×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
■4日前 続編
■ジョシュア×姉貴 シェフトリオ+アイヴィー
「大丈夫。きっと喜ぶよ、ユウタ」
聖アルフォンソ学院 生徒代表の執務室。
部屋の主は受話器を持っていた。台詞と声は至って優しい。
「だって、大好きなお姉さんからのプレゼントなんだから」
壁一面には肖像画。歴代の先輩方から監視される部屋。
一番新しい絵には金髪の生徒。自分は彼の隣に置かれる。
自分が知っているのは、この中でたった5人だけだ。
最初の頃は彼等の視線が気になっていた。
本当はいけないことだから。この部屋で、貴女に電話をすることは。
「そんな心配要らないよ。俺がユウタだったら、本当に嬉しいと思う」
今年度の生徒代表はジョシュア・グラント。
両親は幼い頃に亡くしている。
兄弟もなく、もうこの世に家族と呼べる人は居ない。
一人っ子であることについて、今までは嬉しいとも悲しいとも思っていなかった。
今、電話で話しているのは、友人の姉。
姉という存在。
自分にも姉が居たら、弟はこんなふうに想って貰えるのだろうか。
海を越え、どんなに離れた場所に居ても。
あたたかい声で名前を呼んでくれるのだろうか。
「最近、俺が貴女の弟だったら、ってよく思うんだ」
弟の誕生日が近付くにつれて。
貴女は、ますます弟の話ばかりするから。
悪気がないのは解っているけど。
貴女の声で他の男の名前を聞くと、どうしても胸が苦しくなる。
ユウタは貴女の弟なのに。
ドアがノックされた。受話器の向こうに詫びる。
「すまない、誰か来たみたいだ」
この電話は私用では使えないことになっている。
禁じられた行為だと知っている。
規則を破っても、貴女の声が聞きたかった。
扉越しに練れた声がする。ドクターだ。
生徒代表はドアを見つめながら、受話器の向こうへもう一度詫びる。
「うん。ごめんね。それじゃまた」
お月さまが綺麗な夜。
今日はいい日だった。なんか美味しい物を食べてから帰りたい気分。
アイヴィーは面白かったお仕事を思い返しながら旧市街に来た。
晩ご飯を食べに、行き付けの店に入ったのだが、
ちょっと今夜はいっぱいいっぱいのようだ。
近くのテーブルから、やや高い声が聞こえた。
「あははっ! それ面白過ぎですよー、アランさん」
ちっちゃいシェフの声だ。行ってみると、やっぱり3人居た。
聖アルフォンソ学院のキッチンチームだ。
「よっ。コックさん達、お揃いで」
「アイヴィーさん! こんばんはー」
笑顔で挨拶してるのがドニ・ドーム。シュヌーシア寮シェフ。
甘い物好きの前にはアイスみたいなのがあった。
「今日もデザート食べてんのか、ドニ。もう食事終わったとこ?」
「いえ。まだ来たばかりですよ? これはとりあえず最初に頼んだデザートです。
すっごい美味しいですよ、このライチのシャーベット。レシピ、後で教えて貰いたいなー」
スプーンで掬って、俺の前に出す。薄雲のような色だ。
「アイヴィーさん、食べさせてあげますー。はい、あーんして下さい?」
「俺はいーよ。お前さんが好きなんだろ、そういうのは。
それよりさ、俺もこのテーブルに入れて貰っていい? 他、空いてないからさ」
シェフトリオのリアクションは、歓迎1名、渋々1名、無視1名といつも通り。
ダメって人は居ないみたいなので、椅子を引く。
「んじゃ、おジャマしまーす」
今日、こいつらが注文したのはアジアっぽいメニューばかりだった。
チキンを揚げたのにトロってしてるのがかかってるやつがウマイ。
ドニには緑色のビール瓶を持たされた。中国のビールだ。これもウマイ。
「あ、そだ、カミーユ。お前さんトコのユウタが、もうすぐ誕生日って知ってた?」
「ああ。もちろん。ハルヤ様、シルヴァン様ご指示の下、
当日のメニューも既に決定している。下準備も順調だ」
ウーティス寮シェフ、カミーユ・ルブラン。
高級ビールを置き、割れた顎を撫でる。
「へえー。あいつらと打ち合わせまでしてんのか。何作んの?」
四角い顔のシェフが嫌そうに見つめる。
「お前、またつまみ食いに来るつもりか?」
「あ、バレた?」
「なら、教えん。お前の分などない」
「もー。けちけちカミーユ♪」
人差し指で顎の割れてるトコをツンッてしてやる。
「顎を突くな」
手を除けられた。
俺達を見て、ドニはちょっと高めの声で笑ってる。
三人の中で唯一、陽気で温和なシェフだ。
「そのメニューなら、ボク、知ってまーす♪」
得意げに手を挙げた。小柄なので、伸ばしている腕もちょっと短い。
「え。なんでドニが知ってんの?」
「ボクもちょっとお手伝いさせて頂いたんです。
日本の家庭料理をご希望とのことで」
このシェフは世界各国の家庭料理が得意分野だった。
ユウタの国も守備範囲らしい。
「へー。カミーユとドニのコラボってわけ?」
「お買い物にはアランさんも付き合ってくれましたよ。ね、アランさん?」
無口なシェフはドニに視線を向けられても無視して黒ビールを煽っている。
さっきから、ひとっことも喋ってないのがアラン・ウー。
こいつがもし生徒として学院に来ていても間違いなくアルファルド寮だろう。
「アランさんが、お米を持つと言って下さって。助かっちゃいました」
「コメ?」
「はい。今回のメインはライスボールなんです」
「あー、あの、コメの中に酸っぱいの入れる、ロシアンルーレットみたいなやつか」
「まあ、ちょっと誤解があるみたいですけど、それです。
しかも、ウーティスの皆さんが作るんですよー。
事前に一度、練習もしたんです。皆さん、初めてなのにお上手でしたー。
なんだか、ボク、懐かしい気持ちになっちゃいました」
「懐かしい?」
「はい。以前はテオ様が生徒の皆さんを集めて、お菓子を作ったりされてたので」
「テオかー。あいつ、やることなすことユカイな奴だったからな」
「ええ。テオ様の血はシュヌーシアにちゃんと受け継がれているんですよ?」
「どゆこと?」
「テオ様の後輩方が『テオごっこ』と仰って遊ばれているんです。
『とにかく楽しいことをする』遊びなのだそうで。
ボクも何度か入れて頂きました。ハンバーグを作ってみようの回とか」
「うっわ。テオが子ども残してったみたいじゃん」
「ですね。あ、そう言えば、ウーティスの生徒さんは大人びてるというか、
シュヌーシアの皆さんとは大分違うんだなって思いましたー」
寮によって独特のカラーがある。
もし例えるなら、アルファルドは無彩色、シュヌーシアはパステル、
ウーティスは玉虫色、といったところだろうか。
ビールが空になる。すぐに気付いたドニが新しいビールを頼んでくれた。
「そう言えばアイヴィーさん、よくご存知でしたね? ライスボールなんて」
「ああ、前にハルヤがうち来て、作ったことあっから」
酒のせいか、つい口を滑らせてしまった。
ウーティス寮シェフが目の色を変える。
「何だと? 何故、ハルヤ様がお前の家でライスボールを…コメはどうしたんだ?」
アイヴィーは、かなり挙動不審な様子でなんとか答える。
「あー、どうしたんだっけなー。あ! なんかハルヤんちから送ってきたんだったかな?」
「コメをか?」
「えー、うん。ええっとー」
次の言い訳を必死に考え始めたのだが、どうやらその必要もないらしい。
カミーユが珍しく項垂れている。物凄いショックを与えてしまったようだ。
「ハルヤ様、私に言って下されば良いのに…どうして、お前などに…」
「カミーユはさ、いつも忙しそうにしてるから気を遣ったんだろ、きっと」
このプライドの高いシェフには間違っても言えない。
ハルヤの非常食として、アイヴィーの家には常備米があるなんて。
カミーユの高級料理に飽き始めているデッドプリンスどもが、
アイヴィーの料理を食べに来ること自体、カミーユには知らせていないのだ。
ドニは一人で楽しそうに笑っている。
「ライスボールで楽しいお誕生日パーティになりそうですねー。ね、カミーユさん?」
「え、あ、ああ…」
「…ちょ、元気だせよ、カミーユ」
「顎を突くな」
fin
■ジョシュア×姉貴 シェフトリオ+アイヴィー
「大丈夫。きっと喜ぶよ、ユウタ」
聖アルフォンソ学院 生徒代表の執務室。
部屋の主は受話器を持っていた。台詞と声は至って優しい。
「だって、大好きなお姉さんからのプレゼントなんだから」
壁一面には肖像画。歴代の先輩方から監視される部屋。
一番新しい絵には金髪の生徒。自分は彼の隣に置かれる。
自分が知っているのは、この中でたった5人だけだ。
最初の頃は彼等の視線が気になっていた。
本当はいけないことだから。この部屋で、貴女に電話をすることは。
「そんな心配要らないよ。俺がユウタだったら、本当に嬉しいと思う」
今年度の生徒代表はジョシュア・グラント。
両親は幼い頃に亡くしている。
兄弟もなく、もうこの世に家族と呼べる人は居ない。
一人っ子であることについて、今までは嬉しいとも悲しいとも思っていなかった。
今、電話で話しているのは、友人の姉。
姉という存在。
自分にも姉が居たら、弟はこんなふうに想って貰えるのだろうか。
海を越え、どんなに離れた場所に居ても。
あたたかい声で名前を呼んでくれるのだろうか。
「最近、俺が貴女の弟だったら、ってよく思うんだ」
弟の誕生日が近付くにつれて。
貴女は、ますます弟の話ばかりするから。
悪気がないのは解っているけど。
貴女の声で他の男の名前を聞くと、どうしても胸が苦しくなる。
ユウタは貴女の弟なのに。
ドアがノックされた。受話器の向こうに詫びる。
「すまない、誰か来たみたいだ」
この電話は私用では使えないことになっている。
禁じられた行為だと知っている。
規則を破っても、貴女の声が聞きたかった。
扉越しに練れた声がする。ドクターだ。
生徒代表はドアを見つめながら、受話器の向こうへもう一度詫びる。
「うん。ごめんね。それじゃまた」
お月さまが綺麗な夜。
今日はいい日だった。なんか美味しい物を食べてから帰りたい気分。
アイヴィーは面白かったお仕事を思い返しながら旧市街に来た。
晩ご飯を食べに、行き付けの店に入ったのだが、
ちょっと今夜はいっぱいいっぱいのようだ。
近くのテーブルから、やや高い声が聞こえた。
「あははっ! それ面白過ぎですよー、アランさん」
ちっちゃいシェフの声だ。行ってみると、やっぱり3人居た。
聖アルフォンソ学院のキッチンチームだ。
「よっ。コックさん達、お揃いで」
「アイヴィーさん! こんばんはー」
笑顔で挨拶してるのがドニ・ドーム。シュヌーシア寮シェフ。
甘い物好きの前にはアイスみたいなのがあった。
「今日もデザート食べてんのか、ドニ。もう食事終わったとこ?」
「いえ。まだ来たばかりですよ? これはとりあえず最初に頼んだデザートです。
すっごい美味しいですよ、このライチのシャーベット。レシピ、後で教えて貰いたいなー」
スプーンで掬って、俺の前に出す。薄雲のような色だ。
「アイヴィーさん、食べさせてあげますー。はい、あーんして下さい?」
「俺はいーよ。お前さんが好きなんだろ、そういうのは。
それよりさ、俺もこのテーブルに入れて貰っていい? 他、空いてないからさ」
シェフトリオのリアクションは、歓迎1名、渋々1名、無視1名といつも通り。
ダメって人は居ないみたいなので、椅子を引く。
「んじゃ、おジャマしまーす」
今日、こいつらが注文したのはアジアっぽいメニューばかりだった。
チキンを揚げたのにトロってしてるのがかかってるやつがウマイ。
ドニには緑色のビール瓶を持たされた。中国のビールだ。これもウマイ。
「あ、そだ、カミーユ。お前さんトコのユウタが、もうすぐ誕生日って知ってた?」
「ああ。もちろん。ハルヤ様、シルヴァン様ご指示の下、
当日のメニューも既に決定している。下準備も順調だ」
ウーティス寮シェフ、カミーユ・ルブラン。
高級ビールを置き、割れた顎を撫でる。
「へえー。あいつらと打ち合わせまでしてんのか。何作んの?」
四角い顔のシェフが嫌そうに見つめる。
「お前、またつまみ食いに来るつもりか?」
「あ、バレた?」
「なら、教えん。お前の分などない」
「もー。けちけちカミーユ♪」
人差し指で顎の割れてるトコをツンッてしてやる。
「顎を突くな」
手を除けられた。
俺達を見て、ドニはちょっと高めの声で笑ってる。
三人の中で唯一、陽気で温和なシェフだ。
「そのメニューなら、ボク、知ってまーす♪」
得意げに手を挙げた。小柄なので、伸ばしている腕もちょっと短い。
「え。なんでドニが知ってんの?」
「ボクもちょっとお手伝いさせて頂いたんです。
日本の家庭料理をご希望とのことで」
このシェフは世界各国の家庭料理が得意分野だった。
ユウタの国も守備範囲らしい。
「へー。カミーユとドニのコラボってわけ?」
「お買い物にはアランさんも付き合ってくれましたよ。ね、アランさん?」
無口なシェフはドニに視線を向けられても無視して黒ビールを煽っている。
さっきから、ひとっことも喋ってないのがアラン・ウー。
こいつがもし生徒として学院に来ていても間違いなくアルファルド寮だろう。
「アランさんが、お米を持つと言って下さって。助かっちゃいました」
「コメ?」
「はい。今回のメインはライスボールなんです」
「あー、あの、コメの中に酸っぱいの入れる、ロシアンルーレットみたいなやつか」
「まあ、ちょっと誤解があるみたいですけど、それです。
しかも、ウーティスの皆さんが作るんですよー。
事前に一度、練習もしたんです。皆さん、初めてなのにお上手でしたー。
なんだか、ボク、懐かしい気持ちになっちゃいました」
「懐かしい?」
「はい。以前はテオ様が生徒の皆さんを集めて、お菓子を作ったりされてたので」
「テオかー。あいつ、やることなすことユカイな奴だったからな」
「ええ。テオ様の血はシュヌーシアにちゃんと受け継がれているんですよ?」
「どゆこと?」
「テオ様の後輩方が『テオごっこ』と仰って遊ばれているんです。
『とにかく楽しいことをする』遊びなのだそうで。
ボクも何度か入れて頂きました。ハンバーグを作ってみようの回とか」
「うっわ。テオが子ども残してったみたいじゃん」
「ですね。あ、そう言えば、ウーティスの生徒さんは大人びてるというか、
シュヌーシアの皆さんとは大分違うんだなって思いましたー」
寮によって独特のカラーがある。
もし例えるなら、アルファルドは無彩色、シュヌーシアはパステル、
ウーティスは玉虫色、といったところだろうか。
ビールが空になる。すぐに気付いたドニが新しいビールを頼んでくれた。
「そう言えばアイヴィーさん、よくご存知でしたね? ライスボールなんて」
「ああ、前にハルヤがうち来て、作ったことあっから」
酒のせいか、つい口を滑らせてしまった。
ウーティス寮シェフが目の色を変える。
「何だと? 何故、ハルヤ様がお前の家でライスボールを…コメはどうしたんだ?」
アイヴィーは、かなり挙動不審な様子でなんとか答える。
「あー、どうしたんだっけなー。あ! なんかハルヤんちから送ってきたんだったかな?」
「コメをか?」
「えー、うん。ええっとー」
次の言い訳を必死に考え始めたのだが、どうやらその必要もないらしい。
カミーユが珍しく項垂れている。物凄いショックを与えてしまったようだ。
「ハルヤ様、私に言って下されば良いのに…どうして、お前などに…」
「カミーユはさ、いつも忙しそうにしてるから気を遣ったんだろ、きっと」
このプライドの高いシェフには間違っても言えない。
ハルヤの非常食として、アイヴィーの家には常備米があるなんて。
カミーユの高級料理に飽き始めているデッドプリンスどもが、
アイヴィーの料理を食べに来ること自体、カミーユには知らせていないのだ。
ドニは一人で楽しそうに笑っている。
「ライスボールで楽しいお誕生日パーティになりそうですねー。ね、カミーユさん?」
「え、あ、ああ…」
「…ちょ、元気だせよ、カミーユ」
「顎を突くな」
fin
PR