切ろうとして、彼は止めた。
「案ずるな。次はない。俺はこの学院を離れる」
顔には何の感情も映していない。
緑翠の瞳には静かな闘志と、何か他の色も滲んでいた。
「祖国に帰っても、命を狙われるだけではない?」
「お前には関係ない」
アンリは冷笑する。紫の花に蝶が止まった。
蜜にも毒は含まれているが、アコニチンは昆虫には効かない。
蝶は羽音を立てて、また他の花へと飛び立った。
「学院から一歩出ると、身の安全が保証されないなんて、どうかしてるよね」
独り言のように呟かれたそれに、言葉が返ってくる。
「剣を持つお前も、どうかしているな」
蝶が羽ばたいている。エンジュの言う通りだとアンリは思った。
小さな蝶。その羽根は脆い。君を狙う魔の手は絶えない。
それは無邪気な子供か、それとも同じ種族の生き物かもしれない。
一体、何処まで逃げ切れるのかな、僕は。
アンリは息をひとつ吐いた。
「時間を取らせて悪かったね。この話はこれでおしまいにするよ。
剣に会いに街へ行かなくてはいけないし。君を狙う必要はないと言っておくね?」
「勝手にしろ」
アンリは優雅に微笑んだ。
「君の性格は嫌いじゃないよ、エンジュ。
…Le Chariot. 戦車は、独立の道を駆ける」
「戦車?」
「気にしなくて良いよ。君のカードが思い浮かんだだけだから。ではね、エンジュ」
植物園から消えて行く背中。エンジュは何も言わず、見つめていた。
自分は学院に戻ろうと、ポケットに手を入れる。
何かが手に触れた。手の中にあるケータイ。
取り出して、ケータイを開く。
何もしないまま閉じて、ポケットに仕舞った。
fin
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