忍者ブログ
Marginal Prince Short Story
Admin  +   Write
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

■博士×生徒代表テオ
「彼は『東洋の黒い真珠』です! これ以上の呼び方があるでしょうか!」

保健室では、テオが熱く演説していた。
アルフレッドの入学直後、新たに留学生が入った。
日本出身のハルヤ・コバヤシ。
ハルヤについて語るテオは、アルフレッドの時とは、
また別の感動を覚えているようだった。
保健医はカルテにテオが名付けたニックネームを書き留める。

「嬉しそうだね、テオ。ハルヤはそんなに気に入ったかい?」
「ええ。彼はミステリアスで美しい…まさに東洋の神秘ですよ」
「東洋の神秘?」
「私は初めて見ました、オリエンタルスマイルというものを。
ああ、あれほど儚くも魅惑的なものだったとは」

東洋人は話の途中で、意味不明に笑みを浮かべることがある。
可笑しい場所ではないのに、何故か笑うのだ。
それは西洋人には理解できないタイミングで行われるので、
気味悪がってしまうものだが、ギリシア出身のテオは感銘を受けたらしい。

「そう、あれはまるで、おぼろ月。薄絹を纏った仄かな光…」

テオは比喩表現を多用する癖が見受けられる子だった。
これを大袈裟と捉えたり、面白がって聞いている生徒も多いようだが。
本人はおそらく、美化しているつもりはないのだろう。
むしろ、自分の言葉では足りないと感じているくらいではないだろうか。
彼は感動の沸点がとても低い。
そんなことで、と周りが驚くような些細なことにも心を打たれる。
博士は「私もそのオリエンタルスマイルにお目に掛かりたいものだね」
と話を合わせたところ「博士にも是非にご覧頂きたい」と返って来た。
尚もハルヤを称える言葉が続く。
これほど手放しで他人を賞賛できるのは一種の才能だろう。

「ハルヤはアルフレッドとシルヴァンと一緒にバンドを組むことになりましたよ」
「その3人でバンドを?」
「ええ。彼等が揃って歌ってくれるなんて、夢のようだと思いませんか?
私は最前列で拝見したいですね。ライブには必ず呼んでくれるように頼みましたよ」

身振り手振りが大きく、少し紅潮した頬。
テオのお喋りは暫く止みそうになかった。
博士は、引き続き、聞き役に徹する。
興味深く聞いているよ、と表面上では演じながら、
カルテには必要なことを逃さず記述した。
ハルヤのカルテの下には、もうひとつのカルテが重なっている。
挟まれた写真には、入学当時の黄金の髪と小麦色の顔。
博士は手許と目の前の顔を見比べる。
シュヌーシア寮シェフの証言通りだ。

― テオ様は以前より食が細くなられたようで ―

やはり、頬が少し削れた。
時期は生徒代表に就任した前後から。


fin
PR
カレンダー
06 2026/07 08
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
キャラ名、CP名などで作品検索可
アーカイブ
カウンター
バーコード
material by bee  /  web*citron
忍者ブログ [PR]