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Marginal Prince Short Story
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■シルヴァン×ジョシュア レッド×ユウタ
■アニメ。海。お醤油と珈琲の間。
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ウーティス寮生は揃って海に来ていた。
アルフォンソ学院のプライベートビーチ。
到着後は各自好きなように過ごしていた。

ジョシュアは一人で浜辺に居た。
パラソルの下から、海を見ている。

波打ち際で、レッドとユウタがふざけあって遊んでいた。
二人とも楽しそうで、見ているこちらも笑顔にさせられる。

「若いってイイですよね~♪」

ジョシュアの後ろに、シルヴァンが立っていた。
水着姿の男が、手におかしな物を持っている。
ジョシュアは一応尋ねる。

「…えっと、何を持っているんだい、シルヴァン?」

「あっ! コレは『お醤油』です♪」

満面の笑みで答えられても、
ジョシュアには意味が解らない。

「…どうして、ソイソースが此処に?」

「ハルヤにオサシミをお願いしたんです♪
今、漁に出てますよ。ほら、あそこです」

岩壁の海岸から、ハルヤの頭が見えている。
いつもは下ろしてる髪が、ポニーテルのように結わえられていた。

シルヴァンは、テーブルにお醤油を置き、大きく手を振る。

「ハールヤー♪」

気付いた彼が、片手を控え目に上げる。
深く息を吸って、また海に潜っていった。

「ハルヤ、まるでマーメイドのようだね」

「でしょー!? お魚とも仲良しみたいでっ!
何を連れて帰って来てくれるか楽しみですー♪」

ジョシュアは苦笑する。

「あ。そう言えば、アンリの姿が見えないようですが?」

「アンリなら本を読んでいるよ、向こうの屋根の下でね」

浜から離れた場所に小さなログハウスがある。
海岸が一望できる開放的な席から、マリンブルーの髪が見えた。
かろうじて水着は着ているものの、
その上には学院のパーカーを羽織っている。
彼の視線は手元に落ちるばかりで、
絶景の特等席に居ながら、海を眺める様子は全くない。

「…アンリ、泳ぐ気ゼロですね」

「そうみたいだね。せめて浜辺においでと、
誘ったんだけれど、断られてしまった」

「あれじゃあ、海に来ても、いつもと同じじゃないですか」

ジョシュアは優しく笑う。

「アンリだからね」

「ジョシュアは、海に入らないんですか?」

「うん。俺はみんなを見ているだけで楽しいし」

海では、レッドがユウタを沈めて遊んでいた。
ユウタの頭を押さえていた手が、突然、海に引き込まれる。
水面から頭を出したユウタが、笑っている。

ジョシュアは彼等を見守りながら、呟く。

「みんなのこと、ちゃんと残しておきたいから」

「残す?」

「最近、みんなと過ごす時間が、とても尊く感じてね。
やっぱり、今年が最終学年だからかな」

ジョシュアは視線を膝に落とす。

「こうしてみんなで海に来れるのも、今日が最後なんじゃないかって」

「卒業しても会えますよ、僕達なら。
それとも、ジョシュアはもう会ってくれないんですか?」

ジョシュアは首を横に振る。

「会いたいよ」

「それなら大丈夫。貴方が会いたいと言うなら、
世界の何処に居ても、みんなすぐに戻ってきますよ。貴方の元にね」

「そうかな」

「ええ。もちろんです」

シルヴァンは、くすくすと笑う。

「どうしたんです? 今日は随分可愛いですね」

「…え。可愛い?」

「ジョシュアって、結構寂しがり屋さんなんですね♪」

「あ…弱音、だったよね。すまない。
なんか最近色々考えてしまって…」

「仕方無いですよ、ジョシュア。
こんなに素敵な寮生に囲まれているのですから。
あ、もちろん、その中に僕も入れて下さいね?」

「うん」ジョシュアの表情に笑顔が戻る。

「俺、本当にウーティス寮で良かったと思う」

「僕もです」

ジョシュアは海に視線を戻す。

レッドとユウタは、沖の方まで進んでいた。
ユウタはボートに乗っている。
ボートに寄り掛かっていたレッドが、突然ボートごとユウタを引っ繰り返した。
ユウタが派手な波飛沫に包まれる。

遠過ぎて聞こえない筈なのに。
ジョシュアの耳には、レッドの笑い声が届くようだった。

「忘れたくないな」

ジョシュアは、海岸を眩しそうに見る。

「今日のことも、明日のことも。
みんなと過ごした時間は全部。
…それでも、いつか忘れてしまうのかな」

「忘れても、良いじゃないですか」

「えっ…」

「貴方が全て覚えている必要なんて無いんです。
貴方だけじゃないんですよ、今、此処に居るのは」

ジョシュアは暫く黙った後、ふっと肩の力を抜いた。

「そう、だね」

岩壁に近い海から、ハルヤが顔を出した。
浜辺の方に向かって泳いでいる。

「あ、ハルヤ、上がってくるみたいだよ」

「うわあ。スッゴイ大漁じゃないですかー♪」

彼が手にしている縄には、たくさんの魚が連なっている。
波打ち際までは引っ張って来たものの、
一人では運び切れない程の魚達を見て、ハルヤは首を傾げていた。

「ハルヤ、困ってるみたいですね。
僕、ちょっと手伝ってきますよ」

パラソルから出ようとする。

「シルヴァン」

「はい?」

ジョシュアはテーブルの上から小瓶を手に取る。

「忘れているよ? ソイソース」

「あははっ。ありがとうございます、ジョシュア♪」

シルヴァンが、お醤油を片手に岩壁に向かう。


「ジョシュアー!」

ユウタとレッドが走って来る。
日はまだ高く、波は穏やかに揺れていた。


fin
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