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■シルヴァン×ハルヤ ジョシュア×アンリ
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「あれ。なんか甘い匂いがする」
ハルヤは寮の自室を出ると、廊下に漂う香りに気付いた。
なんとなく辿ってみると、キッチンに着いた。
立ち込める香りの中に、一人楽しそうな人が居る。
「何やってんの、シルヴァン」
彼は、カードに何か書いているところだった。
手を止めて、微笑みかける。
「おや。ハルヤ。見つかってしまいましたか」
「え。俺、見なかったことにした方が良い?」
「いいえ。どうぞ、入って下さい?」
シルヴァンの近くには、完成されたホールケーキがあった。
白いクリームに、色とりどりのフルーツが乗っている。
「このケーキ、シルヴァンが作ったの?」
「ええ」
「なんでまた?」
「今日が何の日が解りませんか?」
「今日って…何日だっけ?」
「2月14日ですよ。バレンタインなので、
みんなに、ケーキとカードを贈ろうかと思いましてね。
うちの寮では僕辺りがやらないと、みんなで楽しめない気がして。
…まあ、個人的に贈ってる人も、居るかもしれないんですけど」
「ああ、そっか。女の子からチョコレートを渡すのは、日本だけなんだっけ?」
「はい。他の国でも、チョコレートは贈り物のひとつですが、
他に花やカードだったりもするんです。
それに、贈るのは、女性からでも男性からでも構いません」
「それで、カード書いてたの?」
「ええ。カードに寄せるメッセージで代表的なのは、
Be My Valentine.(僕のバレンタインになって下さい)とかですかね。
『バレンタイン』は『大切な人』という意味で使われるんです」
「…あの、シルヴァンさ。それ、俺達に書いてんの?」
「もちろん♪ みんなに一枚ずつありますよ?」
「…マジで? なんか、すごいハズガシイんだけど…」
「あ。ハルヤだけに用意した方が良かったです?」
「…みんなで良い」
「すみません♪ そうだ、せっかくですから、クリームの味見でもしていきます?」
「いいの?」
「ええ。余ったクリームがそこにありますから、指で舐めて良いですよ?」
「ふうん。そんじゃ…」
ハルヤは、ボールの中に少し残っていたクリームを指に付ける。
口に運ぶと、爽やかな甘さが広がる。後味も軽い。
これなら早食いできるかも、とハルヤは思う。
「すごい…美味しい」
「良かった。僕、味見するの忘れてて、ちょっと心配だったんです。
よろしければ、お好きなだけどうぞ?」
「そう?」
ハルヤは、もう1回、指にクリームを付ける。
「…僕にも、味見させてくれません?」
ハルヤは手首を掴まれ、
目の前で、クリームを舐められる。
シルヴァンは、悪びれることなく微笑む。
「あ、美味しいですねっ♪」
「アンリ、開けてくれるかい?」
ジョシュアの声に、アンリは本を閉じる。
部屋のドアを開けると、
花の小さなブーケを差し出された。
「…何これ?」
「君に似合いそうだったから。ハッピーバレンタイン」
「…君は、こんなこと、よく気軽に出来るね」
「受け取って、くれるだろ?」
「…君がそれを花瓶に入れてくれるなら、飾ってあげても良いけど?」
「うん。花瓶も持ってきた。青くて綺麗なのが見つかったんだ」
「…あっそう。じゃ、好きにすれば?」
「うん、ありがとう」
早速、花束を解いて、花瓶に活け始める。
アンリは、彼の手付きを黙って見ていた。
小さな花瓶が窓際に飾られる。
殺風景な部屋の中で、そこだけが、あたたかい色合いになる。
明らかに、この部屋には不釣合だ。
そして彼も。
僕などの傍に、居てはいけない人間だ。
誰にも優しく接することしかできない彼と、
誰にも冷たく接することしかできない僕と。
並んで歩いているだけで、奇異な眼を向けられたものだ。
無理もない。互いの家が代々敵対関係にあるものだから、
何かと事が有利に進むように『僕が、彼に近付いている』
と、まことしやかに噂が流れたこともある。
本当に、敵同士になるかもしれないのに。
何故、こんな孤島まで来て、一番出会ってはいけない人に
「アンリ、ほら、なかなか良いだろ?」
窓から差し込む陽の光が、花瓶に当たって輝いている。
小さな花束が、眩しく見えた。
慣れない感情が少し疼いて、嫌気が差す。
「…花なんか、僕は好きになれない」
「どうして?」
「すぐに枯れるから。どんなに手を尽くしてもね」
「アンリ…」
「いつか失うことが解っているのに…花を飾る人の気が知れないよ」
「大丈夫だよ、アンリ」
「何が」
「怖がらないで…俺は、消えたりしないから」
fin
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「あれ。なんか甘い匂いがする」
ハルヤは寮の自室を出ると、廊下に漂う香りに気付いた。
なんとなく辿ってみると、キッチンに着いた。
立ち込める香りの中に、一人楽しそうな人が居る。
「何やってんの、シルヴァン」
彼は、カードに何か書いているところだった。
手を止めて、微笑みかける。
「おや。ハルヤ。見つかってしまいましたか」
「え。俺、見なかったことにした方が良い?」
「いいえ。どうぞ、入って下さい?」
シルヴァンの近くには、完成されたホールケーキがあった。
白いクリームに、色とりどりのフルーツが乗っている。
「このケーキ、シルヴァンが作ったの?」
「ええ」
「なんでまた?」
「今日が何の日が解りませんか?」
「今日って…何日だっけ?」
「2月14日ですよ。バレンタインなので、
みんなに、ケーキとカードを贈ろうかと思いましてね。
うちの寮では僕辺りがやらないと、みんなで楽しめない気がして。
…まあ、個人的に贈ってる人も、居るかもしれないんですけど」
「ああ、そっか。女の子からチョコレートを渡すのは、日本だけなんだっけ?」
「はい。他の国でも、チョコレートは贈り物のひとつですが、
他に花やカードだったりもするんです。
それに、贈るのは、女性からでも男性からでも構いません」
「それで、カード書いてたの?」
「ええ。カードに寄せるメッセージで代表的なのは、
Be My Valentine.(僕のバレンタインになって下さい)とかですかね。
『バレンタイン』は『大切な人』という意味で使われるんです」
「…あの、シルヴァンさ。それ、俺達に書いてんの?」
「もちろん♪ みんなに一枚ずつありますよ?」
「…マジで? なんか、すごいハズガシイんだけど…」
「あ。ハルヤだけに用意した方が良かったです?」
「…みんなで良い」
「すみません♪ そうだ、せっかくですから、クリームの味見でもしていきます?」
「いいの?」
「ええ。余ったクリームがそこにありますから、指で舐めて良いですよ?」
「ふうん。そんじゃ…」
ハルヤは、ボールの中に少し残っていたクリームを指に付ける。
口に運ぶと、爽やかな甘さが広がる。後味も軽い。
これなら早食いできるかも、とハルヤは思う。
「すごい…美味しい」
「良かった。僕、味見するの忘れてて、ちょっと心配だったんです。
よろしければ、お好きなだけどうぞ?」
「そう?」
ハルヤは、もう1回、指にクリームを付ける。
「…僕にも、味見させてくれません?」
ハルヤは手首を掴まれ、
目の前で、クリームを舐められる。
シルヴァンは、悪びれることなく微笑む。
「あ、美味しいですねっ♪」
「アンリ、開けてくれるかい?」
ジョシュアの声に、アンリは本を閉じる。
部屋のドアを開けると、
花の小さなブーケを差し出された。
「…何これ?」
「君に似合いそうだったから。ハッピーバレンタイン」
「…君は、こんなこと、よく気軽に出来るね」
「受け取って、くれるだろ?」
「…君がそれを花瓶に入れてくれるなら、飾ってあげても良いけど?」
「うん。花瓶も持ってきた。青くて綺麗なのが見つかったんだ」
「…あっそう。じゃ、好きにすれば?」
「うん、ありがとう」
早速、花束を解いて、花瓶に活け始める。
アンリは、彼の手付きを黙って見ていた。
小さな花瓶が窓際に飾られる。
殺風景な部屋の中で、そこだけが、あたたかい色合いになる。
明らかに、この部屋には不釣合だ。
そして彼も。
僕などの傍に、居てはいけない人間だ。
誰にも優しく接することしかできない彼と、
誰にも冷たく接することしかできない僕と。
並んで歩いているだけで、奇異な眼を向けられたものだ。
無理もない。互いの家が代々敵対関係にあるものだから、
何かと事が有利に進むように『僕が、彼に近付いている』
と、まことしやかに噂が流れたこともある。
本当に、敵同士になるかもしれないのに。
何故、こんな孤島まで来て、一番出会ってはいけない人に
「アンリ、ほら、なかなか良いだろ?」
窓から差し込む陽の光が、花瓶に当たって輝いている。
小さな花束が、眩しく見えた。
慣れない感情が少し疼いて、嫌気が差す。
「…花なんか、僕は好きになれない」
「どうして?」
「すぐに枯れるから。どんなに手を尽くしてもね」
「アンリ…」
「いつか失うことが解っているのに…花を飾る人の気が知れないよ」
「大丈夫だよ、アンリ」
「何が」
「怖がらないで…俺は、消えたりしないから」
fin
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