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■ジョシュア×姉貴
■年賀メールベース
「やあ。日本語では、あけましておめでとう、だよね?」
生徒代表は今年習った言葉で新年の挨拶をした。
左手にはクラシックな受話器。
「ユウタとハルヤに教えて貰ったんだ、色々とね。
俺達、今年は日本式の正月遊びをしたんだよ」
聖アルフォンソ学院 生徒代表室。
学生課棟の最奥に位置する広い一室。
此処がこの島の王室と言っても過言ではない。
窓からは月桂樹の森が見える。
空は青くて、木は気持良さそうに葉を揺らしていた。
ジョシュアがこの学院で一番好きな場所だ。
あの森を、貴女と歩けたら、どんなに幸福だろう。
今年度の代表ジョシュアは王の椅子にゆったりと座っていた。
ここ数日、あっという間に過ぎて行ったお正月を振り返る。
色んなことを教わった。貴女の国のことを。
「俺は羽根突きが一番面白かったな。あの、木のラケット…
いや、そう、羽子板でラリーする…うん。少しテニスと似ていたよ」
今年度の生徒代表はテニスは好きだった。
学院にはテニスコートが20面もあるので、
プレイしたい時にはいつでも利用できた。
テニス同様、羽根付きにも、ラケットとボールがあり、
ジョシュアには一番楽しめた遊びだった。
自分の好きなものと異国の遊びとの間に、
ささやかなながらも共通点を見い出せたことも嬉しかった。
それが今、最も大切に思っている人の国なら尚更。
「君も小さい頃、ユウタと羽根突きをしたんだってね。
貴女は強くて、よく顔に墨を塗られたと言っていたよ。
俺もいつか、貴女としたいな、羽根付き。
貴女の晴れ着姿も、きっと綺麗だろうし」
受話器から謙遜の言葉が聞こえる。
どうやら日本人の気質なのか、賛辞の類は否定されてしまう。
ジョシュアとしては全くお世辞ではなく、本音を伝えているのだが。
相手の少し朱に染まった顔が想像できて、声に出さずに微笑む。
他にはどんな遊びを、と貴女は話題を変えてきた。
「他に? あ、花札というカードゲームをしたよ。
あれはアンリが気に入っていたな。
タロットのように綺麗なカードだったからかもしれないね」
レッドは、ルールを覚えるのが大変だと嫌がっていたけど、
アンリの口には合ったようだった。
彼はカードゲームやチェスなどの頭脳戦には強いから。
羽根突きや独楽回しの時はレッドに負けて、不貞腐れていたけれど。
体力勝負のゲームは圧倒的にレッドやシルヴァンに有利だった。
日本が大好きなシルヴァンは特に、今年のお正月はとても嬉しそうで、
見ているこちらまで楽しい気持ちにさせてくれた。
ハルヤは、ユウタよりも日本の遊びに詳しかった。
ルールに留まらず、聞かれれば、その歴史などもぽつりぽつりと話していた。
本人は「じいさまから聞いただけ」といつものように控え目で。
褒められて、恥ずかしそうにしていた。
「そうだ。俺達、書き初めもしたんだ。
やっぱり、ユウタとハルヤが書いたものは上手かった。
漢字って美しい文字だなって思ったよ」
貴女が居る国。
その文化に触れることができて良かった。
日本のことを少しずつ知るようになった。
ユウタがウーティス寮に来てから。
貴女と、出会ってから。
「ねえ。君は、どんなお正月だった?」
それから暫くジョシュアは耳を澄まして聞き役に回る。
最初はおずおずと話していた。
だんだん色々なことを思い出してきたようで、声が明るくなっていく。
話し方や声質はユウタと似ている。やはり姉弟なんだと解るものだった。
受話器から聞こえてくる貴女の声。
この学院では聞くことのない柔らかい声だ。
生徒代表室から貴女へ電話をかける度に焦がれる。
ずっと、いつまでも聞いていたい声。
電話を切った時にはいつも胸が暖かくなっている。
耳には残り香みたいに貴女の声が残るんだ。
俺は「またね」と受話器を下ろした後、
またすぐに受話器を取りたくなるんだよ。
相槌を打ちながら貴女の話を聞いていると、
耳に入った言葉に、ジョシュアは思わず聞き返した。
「初日の出を見に行ったの? 俺達も見たんだよ」
2008年最初の夜明けをウーティス全員で。
朝陽を見るなら、とレッドに言われて皆で城壁の上に登った。
流石に夜中は肌寒かったんだけど、
初日の出を見つけると、その美しさに寒さも忘れてしまった。
ユウタも暫く見惚れていたけど、慌てて両手を組んだ。
一年の決意や願い事をするものなのだと聞いて、俺は。
「皆でね、願い事をしたんだ、朝陽に。俺? うん。願ったよ」
聞かせて欲しい、と聞こえる声。
貴女の頼みは何でも叶えたい。
窓の外で月桂樹がゆらゆらと揺れている。
俺の一番好きな場所。
俺の一番好きな。
「貴女の2008年が幸せでありますように、って」
それが一番目の願い事。
何より最初に叶えて欲しい事だから。
二番目の願いは、貴女にはまだ言えないけれど。
叶うと良いな。
俺の想いが貴女に届きますようにって願ったんだよ。
fin
■年賀メールベース
「やあ。日本語では、あけましておめでとう、だよね?」
生徒代表は今年習った言葉で新年の挨拶をした。
左手にはクラシックな受話器。
「ユウタとハルヤに教えて貰ったんだ、色々とね。
俺達、今年は日本式の正月遊びをしたんだよ」
聖アルフォンソ学院 生徒代表室。
学生課棟の最奥に位置する広い一室。
此処がこの島の王室と言っても過言ではない。
窓からは月桂樹の森が見える。
空は青くて、木は気持良さそうに葉を揺らしていた。
ジョシュアがこの学院で一番好きな場所だ。
あの森を、貴女と歩けたら、どんなに幸福だろう。
今年度の代表ジョシュアは王の椅子にゆったりと座っていた。
ここ数日、あっという間に過ぎて行ったお正月を振り返る。
色んなことを教わった。貴女の国のことを。
「俺は羽根突きが一番面白かったな。あの、木のラケット…
いや、そう、羽子板でラリーする…うん。少しテニスと似ていたよ」
今年度の生徒代表はテニスは好きだった。
学院にはテニスコートが20面もあるので、
プレイしたい時にはいつでも利用できた。
テニス同様、羽根付きにも、ラケットとボールがあり、
ジョシュアには一番楽しめた遊びだった。
自分の好きなものと異国の遊びとの間に、
ささやかなながらも共通点を見い出せたことも嬉しかった。
それが今、最も大切に思っている人の国なら尚更。
「君も小さい頃、ユウタと羽根突きをしたんだってね。
貴女は強くて、よく顔に墨を塗られたと言っていたよ。
俺もいつか、貴女としたいな、羽根付き。
貴女の晴れ着姿も、きっと綺麗だろうし」
受話器から謙遜の言葉が聞こえる。
どうやら日本人の気質なのか、賛辞の類は否定されてしまう。
ジョシュアとしては全くお世辞ではなく、本音を伝えているのだが。
相手の少し朱に染まった顔が想像できて、声に出さずに微笑む。
他にはどんな遊びを、と貴女は話題を変えてきた。
「他に? あ、花札というカードゲームをしたよ。
あれはアンリが気に入っていたな。
タロットのように綺麗なカードだったからかもしれないね」
レッドは、ルールを覚えるのが大変だと嫌がっていたけど、
アンリの口には合ったようだった。
彼はカードゲームやチェスなどの頭脳戦には強いから。
羽根突きや独楽回しの時はレッドに負けて、不貞腐れていたけれど。
体力勝負のゲームは圧倒的にレッドやシルヴァンに有利だった。
日本が大好きなシルヴァンは特に、今年のお正月はとても嬉しそうで、
見ているこちらまで楽しい気持ちにさせてくれた。
ハルヤは、ユウタよりも日本の遊びに詳しかった。
ルールに留まらず、聞かれれば、その歴史などもぽつりぽつりと話していた。
本人は「じいさまから聞いただけ」といつものように控え目で。
褒められて、恥ずかしそうにしていた。
「そうだ。俺達、書き初めもしたんだ。
やっぱり、ユウタとハルヤが書いたものは上手かった。
漢字って美しい文字だなって思ったよ」
貴女が居る国。
その文化に触れることができて良かった。
日本のことを少しずつ知るようになった。
ユウタがウーティス寮に来てから。
貴女と、出会ってから。
「ねえ。君は、どんなお正月だった?」
それから暫くジョシュアは耳を澄まして聞き役に回る。
最初はおずおずと話していた。
だんだん色々なことを思い出してきたようで、声が明るくなっていく。
話し方や声質はユウタと似ている。やはり姉弟なんだと解るものだった。
受話器から聞こえてくる貴女の声。
この学院では聞くことのない柔らかい声だ。
生徒代表室から貴女へ電話をかける度に焦がれる。
ずっと、いつまでも聞いていたい声。
電話を切った時にはいつも胸が暖かくなっている。
耳には残り香みたいに貴女の声が残るんだ。
俺は「またね」と受話器を下ろした後、
またすぐに受話器を取りたくなるんだよ。
相槌を打ちながら貴女の話を聞いていると、
耳に入った言葉に、ジョシュアは思わず聞き返した。
「初日の出を見に行ったの? 俺達も見たんだよ」
2008年最初の夜明けをウーティス全員で。
朝陽を見るなら、とレッドに言われて皆で城壁の上に登った。
流石に夜中は肌寒かったんだけど、
初日の出を見つけると、その美しさに寒さも忘れてしまった。
ユウタも暫く見惚れていたけど、慌てて両手を組んだ。
一年の決意や願い事をするものなのだと聞いて、俺は。
「皆でね、願い事をしたんだ、朝陽に。俺? うん。願ったよ」
聞かせて欲しい、と聞こえる声。
貴女の頼みは何でも叶えたい。
窓の外で月桂樹がゆらゆらと揺れている。
俺の一番好きな場所。
俺の一番好きな。
「貴女の2008年が幸せでありますように、って」
それが一番目の願い事。
何より最初に叶えて欲しい事だから。
二番目の願いは、貴女にはまだ言えないけれど。
叶うと良いな。
俺の想いが貴女に届きますようにって願ったんだよ。
fin
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