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■2日目1:テオの部屋 続編
それから数分後、ユウタの携帯から着信があった。
画面いっぱいに映ったのは色鮮やかな花束だった。
ユウタの姉が驚いていると、ひょいと横からテオが現れた。
「サンベリーナに似合いそうな花だったから貰った来たんだ。
けれど、やはり姫の美しさには叶わないね」
そう言って楽しそうに笑っていた。
テオの背景に見えたのは森。
木々の間からは木洩れ陽が差し込んでいる。
それはユウタの姉にとって既に目に馴染む光景だった。
もしかして月桂樹ですか、とテオに聞いてみる。
「よく解ったね。そうなのだよ。私の父は月桂樹が大好きで、
卒業後、此処に戻ってきた時にこの月桂樹の裏庭を作ったんだ。
彼も学院の卒業生でね。メネシスの者は20世紀初頭から学院へ入学するようになったから。
此処は、聖アルフォンソ島の森よりは小さいが、なかなか雰囲気はあるだろう?
父も時折、一人で此処へシエスタに来るのだよ。他では得られない癒しの場なのだって。
私も学院を卒業してからは此処に来るようになったんだ。この葉の香りが良いのかな?
目を閉じると、過去へタイムスリップしたような気持ちになるんだ。
ナイチンゲールの歌声まで聞こえてくるようだよ。
そして今は、あの鳥よりも美しい声が私を癒してくれる」
掲げるように持っていた携帯を、伸ばした膝に乗せた。
テオは幹に右肩を預ける。覗き込むようにして画面に近付く。
「サンベリーナは膝枕をしても軽いのだね。ああ、私の心まで軽くなるようだ」
テオの横顔はとても穏やかで、リラックスしている雰囲気は画面越しにも伝わった。
黄金色の前髪が時折ふわりと風に遊ばれる。
きっとギリシャでは気持ちの良い風が吹いているのだろう。
画面からテオの横顔が消える。
「サンベリーナ、木洩れ陽を感じるかい? この木はね、今の時刻が最も美しいんだ」
テオが退けると頭上の光景がよく見えた。葉の隙間から光る太陽は宝石のようだ。
学院の森は何度か見せて貰ったことがあるのだが、
真下から月桂樹を眺めたのは初めてかもしれなかった。
「月桂樹はね、ギリシャ語では『ダフネ』と言うんだ。
私の姉上も同じ名なのだよ。この名は父上が考えたんだ。
ギリシャ神話のダフネのことを想うと少し皮肉な名だったかもしれないね」
一息置いて、画面にテオが戻ってくる。
「ああ、そうだ。サンベリーナ、昨夜は私との約束を守ってくれてありがとう」
ユウタの姉が首を傾げると、テオは楽しそうに笑った。
「おや。忘れてしまったのかい? 昨夜、姫は私の夢へ会いに来てくれただろう?
とても甘い夢だった。姫のおかげで今朝は久し振りに幸福な目覚めだったよ。
また私に会いたくなった時はいつでも来ておくれ。昨夜の続きをしよう?」
黄金の髪が木洩れ陽を受けて一層輝く。
甘い笑顔は次に少し子供っぽく変わる。
「それでね、今日は姫にお礼の贈り物を選んできたんだ」
ごそごそと姉の携帯画面が揺れる。
テオはポケットから革の小さな袋を取り出した。
中の物を丁寧に小麦色の手の平に乗せる。
しゃらりと音を立てたのはシルバーのアクセサリー。
「今日、ギリシャの観光中に見つけたんだ。
チューリップのネックレスだよ。サンベリーナにピッタリだろう?
この銀色の花を見た時、姫のことばかり考えていたから、
最初は錯覚かなと思ったくらいだよ。
見えるかな? ほら、雫のように花が咲いているのだよ」
ネックレスのトップに、小さなチューリップが揺れる。
「首許に合わせてみようか」
テオは膝に乗せていた携帯電話にネックレスを近付ける。
彼女の首許にチューリップを重ねた。
「可愛いよ、サンベリーナ。とても似合う。ああ、姫がもっと愛らしくなってしまった」
感激に浸り、とても嬉しそうな顔を見せていた。
「これはユウタに預ければ姫に届くかな? 彼に渡しておくね?」
テオはネックレスを小さな革の袋に戻し、ポケットに仕舞う。
ユウタの姉はその様子を見ながら、テオに伝える。
→ありがとう
→受け取れません
それから数分後、ユウタの携帯から着信があった。
画面いっぱいに映ったのは色鮮やかな花束だった。
ユウタの姉が驚いていると、ひょいと横からテオが現れた。
「サンベリーナに似合いそうな花だったから貰った来たんだ。
けれど、やはり姫の美しさには叶わないね」
そう言って楽しそうに笑っていた。
テオの背景に見えたのは森。
木々の間からは木洩れ陽が差し込んでいる。
それはユウタの姉にとって既に目に馴染む光景だった。
もしかして月桂樹ですか、とテオに聞いてみる。
「よく解ったね。そうなのだよ。私の父は月桂樹が大好きで、
卒業後、此処に戻ってきた時にこの月桂樹の裏庭を作ったんだ。
彼も学院の卒業生でね。メネシスの者は20世紀初頭から学院へ入学するようになったから。
此処は、聖アルフォンソ島の森よりは小さいが、なかなか雰囲気はあるだろう?
父も時折、一人で此処へシエスタに来るのだよ。他では得られない癒しの場なのだって。
私も学院を卒業してからは此処に来るようになったんだ。この葉の香りが良いのかな?
目を閉じると、過去へタイムスリップしたような気持ちになるんだ。
ナイチンゲールの歌声まで聞こえてくるようだよ。
そして今は、あの鳥よりも美しい声が私を癒してくれる」
掲げるように持っていた携帯を、伸ばした膝に乗せた。
テオは幹に右肩を預ける。覗き込むようにして画面に近付く。
「サンベリーナは膝枕をしても軽いのだね。ああ、私の心まで軽くなるようだ」
テオの横顔はとても穏やかで、リラックスしている雰囲気は画面越しにも伝わった。
黄金色の前髪が時折ふわりと風に遊ばれる。
きっとギリシャでは気持ちの良い風が吹いているのだろう。
画面からテオの横顔が消える。
「サンベリーナ、木洩れ陽を感じるかい? この木はね、今の時刻が最も美しいんだ」
テオが退けると頭上の光景がよく見えた。葉の隙間から光る太陽は宝石のようだ。
学院の森は何度か見せて貰ったことがあるのだが、
真下から月桂樹を眺めたのは初めてかもしれなかった。
「月桂樹はね、ギリシャ語では『ダフネ』と言うんだ。
私の姉上も同じ名なのだよ。この名は父上が考えたんだ。
ギリシャ神話のダフネのことを想うと少し皮肉な名だったかもしれないね」
一息置いて、画面にテオが戻ってくる。
「ああ、そうだ。サンベリーナ、昨夜は私との約束を守ってくれてありがとう」
ユウタの姉が首を傾げると、テオは楽しそうに笑った。
「おや。忘れてしまったのかい? 昨夜、姫は私の夢へ会いに来てくれただろう?
とても甘い夢だった。姫のおかげで今朝は久し振りに幸福な目覚めだったよ。
また私に会いたくなった時はいつでも来ておくれ。昨夜の続きをしよう?」
黄金の髪が木洩れ陽を受けて一層輝く。
甘い笑顔は次に少し子供っぽく変わる。
「それでね、今日は姫にお礼の贈り物を選んできたんだ」
ごそごそと姉の携帯画面が揺れる。
テオはポケットから革の小さな袋を取り出した。
中の物を丁寧に小麦色の手の平に乗せる。
しゃらりと音を立てたのはシルバーのアクセサリー。
「今日、ギリシャの観光中に見つけたんだ。
チューリップのネックレスだよ。サンベリーナにピッタリだろう?
この銀色の花を見た時、姫のことばかり考えていたから、
最初は錯覚かなと思ったくらいだよ。
見えるかな? ほら、雫のように花が咲いているのだよ」
ネックレスのトップに、小さなチューリップが揺れる。
「首許に合わせてみようか」
テオは膝に乗せていた携帯電話にネックレスを近付ける。
彼女の首許にチューリップを重ねた。
「可愛いよ、サンベリーナ。とても似合う。ああ、姫がもっと愛らしくなってしまった」
感激に浸り、とても嬉しそうな顔を見せていた。
「これはユウタに預ければ姫に届くかな? 彼に渡しておくね?」
テオはネックレスを小さな革の袋に戻し、ポケットに仕舞う。
ユウタの姉はその様子を見ながら、テオに伝える。
→ありがとう
→受け取れません
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