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■テオ×クラウス
「クラウス、クラウス! ちょっと来ておくれ!」
「なんだ一体…おいっ」
シュヌーシア寮の放課後。
テオは自室で予習中だったクラウスの手を引っ張っていった。
クラウスが連れて行かれたのはサロン。
他にもテオを慕う後輩達が何人か集まっていた。
最近入った新入りも何故か居る。寮が違う筈なのだが。
生徒達が囲むテーブルには、巨大なウサギ型のチョコレート。
辺りには濃厚なカカオの香りが充満している。
甘いものが苦手な生徒代表は、もう具合が悪くなるようだった。
笑顔のテオは自信満々に紹介する。
「じゃーん! みんなでチョコレートを作ってみました!」
「チョコレートなのは解るが、何故こんなにも、でかいウサギにする必要が?」
「シルヴァンがオリエンタルのバレンタインを教えてくれたのだよ。
愛する人へウサギ型チョコレートを送るものなんだって。
それで、私とみんなで心を込めて、
愛するシュヌーシアのみんなに作った、というわけなのだよ」
だから新入りがそこに座っているのかと生徒代表は思う。
しかし、入ったばかりにしては馴染み過ぎだ。
生徒代表の渋い顔をよそに、テオのウキウキは止まらない。
「もちろん、みんなへの愛はチョコでは表現しきれないほど大きいのだけど、
一分の一サイズで作ると、みんなが虫歯になってしまうかもしれないからね」
「見ているだけで歯が痛くなりそうだがな」
「大丈夫だよ、クラウス。大きいけれど、それほど甘くはないんだ。
クラウスも食べられるように、少しビターなオトナの味で作ったんだ。
中等部のみんなはココアと一緒に食べると良いかな。
貴方に最初に食べて貰おうと思って、みんなも待っていてくれているんだよ?
やはり、生徒代表だし、シュヌーシアのお父さんだし、私のクラウスだから」
「…最後の方が、納得いかないが」
「そう? 私はそろそろ納得して欲しいよ?」
甘い笑顔を前に、クラウスは肩を落とす。
頭が痛くなってきたのは甘いカカオのせいだけだろうか。
「大体、チョコを食べるのは、俺が最初ではないだろう?」
「えっ?」
「お前の唇にチョコが付いている。ったく子供か、お前は。早く拭け」
テオは人差し指で唇をなぞる。指に少しチョコが付いた。
さっき味見をした時に付いたようだ。
ぺろと人差し指を舐めると、スイートな考えが浮かんだ。
「クラウス、それは私の唇に付いたチョコの方が食べたいという意味?」
「俺が『そうだ』とでも言うと思うのか」
「言えないよね、みんなの前だもの」
中等部一年が、ハイハイ、と手を叩く。
「おノロケはそのくらいにしてさ、早くチョコ食おうぜ?
じゃないと、熱くってチョコが溶けちゃうし?」
生意気な後輩にからかわれ、生徒代表は喧嘩を買った。
「レオン。今のどこが惚気なんだ」
「全体的にー。なあ、テオー。俺、おなかすいたー。もう食べてもイイだろ?」
「そうだね。みんなで食べようか」
それを合図に皆がチョコの端をポキポキ折って食べ始める。
お持ち帰り用の小箱に折ったチョコを入れる者も居た。
パキン、ポキンと小気味の良い音が響く。
テオもウサギの耳を少し折って箱に乗せ、クラウスに差し出した。
「はい、クラウス。ハッピーバレンタイン。愛しているよ」
至って自然に差し出された甘いもの。
クラウスが受け取れないでいると、テオは笑顔で首を傾げた。
「もしかして、口移しが良かった? 此処ではダメではない?」
「普通に食べる」
奪うように取って、チョコを口に入れた。
二人の遣り取りを見ていた生徒が、同じようにウサギチョコの耳を折った。
テオによく懐いているラビットだ。まだ小学生のような身体を持つ。
チョコを入れた箱を手にして一番の友達の元に戻ってくる。
「レオン、レオン」
「んー?」
「あの、これからも、一緒に宿題したり、遊んだりしてくれる?」
「おうよ! あったりまえじゃん!」
「ありがと! はい、ハッピーバレンタイン」
あーん、と開いた口にチョコを入れる。
ほのぼのと笑い合う中等部一年生の様子を見て、テオは微笑ましく見守っていた。
「若い子は素直で良いねえ。クラウスもあの子達を見習っては?」
「断る」
ラビットが駆け寄ってきて、テオの前にチョコの箱を差し出した。
「テオ! いつもありがと! ハッピーバレンタイン!」
「ああ、ラビ…なんて愛しい子なのだろう。ありがとう、頂くよ」
先輩は身を屈める。手を伸ばし、チョコを口に入れる。
後輩達と一緒に作ったチョコレートが甘く溶けていく。
堪え切れないと言わんばかりに後輩を抱き締めた。
「ラビの笑顔のような美味しさだった。ハッピーバレンタイン、ラビ。愛しているよ」
「うん! 僕もテオだいすきー」
仲良しの先輩後輩を見て、レオンとクラウスの二人は、
ほぼ似たような顔になっていた。
fin
「クラウス、クラウス! ちょっと来ておくれ!」
「なんだ一体…おいっ」
シュヌーシア寮の放課後。
テオは自室で予習中だったクラウスの手を引っ張っていった。
クラウスが連れて行かれたのはサロン。
他にもテオを慕う後輩達が何人か集まっていた。
最近入った新入りも何故か居る。寮が違う筈なのだが。
生徒達が囲むテーブルには、巨大なウサギ型のチョコレート。
辺りには濃厚なカカオの香りが充満している。
甘いものが苦手な生徒代表は、もう具合が悪くなるようだった。
笑顔のテオは自信満々に紹介する。
「じゃーん! みんなでチョコレートを作ってみました!」
「チョコレートなのは解るが、何故こんなにも、でかいウサギにする必要が?」
「シルヴァンがオリエンタルのバレンタインを教えてくれたのだよ。
愛する人へウサギ型チョコレートを送るものなんだって。
それで、私とみんなで心を込めて、
愛するシュヌーシアのみんなに作った、というわけなのだよ」
だから新入りがそこに座っているのかと生徒代表は思う。
しかし、入ったばかりにしては馴染み過ぎだ。
生徒代表の渋い顔をよそに、テオのウキウキは止まらない。
「もちろん、みんなへの愛はチョコでは表現しきれないほど大きいのだけど、
一分の一サイズで作ると、みんなが虫歯になってしまうかもしれないからね」
「見ているだけで歯が痛くなりそうだがな」
「大丈夫だよ、クラウス。大きいけれど、それほど甘くはないんだ。
クラウスも食べられるように、少しビターなオトナの味で作ったんだ。
中等部のみんなはココアと一緒に食べると良いかな。
貴方に最初に食べて貰おうと思って、みんなも待っていてくれているんだよ?
やはり、生徒代表だし、シュヌーシアのお父さんだし、私のクラウスだから」
「…最後の方が、納得いかないが」
「そう? 私はそろそろ納得して欲しいよ?」
甘い笑顔を前に、クラウスは肩を落とす。
頭が痛くなってきたのは甘いカカオのせいだけだろうか。
「大体、チョコを食べるのは、俺が最初ではないだろう?」
「えっ?」
「お前の唇にチョコが付いている。ったく子供か、お前は。早く拭け」
テオは人差し指で唇をなぞる。指に少しチョコが付いた。
さっき味見をした時に付いたようだ。
ぺろと人差し指を舐めると、スイートな考えが浮かんだ。
「クラウス、それは私の唇に付いたチョコの方が食べたいという意味?」
「俺が『そうだ』とでも言うと思うのか」
「言えないよね、みんなの前だもの」
中等部一年が、ハイハイ、と手を叩く。
「おノロケはそのくらいにしてさ、早くチョコ食おうぜ?
じゃないと、熱くってチョコが溶けちゃうし?」
生意気な後輩にからかわれ、生徒代表は喧嘩を買った。
「レオン。今のどこが惚気なんだ」
「全体的にー。なあ、テオー。俺、おなかすいたー。もう食べてもイイだろ?」
「そうだね。みんなで食べようか」
それを合図に皆がチョコの端をポキポキ折って食べ始める。
お持ち帰り用の小箱に折ったチョコを入れる者も居た。
パキン、ポキンと小気味の良い音が響く。
テオもウサギの耳を少し折って箱に乗せ、クラウスに差し出した。
「はい、クラウス。ハッピーバレンタイン。愛しているよ」
至って自然に差し出された甘いもの。
クラウスが受け取れないでいると、テオは笑顔で首を傾げた。
「もしかして、口移しが良かった? 此処ではダメではない?」
「普通に食べる」
奪うように取って、チョコを口に入れた。
二人の遣り取りを見ていた生徒が、同じようにウサギチョコの耳を折った。
テオによく懐いているラビットだ。まだ小学生のような身体を持つ。
チョコを入れた箱を手にして一番の友達の元に戻ってくる。
「レオン、レオン」
「んー?」
「あの、これからも、一緒に宿題したり、遊んだりしてくれる?」
「おうよ! あったりまえじゃん!」
「ありがと! はい、ハッピーバレンタイン」
あーん、と開いた口にチョコを入れる。
ほのぼのと笑い合う中等部一年生の様子を見て、テオは微笑ましく見守っていた。
「若い子は素直で良いねえ。クラウスもあの子達を見習っては?」
「断る」
ラビットが駆け寄ってきて、テオの前にチョコの箱を差し出した。
「テオ! いつもありがと! ハッピーバレンタイン!」
「ああ、ラビ…なんて愛しい子なのだろう。ありがとう、頂くよ」
先輩は身を屈める。手を伸ばし、チョコを口に入れる。
後輩達と一緒に作ったチョコレートが甘く溶けていく。
堪え切れないと言わんばかりに後輩を抱き締めた。
「ラビの笑顔のような美味しさだった。ハッピーバレンタイン、ラビ。愛しているよ」
「うん! 僕もテオだいすきー」
仲良しの先輩後輩を見て、レオンとクラウスの二人は、
ほぼ似たような顔になっていた。
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