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Marginal Prince Short Story
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■ジョシュア×アンリ
■「休暇中の僕は、恐ろしく機嫌が悪いんだ」
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アルフォンソ学院の休暇中。
生徒達は島の外へ出掛けることが多い。

ウーティス寮の面々も大半が外出していた。
寮に残ったのは二人。
特別戻りたい場所がない、
ジョシュアとアンリだけだった。

午後。アンリは天文台に居た。
読書していたのだが、いい加減飽きて来た。
本を閉じる。

休暇中は気分が優れない。
講義が無いと暇を持て余す。
仕事の方も今は特にすることがない。

時間があると、余計なことを考える。
それも、答えの出ないものばかりだ。

普段忘れていることが、
勝手に頭を支配していく。

暗い海に、過去の残骸が浮かんでくる。

思い出したくない。
あの人の言葉。

僕の最期は、遠くない未来に訪れる。
悪魔の幸運は一体いつまで続くだろうか。

無意味な自問自答を繰り返して、
ますます気分が悪くなる。

遺跡に背を預け、空を仰ぐ。

天気は悪くない。
快晴だと言える。
空は青くて、雲は白い。
人間の目には、そう見えるだけだ。
その仕組みも解ってる。

だから、何だと言うの。

「アンリ」

嫌な声がする。
こんな時に聞きたくない。
僕が何を言うか解らない。

何も告げずに天文台に来たのに。
伸びやかな声は、迷わず此処に来たことを示していた。

振り向くことはしない。
意味が無いから。

君しか居ない。

「僕に、近付かない方が良いよ。
休暇中は、恐ろしく機嫌が悪いから」

「うん。解ってる」

顔を見なくても、
微笑を浮かべていると解る。

「とても賢いとは言えないね」

強い風が吹いて、大きな雲がその形を崩していく。
空に溶けるように、雲の切れ端が薄く消えて行った。
目を閉じる。

「用があるなら、早く言えば?」

「無いよ、何も」

「意味が解らない」

「理由が無くては、君の傍に居てはいけない?」

嫌になる。
何を言っても平気で近付いて。
勝手に隣の位置を取る。
僕は目を閉じたまま、言い放つ。

「では、黙っていて。
もう人と会話ができない程、気分が悪いんだ」

「うん」

苛々する。
何故、僕なんかの傍に、君が来なくてはならないの。

そもそも君が寮に残る必要はない。
他の誰かと一緒に旅行でもしてくれば良い。
君が一緒に来れば、誰もが喜ぶ筈だ。

なのに、君は。
必ず寮に残って。

僕の傍を離れない。


「いい天気だね、アンリ」

「だから黙ってと…」

振り向くと、嬉しそうな笑顔。

「やっと、こちらを向いてくれたね」

それだけのこと。
たった、それだけで。

「どうかしているね」

僕は本を手に取って、立ち上がる。
空いている手で、服に付いていた汚れを払った。

「アンリ?」

「寮に戻る。お茶の時間にして」

彼は苦笑しながら、腰を上げる。

「了解」

僕はポケットに手を入れて、歩き出す。
彼が僕の後ろを付いて来る。

「アンリ、今日の紅茶は何にしようか?」

「君に任せるよ」

「ケーキは何が良い?」

「天使の顎」

「ん。解ってる」

「じゃあ聞かないで」


fin
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