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■夢のテオシナリオ最終回。長い間ありがとうございました
■一か月後:ユウタ 続編
ギリシャ旅行から二か月。
テオの結婚式当日となった。ユウタの姉の元へメールが届いた。
メッセージは日本語だった。
――姉貴、元気? 俺、またギリシャに来てるよ。
テオの結婚式に俺も招待されたんだ。テレビで生中継やるんだって。
俺、カメラに映るかもしれないし、姉貴もテオの結婚式見ててくれよな。
P.S. 後でゆっくり見たいからビデオに録画しといて!――
弟からの無邪気なメール。
断るのも可笑しい気がして、姉は録画のセットをした。
同日夜。テオは教会の控え室に居た。
ギリシャの結婚式は、教会で行うのが一般的。
式が始まるのは夜。その後に夜通しのパーティがあるからだ。
白の燕尾服を身に付け、テオは花嫁が来るのを待っていた。
お待たせしました、という女性の世話係の声と共に、
着付け室から真っ白なウエディングドレスを纏った花嫁が現れた。
「これはこれは…純白の薔薇だね、美しいよ、フィリア嬢」
花婿から絶賛を受け、花嫁は俯いてしまう。
その表情を見て、花婿は言った。
「すまない、少し彼女と二人にしてくれるかい?」
畏まりました、と世話係達が下がる。
上質な控え室に二人きりになると、花婿は改めて花嫁を眺めた。
「美しい。やはり、これほど麗しい姿は独り占めにはできないね。
この式を世界に向けて発信することにして良かったよ。
フィリア嬢、少し顔を上げておくれ。とても美しいのに勿体無いよ」
やっと花婿と花嫁の目が合う。テオは落ち着いた声で話した。
「最後にもう一度伺うよ。後悔は、しないね?」
花嫁は目を合わせたまま、頷いた。
「はい」
「ありがとう。私もだ。ずっと迷っていたけれど、これが正しい答えなのだと思う。
それから、式が始まる前にひとつだけ、私と約束して貰えるかな?」
「何でしょう?」
「この先、困ったことがあれば、いつでも相談しておくれ? 必ず力になるよ」
「ありがとうございます、メネシス様」
「これから式を挙げるというのに、まだメネシスと呼んでくれるのかい?
私のことはテオで良いのだよ? テオと聞かせておくれ?」
「…テオ、様」
「嬉しい。その鈴が鳴るような美声で呼んで頂けて。しかし、不思議なものだね。
正直に申し上げると、婚約指輪を貴女に渡した時は不安ばかりだった。
けれど今では、貴女と婚約したこと、とても幸運だったと思っている。
フィリア嬢で良かった。心から感謝しているよ。ありがとう」
「私もです、テオ様。本当に、ありがとうございます」
花嫁の青い瞳から雫が零れ落ちる。
「おやおや。すまない。私の唇は余計なことばかり言ってしまうようだね」
花婿は自分の胸にあるポケットチーフを取る。
「涙にはまだ早いよ、フィリア嬢」
綺麗に折り畳まれていた布で、静かに花嫁の涙を抑える。
「涙で輝くサファイアもまた美しいけれどね」
「テオ様…」
お時間です、という声がして二人は顔を見合わせる。
花嫁は緊張した面持ちになった。
テオの右手は自然と上がり、彼女の頬を支えた。
「大丈夫だよ。今日は最高の結婚式になる。
気楽に楽しんでおくれ。こんな式は二度と上げられないよ?」
海運王の次期当主は楽しそうに笑い、花嫁に手を差し出した。
「さあ、参りましょう。お手をどうぞ、フィリア姫」
ユウタの姉はチューリップのネックレスを眺めていた。
もう式は始まっている時刻だが、まだ画面を付けていなかった。
あまり見たくはなかったが、テオのことが気になる。
リアルタイムで見ていないと、ユウタに何か言われるかもしれない。
テオの花婿姿を見守ることにした。
インターネットを介して、PC画面に映った人。
真っ白な燕尾服を着ているのは紛れもなく、テオだった。
服のデザインが聖アルフォンソ学院の制服によく似ている。
彼の隣には花嫁。金髪の美しい少女だった。
二人は荘厳なパイプオルガンの前で誓いの儀式を行っていた。
「健やかなるときも、病めるときも、
喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも」
初老の牧師が厳かに、誓いの言葉を唱えている。
「これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、
その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
テオは令嬢を見つめる。確かめ合うように頷き、笑顔で客席を振り向いた。
すると二人は小さく、せーの、と声を合わせた。
「誓いません」
会場がどよめく中、花婿は堂々と一歩前に進み出た。
「私達は互いに別の想い人が居ると解りました。
関係者の皆様、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。
ですが、彼女を、そして私自身も幸せになる方法は、
この結婚式を取り止めることだけなのです。
私達は今日、この場を持って婚約を破棄します」
花嫁が花婿を見上げる。二人は微笑み合っていた。
その笑顔は何より、当人同士が満足している結果だということが伝わるものだった。
花婿はカメラに顔を向けた。
「ここからは私信です。世界でたった一人の、
愛おしい人へ向けたメッセージになることをお許し下さい」
テオは礼をして、視線を上げる。
世界中の視聴者が見守る中、優しい声で呼び掛けた。
「サンベリーナ、久し振りだね。元気だったかな?」
海の向こうに届くように丁寧に言葉を紡いでいく。
「姫に伝えたいことがあるんだ。聞いてくれるかい?」
大らかで揺らぎのない声。
会場中が息を飲むように静まり返った。
「私の元にツバメが飛んで来たのだよ。姫の弟だ。
彼は私を花の国へ、貴女へと導いてくれた。
我々の仲間達に掛け合って、今、この瞬間が実現したんだよ。
全く、姫の弟は素晴らしい男だね。彼のおかげで私はようやく気付いたんだ。
やはり私は、貴女に会いたいのだと。
それに姫もあれから何度も私の夢に会いに来てくれた。
私も姫の元へ何度も会いに行ったのだけど、覚えているかい?
今度はぜひギリシャに、私の家で会いたいな。
私の家族も姫に会いたがっている。心配することはないよ。
みんな、解ってくれたんだ。両親も姉上も…私の幸せを願ってくれた。
おいでよ、姫。そうしたら今度は本当に、裏庭で膝枕をしたり、
サンセットクルーズができる。海は肌で感じるのが一番だからね?」
テオは微笑み、胸に右手を置いた。
「ああ、姫のことがこんなにも愛おしいのに、
どうして私は、貴女にさよならを言ったのだろう。
私の唇は本当のことしか話せないのだと思ってきたけれど、
私はあの時、生涯で最も大きな嘘を吐いたのだね。
本当は離れたくなんてなかった。姫のことが愛しくて堪らなかったのに」
<海運王とホテル王が結婚式当日に婚約破棄>
このニュースは、翌日、ギリシャに止まらず、世界を駆け巡ることになる。
両家とも相当のバッシングを覚悟した上での行為だった。
しかし、花婿の堂々としたスピーチと、彼を見つめる花嫁の微笑みは、
両家の関係者や世間に、この奇行をむしろ歓迎させてしまう。
政略結婚という悪例によくぞ終止符を打ったと、両家の新しい船出を祝ったのだ。
翌日から多くの人々に祝福されることを、この時の二人はまだ知らない。
テオは人生で最高の笑顔を見せる。
「夢では何度も伝えているけれど、もう一度、心を込めてお伝えするよ、##NAME1##」
それは世界を照らす恒星のようにあたたかい笑顔だった。
海の向こうに居る人へ手を差し出す。
「愛してる。貴女が私の太陽だ」
END(Theo ending)
■一か月後:ユウタ 続編
ギリシャ旅行から二か月。
テオの結婚式当日となった。ユウタの姉の元へメールが届いた。
メッセージは日本語だった。
――姉貴、元気? 俺、またギリシャに来てるよ。
テオの結婚式に俺も招待されたんだ。テレビで生中継やるんだって。
俺、カメラに映るかもしれないし、姉貴もテオの結婚式見ててくれよな。
P.S. 後でゆっくり見たいからビデオに録画しといて!――
弟からの無邪気なメール。
断るのも可笑しい気がして、姉は録画のセットをした。
同日夜。テオは教会の控え室に居た。
ギリシャの結婚式は、教会で行うのが一般的。
式が始まるのは夜。その後に夜通しのパーティがあるからだ。
白の燕尾服を身に付け、テオは花嫁が来るのを待っていた。
お待たせしました、という女性の世話係の声と共に、
着付け室から真っ白なウエディングドレスを纏った花嫁が現れた。
「これはこれは…純白の薔薇だね、美しいよ、フィリア嬢」
花婿から絶賛を受け、花嫁は俯いてしまう。
その表情を見て、花婿は言った。
「すまない、少し彼女と二人にしてくれるかい?」
畏まりました、と世話係達が下がる。
上質な控え室に二人きりになると、花婿は改めて花嫁を眺めた。
「美しい。やはり、これほど麗しい姿は独り占めにはできないね。
この式を世界に向けて発信することにして良かったよ。
フィリア嬢、少し顔を上げておくれ。とても美しいのに勿体無いよ」
やっと花婿と花嫁の目が合う。テオは落ち着いた声で話した。
「最後にもう一度伺うよ。後悔は、しないね?」
花嫁は目を合わせたまま、頷いた。
「はい」
「ありがとう。私もだ。ずっと迷っていたけれど、これが正しい答えなのだと思う。
それから、式が始まる前にひとつだけ、私と約束して貰えるかな?」
「何でしょう?」
「この先、困ったことがあれば、いつでも相談しておくれ? 必ず力になるよ」
「ありがとうございます、メネシス様」
「これから式を挙げるというのに、まだメネシスと呼んでくれるのかい?
私のことはテオで良いのだよ? テオと聞かせておくれ?」
「…テオ、様」
「嬉しい。その鈴が鳴るような美声で呼んで頂けて。しかし、不思議なものだね。
正直に申し上げると、婚約指輪を貴女に渡した時は不安ばかりだった。
けれど今では、貴女と婚約したこと、とても幸運だったと思っている。
フィリア嬢で良かった。心から感謝しているよ。ありがとう」
「私もです、テオ様。本当に、ありがとうございます」
花嫁の青い瞳から雫が零れ落ちる。
「おやおや。すまない。私の唇は余計なことばかり言ってしまうようだね」
花婿は自分の胸にあるポケットチーフを取る。
「涙にはまだ早いよ、フィリア嬢」
綺麗に折り畳まれていた布で、静かに花嫁の涙を抑える。
「涙で輝くサファイアもまた美しいけれどね」
「テオ様…」
お時間です、という声がして二人は顔を見合わせる。
花嫁は緊張した面持ちになった。
テオの右手は自然と上がり、彼女の頬を支えた。
「大丈夫だよ。今日は最高の結婚式になる。
気楽に楽しんでおくれ。こんな式は二度と上げられないよ?」
海運王の次期当主は楽しそうに笑い、花嫁に手を差し出した。
「さあ、参りましょう。お手をどうぞ、フィリア姫」
ユウタの姉はチューリップのネックレスを眺めていた。
もう式は始まっている時刻だが、まだ画面を付けていなかった。
あまり見たくはなかったが、テオのことが気になる。
リアルタイムで見ていないと、ユウタに何か言われるかもしれない。
テオの花婿姿を見守ることにした。
インターネットを介して、PC画面に映った人。
真っ白な燕尾服を着ているのは紛れもなく、テオだった。
服のデザインが聖アルフォンソ学院の制服によく似ている。
彼の隣には花嫁。金髪の美しい少女だった。
二人は荘厳なパイプオルガンの前で誓いの儀式を行っていた。
「健やかなるときも、病めるときも、
喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも」
初老の牧師が厳かに、誓いの言葉を唱えている。
「これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、
その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
テオは令嬢を見つめる。確かめ合うように頷き、笑顔で客席を振り向いた。
すると二人は小さく、せーの、と声を合わせた。
「誓いません」
会場がどよめく中、花婿は堂々と一歩前に進み出た。
「私達は互いに別の想い人が居ると解りました。
関係者の皆様、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。
ですが、彼女を、そして私自身も幸せになる方法は、
この結婚式を取り止めることだけなのです。
私達は今日、この場を持って婚約を破棄します」
花嫁が花婿を見上げる。二人は微笑み合っていた。
その笑顔は何より、当人同士が満足している結果だということが伝わるものだった。
花婿はカメラに顔を向けた。
「ここからは私信です。世界でたった一人の、
愛おしい人へ向けたメッセージになることをお許し下さい」
テオは礼をして、視線を上げる。
世界中の視聴者が見守る中、優しい声で呼び掛けた。
「サンベリーナ、久し振りだね。元気だったかな?」
海の向こうに届くように丁寧に言葉を紡いでいく。
「姫に伝えたいことがあるんだ。聞いてくれるかい?」
大らかで揺らぎのない声。
会場中が息を飲むように静まり返った。
「私の元にツバメが飛んで来たのだよ。姫の弟だ。
彼は私を花の国へ、貴女へと導いてくれた。
我々の仲間達に掛け合って、今、この瞬間が実現したんだよ。
全く、姫の弟は素晴らしい男だね。彼のおかげで私はようやく気付いたんだ。
やはり私は、貴女に会いたいのだと。
それに姫もあれから何度も私の夢に会いに来てくれた。
私も姫の元へ何度も会いに行ったのだけど、覚えているかい?
今度はぜひギリシャに、私の家で会いたいな。
私の家族も姫に会いたがっている。心配することはないよ。
みんな、解ってくれたんだ。両親も姉上も…私の幸せを願ってくれた。
おいでよ、姫。そうしたら今度は本当に、裏庭で膝枕をしたり、
サンセットクルーズができる。海は肌で感じるのが一番だからね?」
テオは微笑み、胸に右手を置いた。
「ああ、姫のことがこんなにも愛おしいのに、
どうして私は、貴女にさよならを言ったのだろう。
私の唇は本当のことしか話せないのだと思ってきたけれど、
私はあの時、生涯で最も大きな嘘を吐いたのだね。
本当は離れたくなんてなかった。姫のことが愛しくて堪らなかったのに」
<海運王とホテル王が結婚式当日に婚約破棄>
このニュースは、翌日、ギリシャに止まらず、世界を駆け巡ることになる。
両家とも相当のバッシングを覚悟した上での行為だった。
しかし、花婿の堂々としたスピーチと、彼を見つめる花嫁の微笑みは、
両家の関係者や世間に、この奇行をむしろ歓迎させてしまう。
政略結婚という悪例によくぞ終止符を打ったと、両家の新しい船出を祝ったのだ。
翌日から多くの人々に祝福されることを、この時の二人はまだ知らない。
テオは人生で最高の笑顔を見せる。
「夢では何度も伝えているけれど、もう一度、心を込めてお伝えするよ、##NAME1##」
それは世界を照らす恒星のようにあたたかい笑顔だった。
海の向こうに居る人へ手を差し出す。
「愛してる。貴女が私の太陽だ」
END(Theo ending)
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