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■3日前 続編
■ユウタと愉快な仲間達
「あ、レッド達、これからバンドの練習?」
ギターを抱えているアルフレッド、その後ろにはシルヴァンとハルヤ。
デッドプリンスのメンバーが揃って、寮から出ようとしているところだった。
ユウタの顔を見た三人は、ちょっと様子が可笑しかった。
「よ、よう、ユウタ」
「ねえ、俺もバンドの練習に付いて行っても良い?」
「あー、悪ぃ。今日は俺達だけでみっちり練習したいんだ。な?」
「すみません。僕達、ライブが近いんですよ。ね?」
「う、うん。ごめんね、ユウタ。じゃあ」
そそくさと行ってしまった。
ユウタが肩を落として、廊下を歩いていると、
「今日もやるの?」
「嫌かい?」
サロンからジョシュアとアンリの声が聞こえた。
ユウタも中に入ろうとしたのだが、漏れ聞こえる会話内容に足が止まる。
ドアに耳を当て、思いがけず立ち聞きになってしまった。
「最近、ずっとでしょ。僕、もう疲れたよ」
「でもアンリだって、始まったら気持ち良さそうな顔してるよ?」
「変なこと言わないで欲しいな」
「怒るなよ」
その言い方から微笑んでいるのだと解る。
アンリはきっと不機嫌な顔をしているのだろうと想像できた。
「俺は好きだよ、アンリの声。だから、今日も聞かせて欲しいな」
「勝手だね」
「ね。一緒にいこう、アンリ」
かああ、とユウタの顔が赤くなる。
マズイところに出くわしちゃったのかな。
さ、サロンで何が起きているんだろう。
一人でどきどきしている人の後方でバトラーは首を傾げた。
「ユウタ様? どうなさいました?」
「わああ!」
驚いて、ドアを押してしまった。
サロンの床にびたんっと手を着く。
正座状態のユウタとジョシュア達の目が合う。
アンリは侵入者を一瞥すると席を立った。
「僕は失礼するよ」
続けてフランス語で何か呟いた。
ユウタには意味が理解できなかったが、自分への悪口っぽいかんじがした。
ジョシュアも席を立つ。
「あ、ジョシュアも行っちゃうの?」
「うん。これからちょっと…生徒代表室に行ってくるよ」
「そ、そっか」
どうしよう。ジョシュアまで様子が何か変だ。
「そうだ。ユウタ」
「な、なに?」
「悪いけど、携帯を貸して貰えないかな?
お姉さんが一度生徒代表室を見てみたいって言っていたから」
「あ、うん」
携帯を渡して、ジョシュアを見送ることしかできなかった。
ユウタは部屋に戻る。
誰も居ない放課後。最近みんなとゆっくり話せない。
勉強する気にもなれなくて、ベッドに倒れ込む。
携帯電話まで取られてしまった。
傍に携帯がないと思うと、余計、声が聞きたくなる。
「ばか…」
毛布を被った。
聖アルフォンソ島、最大の街フィンシャル。
黒髪の青年が歩いていた。制服ではなく、私服の黒いワイシャツ。
首許にはクロスのペンダントが見える。
街はクリスマスカラーに彩られていた。
特に用事はなく、散歩に来ているだけだった。
雑貨店や玩具屋の通りを歩いていると、
店の中に子供達へのプレゼントになりそうな物が並んでいるのが見えた。
妹が好きそうなものばかりだな、と兄は思う。
妹のことを思い出すと、あいつのことも思い出してしまう。
今年入ったばかりの変な奴。ウーティスの高等部一年。
ショーウインドウを眺めながら、
あいつに似合いそうか、と考えている自分が居た。
ポケットに手を入れて店を通り過ぎる。
最近、自分は変だ。オウムに変なことを聞かされてから。
祝う義理もないのに、何故、落ち着かないのだろう。
赤と緑に染まる街並み。神の誕生日などはどうでもいい。
だが、12月15日が近い。
「すまない、急に電話を掛けて。今、大丈夫かな?」
ユウタの姉の元へ弟の携帯から電話が来た。
出てみると、テレビ電話に映ったのは王子様の微笑。
聖アルフォンソ学院の生徒代表ジョシュアだった。
背景はウーティス寮サロンではなかった。
「今日は、ライブハウスの練習スタジオに来てるんだ。みんな居るよ、ほら」
出たがりのアルフレッドとシルヴァンがアップで映る。
その背景に困り顔のハルヤと呆れ顔のアンリも居た。
ユウタだけがこの場に居ないようだ。携帯がジョシュアに戻る。
「今日はね、ユウタの誕生日のことで、貴女に伝えたいことがあるんだ。
彼へのプレゼントが、やっと決まったんだ。大分時間がかかってしまったけれどね」
以前、ジョシュアが生徒代表室から電話を掛けてきた時、
どうやって誕生日を祝うか皆で考え中だと話していた。
その内容が決まったようだ。
ユウタの姉は「ああ…この前の」と言おうとして、言葉を飲み込む。
生徒代表室から私用の電話をすることは禁じられている。
寮生達にも内緒で貴女に電話を掛けているんだと彼は言っていた。
ジョシュアは軽く目配せをした。ありがとう、という意味だろう。
「俺達、ユウタに歌を作ったんだよ。歌詞は皆で考えたんだ」
携帯の画面が揺れ、アルフレッドが大きく映った。
突き出した親指を自分に向けている。
「んで! 作曲は俺達デッドプリンス!」
「ユウタのイメージでポップで可愛らしい曲になったんですよ♪」
画面にシルヴァンの笑顔が横入りする。
彼一人が映ったまま、隣から音声だけが聞こえる。
先の二人より落ち着いた、ハルヤの声だ。
「そう言えば俺達、今までこういう曲って作ったことなかったよね?」
「ええ。ユウタのおかげで新境地開拓ですね」
今度はシルヴァンとハルヤの中央に携帯が移動され、二人が並んで映った。
ハルヤは画面を見ながら、俯きがちに言う。
「あの、それでね、まだそんなに上手くないから恥ずかしいんだけど…」
途中で遮られ、画面は再びアルフレッドのドアップになる。
キラリと輝く笑顔と歯が眩しい。
「本番前のリハーサルってことで聞いて欲しいんだ、君に!」
えっ、と姉が驚いていると今度はアンリが映る。
小首を傾げバニラボイスで囁いた。
「僕達の歌、聞きたくないの?」
横からアルフレッドが突っ掛かって来る。
画面には床が映り、ゆさゆさと画面が揺れる。
「携帯取んなよ、アンリ!」
「君が喋り過ぎなんだよ」
落ち着いて、という声が後方から聞こえる。
画面にはレッドとアンリの姿が小さく映る。
ジョシュアはテーブルの上に携帯を置いたようだ。
「さあ、みんな、聞いて貰おう? 俺達の歌を」
おう、と声が上がる。
携帯画面に5人のマージナルプリンスが揃う。
携帯越しのシークレットライブが始まった。
fin
■ユウタと愉快な仲間達
「あ、レッド達、これからバンドの練習?」
ギターを抱えているアルフレッド、その後ろにはシルヴァンとハルヤ。
デッドプリンスのメンバーが揃って、寮から出ようとしているところだった。
ユウタの顔を見た三人は、ちょっと様子が可笑しかった。
「よ、よう、ユウタ」
「ねえ、俺もバンドの練習に付いて行っても良い?」
「あー、悪ぃ。今日は俺達だけでみっちり練習したいんだ。な?」
「すみません。僕達、ライブが近いんですよ。ね?」
「う、うん。ごめんね、ユウタ。じゃあ」
そそくさと行ってしまった。
ユウタが肩を落として、廊下を歩いていると、
「今日もやるの?」
「嫌かい?」
サロンからジョシュアとアンリの声が聞こえた。
ユウタも中に入ろうとしたのだが、漏れ聞こえる会話内容に足が止まる。
ドアに耳を当て、思いがけず立ち聞きになってしまった。
「最近、ずっとでしょ。僕、もう疲れたよ」
「でもアンリだって、始まったら気持ち良さそうな顔してるよ?」
「変なこと言わないで欲しいな」
「怒るなよ」
その言い方から微笑んでいるのだと解る。
アンリはきっと不機嫌な顔をしているのだろうと想像できた。
「俺は好きだよ、アンリの声。だから、今日も聞かせて欲しいな」
「勝手だね」
「ね。一緒にいこう、アンリ」
かああ、とユウタの顔が赤くなる。
マズイところに出くわしちゃったのかな。
さ、サロンで何が起きているんだろう。
一人でどきどきしている人の後方でバトラーは首を傾げた。
「ユウタ様? どうなさいました?」
「わああ!」
驚いて、ドアを押してしまった。
サロンの床にびたんっと手を着く。
正座状態のユウタとジョシュア達の目が合う。
アンリは侵入者を一瞥すると席を立った。
「僕は失礼するよ」
続けてフランス語で何か呟いた。
ユウタには意味が理解できなかったが、自分への悪口っぽいかんじがした。
ジョシュアも席を立つ。
「あ、ジョシュアも行っちゃうの?」
「うん。これからちょっと…生徒代表室に行ってくるよ」
「そ、そっか」
どうしよう。ジョシュアまで様子が何か変だ。
「そうだ。ユウタ」
「な、なに?」
「悪いけど、携帯を貸して貰えないかな?
お姉さんが一度生徒代表室を見てみたいって言っていたから」
「あ、うん」
携帯を渡して、ジョシュアを見送ることしかできなかった。
ユウタは部屋に戻る。
誰も居ない放課後。最近みんなとゆっくり話せない。
勉強する気にもなれなくて、ベッドに倒れ込む。
携帯電話まで取られてしまった。
傍に携帯がないと思うと、余計、声が聞きたくなる。
「ばか…」
毛布を被った。
聖アルフォンソ島、最大の街フィンシャル。
黒髪の青年が歩いていた。制服ではなく、私服の黒いワイシャツ。
首許にはクロスのペンダントが見える。
街はクリスマスカラーに彩られていた。
特に用事はなく、散歩に来ているだけだった。
雑貨店や玩具屋の通りを歩いていると、
店の中に子供達へのプレゼントになりそうな物が並んでいるのが見えた。
妹が好きそうなものばかりだな、と兄は思う。
妹のことを思い出すと、あいつのことも思い出してしまう。
今年入ったばかりの変な奴。ウーティスの高等部一年。
ショーウインドウを眺めながら、
あいつに似合いそうか、と考えている自分が居た。
ポケットに手を入れて店を通り過ぎる。
最近、自分は変だ。オウムに変なことを聞かされてから。
祝う義理もないのに、何故、落ち着かないのだろう。
赤と緑に染まる街並み。神の誕生日などはどうでもいい。
だが、12月15日が近い。
「すまない、急に電話を掛けて。今、大丈夫かな?」
ユウタの姉の元へ弟の携帯から電話が来た。
出てみると、テレビ電話に映ったのは王子様の微笑。
聖アルフォンソ学院の生徒代表ジョシュアだった。
背景はウーティス寮サロンではなかった。
「今日は、ライブハウスの練習スタジオに来てるんだ。みんな居るよ、ほら」
出たがりのアルフレッドとシルヴァンがアップで映る。
その背景に困り顔のハルヤと呆れ顔のアンリも居た。
ユウタだけがこの場に居ないようだ。携帯がジョシュアに戻る。
「今日はね、ユウタの誕生日のことで、貴女に伝えたいことがあるんだ。
彼へのプレゼントが、やっと決まったんだ。大分時間がかかってしまったけれどね」
以前、ジョシュアが生徒代表室から電話を掛けてきた時、
どうやって誕生日を祝うか皆で考え中だと話していた。
その内容が決まったようだ。
ユウタの姉は「ああ…この前の」と言おうとして、言葉を飲み込む。
生徒代表室から私用の電話をすることは禁じられている。
寮生達にも内緒で貴女に電話を掛けているんだと彼は言っていた。
ジョシュアは軽く目配せをした。ありがとう、という意味だろう。
「俺達、ユウタに歌を作ったんだよ。歌詞は皆で考えたんだ」
携帯の画面が揺れ、アルフレッドが大きく映った。
突き出した親指を自分に向けている。
「んで! 作曲は俺達デッドプリンス!」
「ユウタのイメージでポップで可愛らしい曲になったんですよ♪」
画面にシルヴァンの笑顔が横入りする。
彼一人が映ったまま、隣から音声だけが聞こえる。
先の二人より落ち着いた、ハルヤの声だ。
「そう言えば俺達、今までこういう曲って作ったことなかったよね?」
「ええ。ユウタのおかげで新境地開拓ですね」
今度はシルヴァンとハルヤの中央に携帯が移動され、二人が並んで映った。
ハルヤは画面を見ながら、俯きがちに言う。
「あの、それでね、まだそんなに上手くないから恥ずかしいんだけど…」
途中で遮られ、画面は再びアルフレッドのドアップになる。
キラリと輝く笑顔と歯が眩しい。
「本番前のリハーサルってことで聞いて欲しいんだ、君に!」
えっ、と姉が驚いていると今度はアンリが映る。
小首を傾げバニラボイスで囁いた。
「僕達の歌、聞きたくないの?」
横からアルフレッドが突っ掛かって来る。
画面には床が映り、ゆさゆさと画面が揺れる。
「携帯取んなよ、アンリ!」
「君が喋り過ぎなんだよ」
落ち着いて、という声が後方から聞こえる。
画面にはレッドとアンリの姿が小さく映る。
ジョシュアはテーブルの上に携帯を置いたようだ。
「さあ、みんな、聞いて貰おう? 俺達の歌を」
おう、と声が上がる。
携帯画面に5人のマージナルプリンスが揃う。
携帯越しのシークレットライブが始まった。
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