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■一か月後:メール 続編
「え? 姉貴が誰とも話さないなんて、珍しいじゃん?
いつもは煩いくらい、代われ代われ言うのにさ?」
何か言い返されるだろうとユウタは思っていたのだが、姉は俯いたままだった。
「姉貴? あっ、そう言えばさ、ギリシャのお土産、ちゃんと届いた?」
届いてるよ、と返す。
「じゃあ、届いたってメールぐらい送ってよ」
テオがギリシャ旅行の二日目に見つけてきたチューリップのネックレス。
それはユウタに預けられ、その他のお土産と一緒に姉の元へ送られた。
銀色の花は携帯越しに見るより、ずっと美しく、かなり高価な物のようだった。
この小さなチューリップを眺めていると、
たった三日間という短い間、呼ばれていた名前が鮮やかに甦ってくるのだ。
物珍しそうにテレビ電話を見つめる笑顔や、
あの呼び名を楽しげに叫ぶ声が思い出される。
最初に呼ばれた時は、恥ずかしさもあり、
可笑しな名前を付けられたものだと感じたが、
もう二度と、その名で呼ばれることはないのだと思うと、やけに懐かしく思えて。
机の上に置いた銀色の花を、呆然と眺めていることがあった。
花を首許に身に付ければ、ネックレスを合わせてみたいと言われた場面を思い出す。
大らかな声で「可愛いよ」と言う声が聞こえてくるような気がした。
彼の結婚式まであと一か月を残すのみだというのに。
「姉貴、あのさ」
弟の声で、また銀色のチューリップを見ていたと気付く。
なに? と返すと、弟は言った。
「もしかして、テオに会いたいの?」
姉はとっさに言葉を返せなかった。
弟は呆然と驚いたように自分を見つめていた。
「姉貴…」
姉は唐突に、じゃあね、と言って電話を切った。
弟の言葉が耳に残る。もう会ってはいけない相手なのに。
―― テオに会いたいの? ――
ユウタは切られた携帯電話を見つめていた。
テオと別れる前、ユウタは言った。姉貴のアドレス教えとこうか、と。
携帯を返す時のテオが、すごく辛そうだったから、つい言ってしまった。
でもテオは、今の姉貴みたいに首だけで、ううんってして。
「俺にウソ吐けると思ってんのかよ、姉貴」
弟は思わず苦笑してしまった。姉にではなく、たぶん、自分に。
自分でも変だと思うけど。でも。姉貴には幸せになって貰いたい。
「あーあ。俺ってやっぱ、シスコンなのかも」
携帯電話を握り締めた。
「え? 姉貴が誰とも話さないなんて、珍しいじゃん?
いつもは煩いくらい、代われ代われ言うのにさ?」
何か言い返されるだろうとユウタは思っていたのだが、姉は俯いたままだった。
「姉貴? あっ、そう言えばさ、ギリシャのお土産、ちゃんと届いた?」
届いてるよ、と返す。
「じゃあ、届いたってメールぐらい送ってよ」
テオがギリシャ旅行の二日目に見つけてきたチューリップのネックレス。
それはユウタに預けられ、その他のお土産と一緒に姉の元へ送られた。
銀色の花は携帯越しに見るより、ずっと美しく、かなり高価な物のようだった。
この小さなチューリップを眺めていると、
たった三日間という短い間、呼ばれていた名前が鮮やかに甦ってくるのだ。
物珍しそうにテレビ電話を見つめる笑顔や、
あの呼び名を楽しげに叫ぶ声が思い出される。
最初に呼ばれた時は、恥ずかしさもあり、
可笑しな名前を付けられたものだと感じたが、
もう二度と、その名で呼ばれることはないのだと思うと、やけに懐かしく思えて。
机の上に置いた銀色の花を、呆然と眺めていることがあった。
花を首許に身に付ければ、ネックレスを合わせてみたいと言われた場面を思い出す。
大らかな声で「可愛いよ」と言う声が聞こえてくるような気がした。
彼の結婚式まであと一か月を残すのみだというのに。
「姉貴、あのさ」
弟の声で、また銀色のチューリップを見ていたと気付く。
なに? と返すと、弟は言った。
「もしかして、テオに会いたいの?」
姉はとっさに言葉を返せなかった。
弟は呆然と驚いたように自分を見つめていた。
「姉貴…」
姉は唐突に、じゃあね、と言って電話を切った。
弟の言葉が耳に残る。もう会ってはいけない相手なのに。
―― テオに会いたいの? ――
ユウタは切られた携帯電話を見つめていた。
テオと別れる前、ユウタは言った。姉貴のアドレス教えとこうか、と。
携帯を返す時のテオが、すごく辛そうだったから、つい言ってしまった。
でもテオは、今の姉貴みたいに首だけで、ううんってして。
「俺にウソ吐けると思ってんのかよ、姉貴」
弟は思わず苦笑してしまった。姉にではなく、たぶん、自分に。
自分でも変だと思うけど。でも。姉貴には幸せになって貰いたい。
「あーあ。俺ってやっぱ、シスコンなのかも」
携帯電話を握り締めた。
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