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■カミーユ・ルブラン
■キャラクタ設定協力:シハル姉さん、蔦様
ウーティス寮キッチンは常にピカピカだった。
一日の終わりには必ず綺麗好きが掃除するからだ。
部屋の主はカミーユ・ルブラン。この寮の食事一切を任されている。
性格をそのまま現したかのような四角い顔。
その割れた顎と渋い二枚目顔は、アルフレッドに言わせると、
『クセのある刑事役が似合う実力派ベテラン俳優』だそうだ。
夕食まで二時間ばかり。カミーユはビーフシチューの味見をしていた。
これは今日作ったものではなく、ここ数日じっくりことこと煮込んだものだ。
シェフは味の出来映えに満足して顎を撫でる。
自分の舌を満足させられるのは、もはや自分しかいないのでは、とさえ思う味だった。
「カミーユ、居る?」
キッチンに寮の生徒がひょこっと顔を出した。眼鏡を掛けた日本人。
カミーユは、寮生全員と親しいわけではない。
昨年入ったばかりのこの生徒が、一番親しい間柄かもしれない。
シェフは一応、鍋の火を止めて入り口のある隣の部屋へ向かう。
聖アルフォンソ学院はキッチンも広く、二部屋続きになっていた。
「はい、ハルヤ様」
生徒と目が合うと、ほっとしたように微笑まれた。
「良かった。カミーユ、居てくれて。あの、今忙しいかな?」
「いえ。今はビーフシチューを煮込むだけですから」
「あのさ、ごめん。俺、おなかすいちゃって…」
夕食まで後二時間。おなかが空く時間帯だ。
あまり食べると夕食に支障を来たすが、この生徒は例外だ。
「畏まりました。アボカドマグロ丼が宜しいですか?」
「ん。お願い」
「ではサロンでお待ち下さい。すぐにご用意します」
急な申し出にも対応できるよう、このキッチンでは常にアボカドマグロ丼の素材があった。
巨大な冷蔵庫からマグロの切り身を取り出す。これは最高級のものではない。
カミーユとしては不本意な品質なのだが、主人であるハルヤ様のご要望なので致し方がない。
「あ、ねえ。俺、此処で見てても良いかな?」
「ええ。それは構いませんが?」
「ありがと」
力のない笑顔を見て、早く作らなくてはとシェフは思う。
背中で視線を感じながら、野菜室からアボカドを選ぶ。
緑のものはまだ早い。熟して黒みがかった物を手に取る。
色と手に伝わる固さで食べ頃かどうかは解った。
本来であればメキシコ産の最高級品を買うのだが、これは違う。
ハルヤ様には言っていないのだが、
11月から2月頃までは和歌山産のアボカドを使っていた。
選び出したひとつを持って、まな板の前に立つ。
黒い皮を剥くと、淡い緑色の果実が顔を見せる。
ごつごつとした外見に比べて、美しいエメラルドだ。
マグロとアボカドを同じさいの目状に切っていく。
後ろを見やると眼鏡の生徒は壁に凭れて言った。
「やっぱりいい音だね」
しみじみとした声。生徒は目を閉じていた。
「ハルヤ様?」
「まな板の音、好きなんだ。トントントンって」
fin
■キャラクタ設定協力:シハル姉さん、蔦様
ウーティス寮キッチンは常にピカピカだった。
一日の終わりには必ず綺麗好きが掃除するからだ。
部屋の主はカミーユ・ルブラン。この寮の食事一切を任されている。
性格をそのまま現したかのような四角い顔。
その割れた顎と渋い二枚目顔は、アルフレッドに言わせると、
『クセのある刑事役が似合う実力派ベテラン俳優』だそうだ。
夕食まで二時間ばかり。カミーユはビーフシチューの味見をしていた。
これは今日作ったものではなく、ここ数日じっくりことこと煮込んだものだ。
シェフは味の出来映えに満足して顎を撫でる。
自分の舌を満足させられるのは、もはや自分しかいないのでは、とさえ思う味だった。
「カミーユ、居る?」
キッチンに寮の生徒がひょこっと顔を出した。眼鏡を掛けた日本人。
カミーユは、寮生全員と親しいわけではない。
昨年入ったばかりのこの生徒が、一番親しい間柄かもしれない。
シェフは一応、鍋の火を止めて入り口のある隣の部屋へ向かう。
聖アルフォンソ学院はキッチンも広く、二部屋続きになっていた。
「はい、ハルヤ様」
生徒と目が合うと、ほっとしたように微笑まれた。
「良かった。カミーユ、居てくれて。あの、今忙しいかな?」
「いえ。今はビーフシチューを煮込むだけですから」
「あのさ、ごめん。俺、おなかすいちゃって…」
夕食まで後二時間。おなかが空く時間帯だ。
あまり食べると夕食に支障を来たすが、この生徒は例外だ。
「畏まりました。アボカドマグロ丼が宜しいですか?」
「ん。お願い」
「ではサロンでお待ち下さい。すぐにご用意します」
急な申し出にも対応できるよう、このキッチンでは常にアボカドマグロ丼の素材があった。
巨大な冷蔵庫からマグロの切り身を取り出す。これは最高級のものではない。
カミーユとしては不本意な品質なのだが、主人であるハルヤ様のご要望なので致し方がない。
「あ、ねえ。俺、此処で見てても良いかな?」
「ええ。それは構いませんが?」
「ありがと」
力のない笑顔を見て、早く作らなくてはとシェフは思う。
背中で視線を感じながら、野菜室からアボカドを選ぶ。
緑のものはまだ早い。熟して黒みがかった物を手に取る。
色と手に伝わる固さで食べ頃かどうかは解った。
本来であればメキシコ産の最高級品を買うのだが、これは違う。
ハルヤ様には言っていないのだが、
11月から2月頃までは和歌山産のアボカドを使っていた。
選び出したひとつを持って、まな板の前に立つ。
黒い皮を剥くと、淡い緑色の果実が顔を見せる。
ごつごつとした外見に比べて、美しいエメラルドだ。
マグロとアボカドを同じさいの目状に切っていく。
後ろを見やると眼鏡の生徒は壁に凭れて言った。
「やっぱりいい音だね」
しみじみとした声。生徒は目を閉じていた。
「ハルヤ様?」
「まな板の音、好きなんだ。トントントンって」
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