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■アラン・ウー ドニ・ドーム
■シリアス
月桂樹の森。
木洩れ陽の中、シュヌーシア寮シェフが散歩していた。
日常的な悩みを抱え、歩きながら考えているところだった。
「メニュー、決まらないなあ…」
ウーティス寮のシェフは完璧主義なので
1か月先までは確実にメニューが決まっているのだが、
シュヌーシア寮では寮生の評判を聞きながら決めたりするので、
メニューが事前に決まっている期間が短かった。
唸りながら歩いていると先輩の姿を発見した。
高い背丈、袖のない服から地黒の腕を晒している。
アルファルド寮のシェフだ。
彼に今日のメニューを聞いて、参考にしようと思い、走っていく。
「アランさーん!」
駆け寄ると、アランは片手に何か乗せて、
もう一方の手でそれを覆っていた。
「何持っているんですか?」
アランはドニを見つめる。彼の声は低く、小さかった。
「止めておけ」
「秘密にされると見たくなっちゃうじゃないですか」
ドニはアランの手に触れ、中を見た。
「これ…」
「ナイチンゲールの雛だ」
小鳥の目は開いていない。
「この子、ケガしてるんですか?」
首は横に振られた。
「見付けた時には息をしていなかった」
「えっ」
「巣から落ちたんだろう。この時期には珍しくないことだ」
アランの視線の先には枝で作った巣があった。
ドニに視線を戻すと、その瞳には涙が溜まっていた。
「何故泣く?」
「だって、まだ生まれたばかりなのに…」
「生きていた時間が関係するのか?」
アランは手の中に視線を落とす。翼はぴくりとも動かない。
「同じ死んだ鳥でも調理場か森、見る場所で感情が違う。俺は常に疑問だ」
翼に破れた落ち葉が入っていた。浅黒い指が葉を取る。
小鳥を持ったまま、寮とは逆側へ歩き出す。
「何処へ行くんですか?」
「動物達の墓地へ」
「アランさん」止まった背中に問う。
「僕も行って良いですか?」
アランは返事をせずに歩き出す。ドニはその背中を追い駆けた。
「綺麗な、場所ですね」
広い草原に風がなびく。天文台と呼ばれる遺跡に程近い。
黄色と白の花が群れて咲いていた。
アランが立ち止まった場所には既に墓が幾つかあった。
長身の同僚を見上げる。
「これ…全部、アランさんが?」
「月桂樹の森には動物が多く棲んでいる」
腰を降ろす。落ちていた大き目の石で土を掘った。
「本来であれば、死骸は他の動物に食わせるべきだがな」
丸い穴ができると、亡骸を土に寝かせた。
何も言わずに、浅黒い指が小鳥の頭を撫でる。
その上に土をかぶせた。
穴を作る時に抜いた花をドニが添える。
小さな墓。
見つめたまま、立ち尽くしていた。
アランが腰を上げる。
「戻るぞ」
踵を返す。
「はい」
ごしごしと涙を拭いて、先輩の後に続く。
もう夕食の仕度を始める時間だった。
二人は何も話さない。
草原に吹く風の音が、さわさわと聞こえる。
青い空には鳥が飛んでいた。
fin
■シリアス
月桂樹の森。
木洩れ陽の中、シュヌーシア寮シェフが散歩していた。
日常的な悩みを抱え、歩きながら考えているところだった。
「メニュー、決まらないなあ…」
ウーティス寮のシェフは完璧主義なので
1か月先までは確実にメニューが決まっているのだが、
シュヌーシア寮では寮生の評判を聞きながら決めたりするので、
メニューが事前に決まっている期間が短かった。
唸りながら歩いていると先輩の姿を発見した。
高い背丈、袖のない服から地黒の腕を晒している。
アルファルド寮のシェフだ。
彼に今日のメニューを聞いて、参考にしようと思い、走っていく。
「アランさーん!」
駆け寄ると、アランは片手に何か乗せて、
もう一方の手でそれを覆っていた。
「何持っているんですか?」
アランはドニを見つめる。彼の声は低く、小さかった。
「止めておけ」
「秘密にされると見たくなっちゃうじゃないですか」
ドニはアランの手に触れ、中を見た。
「これ…」
「ナイチンゲールの雛だ」
小鳥の目は開いていない。
「この子、ケガしてるんですか?」
首は横に振られた。
「見付けた時には息をしていなかった」
「えっ」
「巣から落ちたんだろう。この時期には珍しくないことだ」
アランの視線の先には枝で作った巣があった。
ドニに視線を戻すと、その瞳には涙が溜まっていた。
「何故泣く?」
「だって、まだ生まれたばかりなのに…」
「生きていた時間が関係するのか?」
アランは手の中に視線を落とす。翼はぴくりとも動かない。
「同じ死んだ鳥でも調理場か森、見る場所で感情が違う。俺は常に疑問だ」
翼に破れた落ち葉が入っていた。浅黒い指が葉を取る。
小鳥を持ったまま、寮とは逆側へ歩き出す。
「何処へ行くんですか?」
「動物達の墓地へ」
「アランさん」止まった背中に問う。
「僕も行って良いですか?」
アランは返事をせずに歩き出す。ドニはその背中を追い駆けた。
「綺麗な、場所ですね」
広い草原に風がなびく。天文台と呼ばれる遺跡に程近い。
黄色と白の花が群れて咲いていた。
アランが立ち止まった場所には既に墓が幾つかあった。
長身の同僚を見上げる。
「これ…全部、アランさんが?」
「月桂樹の森には動物が多く棲んでいる」
腰を降ろす。落ちていた大き目の石で土を掘った。
「本来であれば、死骸は他の動物に食わせるべきだがな」
丸い穴ができると、亡骸を土に寝かせた。
何も言わずに、浅黒い指が小鳥の頭を撫でる。
その上に土をかぶせた。
穴を作る時に抜いた花をドニが添える。
小さな墓。
見つめたまま、立ち尽くしていた。
アランが腰を上げる。
「戻るぞ」
踵を返す。
「はい」
ごしごしと涙を拭いて、先輩の後に続く。
もう夕食の仕度を始める時間だった。
二人は何も話さない。
草原に吹く風の音が、さわさわと聞こえる。
青い空には鳥が飛んでいた。
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