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■警備責任者と生徒代表クラウス
「なんだ、この猥雑な街並みは」
夜の繁華街を歩きながら、生真面目な生徒代表は眉を顰めた。
周囲の騒音に負けないよう、アイヴィーは少し大きな声で話した。
「あー、お気に召さなかった? ま、これも社会勉強ってヤツだって♪」
クラウスの歩くペースは他の生徒より速かった。
周囲を歩く島民をもう何人も追い越している。
「アイヴィーはよく来るのか、こういうところに」
「ああ。フツーに飲みに来るけど?」
眉間の皺をひとつ増やしてしまった。
「あ。あれ? 俺の株、今、スゴイ下がった?」
「いや…アイヴィーは生徒ではないし、俺がどうこう言うことではないな」
クラウスとデートができたのは、次の生徒代表が噂され始めた頃。
今度一緒にお食事でも、とお誘いしたら嫌そうな顔はされたものの、
何度か口説いて、最終的には「待ち合わせには絶対に遅れるなよ」とOKしてくれた。
軍人のエリートコースが約束された子息。
入学した頃から何処か達観した目をしてた。
軍でもよく見掛けた。『いつ戦場で果てても悔いは無い』という目だ。
また、校則に対して非常に厳しい。
あってないような規則すらも馬鹿正直に守っている。
赤ん坊の頃から夜泣きもせず早寝早起きだったんだろうかと思うほどだ。
クラウスでも許せそうな落ち着いた店で食事しようかと思っていたのだが、
敢えて、俺がよく行くようなフツーの店に行った。
店員に陽気な声で迎えられる。クラウスは怪訝な顔をしていた。
出て来た料理は残さず綺麗に食べた。
クラウスが選んだのはシェパーズパイ。
円いグラタン皿には真っ白なマッシュポテト。飾りのパセリ。
ポテトの下は、トマトソースで煮込んだラム挽き肉。
パイ生地を使わないパイだ。甘くもない。
かつて羊飼いが食べていたから、この名が付いた。
そうクラウスは言っていた。家で食べたことがあるらしい。
完食後、大して汚れてもいない口許を拭う。
アイスコーヒーを少し飲んでから、俺に尋ねてきた。
「アイヴィーは毎年こうやって生徒代表と遊ぶのか?」
「遊んでくれる奴とはな」
「そう、か」
遊んでくれない奴も居た。
だが、ジブリールは、淡々と着実に任務をこなし、
ヤンと同等に学院の平和を守ろうとしていた。
俺のことも嫌いじゃないって言ってくれてたし。
「なあ、アイヴィー」
向こうの方で店員が他の客と話している。馴染み客らしい。
クラウスの声がちょっと聞き取り難い。
俺は少し顔を近付ける。
「どした?」
普段は真正面から人を見るくせに。
目を合わせないまま言った。
「ひとつ、頼めるか」
fin
「なんだ、この猥雑な街並みは」
夜の繁華街を歩きながら、生真面目な生徒代表は眉を顰めた。
周囲の騒音に負けないよう、アイヴィーは少し大きな声で話した。
「あー、お気に召さなかった? ま、これも社会勉強ってヤツだって♪」
クラウスの歩くペースは他の生徒より速かった。
周囲を歩く島民をもう何人も追い越している。
「アイヴィーはよく来るのか、こういうところに」
「ああ。フツーに飲みに来るけど?」
眉間の皺をひとつ増やしてしまった。
「あ。あれ? 俺の株、今、スゴイ下がった?」
「いや…アイヴィーは生徒ではないし、俺がどうこう言うことではないな」
クラウスとデートができたのは、次の生徒代表が噂され始めた頃。
今度一緒にお食事でも、とお誘いしたら嫌そうな顔はされたものの、
何度か口説いて、最終的には「待ち合わせには絶対に遅れるなよ」とOKしてくれた。
軍人のエリートコースが約束された子息。
入学した頃から何処か達観した目をしてた。
軍でもよく見掛けた。『いつ戦場で果てても悔いは無い』という目だ。
また、校則に対して非常に厳しい。
あってないような規則すらも馬鹿正直に守っている。
赤ん坊の頃から夜泣きもせず早寝早起きだったんだろうかと思うほどだ。
クラウスでも許せそうな落ち着いた店で食事しようかと思っていたのだが、
敢えて、俺がよく行くようなフツーの店に行った。
店員に陽気な声で迎えられる。クラウスは怪訝な顔をしていた。
出て来た料理は残さず綺麗に食べた。
クラウスが選んだのはシェパーズパイ。
円いグラタン皿には真っ白なマッシュポテト。飾りのパセリ。
ポテトの下は、トマトソースで煮込んだラム挽き肉。
パイ生地を使わないパイだ。甘くもない。
かつて羊飼いが食べていたから、この名が付いた。
そうクラウスは言っていた。家で食べたことがあるらしい。
完食後、大して汚れてもいない口許を拭う。
アイスコーヒーを少し飲んでから、俺に尋ねてきた。
「アイヴィーは毎年こうやって生徒代表と遊ぶのか?」
「遊んでくれる奴とはな」
「そう、か」
遊んでくれない奴も居た。
だが、ジブリールは、淡々と着実に任務をこなし、
ヤンと同等に学院の平和を守ろうとしていた。
俺のことも嫌いじゃないって言ってくれてたし。
「なあ、アイヴィー」
向こうの方で店員が他の客と話している。馴染み客らしい。
クラウスの声がちょっと聞き取り難い。
俺は少し顔を近付ける。
「どした?」
普段は真正面から人を見るくせに。
目を合わせないまま言った。
「ひとつ、頼めるか」
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