×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
■ジョシュア×アンリ
■ほのぼの。ジョシュア視点。
■第1回『BL王座決定戦』優勝記念小説です!
注:13話ネタバレ必至。アルフォンソ祭終了後のお話。
-------------------------------------
アルフォンソ祭が終わった。
全てのイベント、パーティーから解放され、ジョシュアは自分の部屋に居た。
もう深夜と言える時間帯だ。部屋の灯りは、とっくに消している。
身体もベッドに預けては居るが、意識が沈む気配は無い。
今日は色々なことが在り過ぎて、まだ、ふわふわと気持ちが浮付いている。
目を閉じても、今日の様々なシーンが甦る。
舞台。観客。ロレート。みんな...
ジョシュアは額に手の甲を乗せる。
....眠れない、かな。今夜は。
コンコン、とドアがノックされた。
部屋の灯りが消えているにも関わらず、このドアを叩く人物は限られている。
ジョシュアはベッドから降りる。
部屋の電気を付け、扉を開けた。
予想通りの顔に見上げられる。
「起きていたね?」
感情のこもらない声。
質問とも確認とも聞こえる言い回しで、アンリは言った。
彼の場合は、おそらく後者だろうな、ジョシュアは思う。
「うん。眠れそうにないな、と思っていた所だよ」
「そう」
来訪者は、それだけ言って、俺を見ている。
ジョシュアは、無言の要求を汲み取る。
「ねえ、アンリ。良かったら、少し話し相手になってくれないかな?」
来客は先と変わらない声で応える。
「君が、美味しい紅茶を淹れてくれるならね?」
「うん。了解」
君が俺の前を通り過ぎる。
俺は扉を閉めて、青い髪を追った。
戸棚から、白いカップと紅茶のリーフを手に取る。
特に意識しなくても、手は流れるように紅茶の用意をしてくれる。
リーフを量り、お湯の温度を確かめる。
このリーフの浸出時間は2分。
俺は、紅茶用の砂時計を、逆さまにする。
さらさらと、青い砂が落ちていく。
俺は、どちらかと珈琲の方が好きで、紅茶はあまり飲まない。
だけど、偶に街に出た時は、俺の足は、紅茶の専門店へと向かい、
君が好きそうなリーフを探してる。
その店主には、すっかり顔を知られている。
きっと、俺のことを余程の紅茶好きと思っていることだろう。
紅茶に必要な品は、カフェ並み以上に揃っている。
でもこれらは、俺が使う為のものではない。
全て君のために、置いてあるものだ。
この部屋に、少しずつ君が増えていく。
君が、此処で紅茶を飲む度に、俺は紅茶のことを知っていく。
紅茶の淹れ方だって、もう君よりずっと上手くなってしまった。
君は「まるで、ティーソムリエのようだね」と言ってくれた。
だけど、この腕を自分の為に振るうことは殆どない。
俺が紅茶を飲みたくなるのは、決まって君が寮に居ない時だ。
最後の砂が落ちる。
紅茶を注ぐと、俺は温かい香りに包まれる。
茶葉の自然な甘みと、深みのある柑橘系の香り。
これは、君が好きな。
「…ベルガモット。アールグレイだね」
冷たい声が、静かに香りの名前を言い当てる。
「さすが、アンリ」
「そのくらい解るよ。好きだからね」
アンリの言葉が、耳に残る。
好きだから、解る。
解っていく程、好きになる。
確かにそうだな、とジョシュアは思う。
俺も、紅茶を知って、好きになった。
でも、今もこんなに好きなのに、これ以上好きになるのかな。
淹れ立ての紅茶をアンリに渡す。
「どうぞ」
「ありがとう」
アンリは一口飲んで、テーブルに置く。
良かった、とジョシュアは思う。
彼が文句を言わない時は、美味しい、という意味だ。
「今日はお疲れさま、アンリ」
「随分と軽い挨拶だね」
声の温度が下がった。
表情を伺うと、先までと違う。
「今日、自分が何をしたか解っているの?
軽率な行動だったと反省もしていないの?」
「君を庇ったこと、怒っているのかい、アンリ?」
「当たり前だよ。君は、自分が誰だか知らないの?
君はね、僕にとって、最も都合の悪い、嫌な人間なんだよ」
「アンリ...」
「この学院の生徒代表で、ロレート国の王位継承権第1位。
しかも、サン・ジェルマン家と敵対するグラント家の人間。
君のような人間に死なれたら、僕が批難の的になるのは明白だ。
君の暗殺を計画したとか、僕が呪い殺したとか、言われるに決まってる。
こんなに夢見の悪い話がある? 少しは僕の迷惑を考えて」
「すまない、でも俺は」
「...もし、あのまま君が目を覚まさなかったら。
僕は、君の胸からナイフを抜き取って、自分に刺していたよ」
「えっ...」
「勘違いしないで。僕が迷惑だからだよ?
そんな批難に晒されて生きていくなんて嫌だからね」
君らしくない台詞だとジョシュアは思う。
いつもは他人の評価など気にしないくせに。
君の言葉が、何処までが冗談で、何処からが本音かも、
以前よりは解るようになってきたと思う。
君特有の、本音から遠回りする話し方。
そんな君を毒舌家と言う人も居る。
毒。
確かに、危険な毒だ。
君の声は、麻薬のような依存性がある。
君の毒舌が全て甘く感じられるのも、
身体中に毒が回っているからなのかな。
「何が可笑しいの、ジョシュア」
「いや。俺と一緒に死ぬなんて、まるでボルジアの台詞だね?」
「冗談言ってる場合じゃないよ。
今回はたまたま助かっただけだと解らない?
僕の命はね、これからも狙われ続ける運命にある」
「アンリ...」
「そんな僕に構っていたら、次こそ命を落とすよ?
だから、僕を守ろうだなんて思わないで...
もう二度と僕を庇わないと、今、此処で誓って」
「ごめん。誓えないよ、アンリ」
「どうして」
「俺も同じだから。
もし、アンリが死んでいたら、
君の胸からナイフを抜き取って、俺の胸に刺していた」
「...君は、そんなことをしては駄目だ」
「俺だって残されたくないんだよ、アンリが居ない世界にはね。
俺より先に死なせない。...俺を置いていかないで、アンリ」
アンリは溜め息を吐く。
「いい加減にして。その独善主義にはうんざりなんだよ。
....残された方は、どうすればいいの?」
「うん。ごめん...」
「君は、つくづく嫌な人間だね、ジョシュア」
青い髪が、こちらに向かって傾く。
とん、と俺の胸に当たった。
「...アンリ?」
「嫌いだよ。大嫌いだ」
君の言葉は冷たくて、こんなにも、甘い。
「うん。俺も」
綺麗な青い髪。
その冷たい色を包む。
「俺も、愛してるよ、アンリ」
「...そんなこと、僕は言ってない」
「俺には、そう聞こえたよ?」
「ちょっと、ジョシュア...」
「黙って...」
テーブルの上で、アンリの紅茶が熱を失っていく。
忘れられたカップが、ちらと目に入った。
ジョシュアは、アンリに気付かれないように微笑む。
心の中で、白いカップに小さく詫びる。
――ごめん。また残ってしまったね。
まあ、紅茶を飲ませてと言ったのは、彼なんだけれど。
アンリの為に淹れた紅茶は、
どうして、最後まで飲んで貰えないのかな?
fin
■ほのぼの。ジョシュア視点。
■第1回『BL王座決定戦』優勝記念小説です!
注:13話ネタバレ必至。アルフォンソ祭終了後のお話。
-------------------------------------
アルフォンソ祭が終わった。
全てのイベント、パーティーから解放され、ジョシュアは自分の部屋に居た。
もう深夜と言える時間帯だ。部屋の灯りは、とっくに消している。
身体もベッドに預けては居るが、意識が沈む気配は無い。
今日は色々なことが在り過ぎて、まだ、ふわふわと気持ちが浮付いている。
目を閉じても、今日の様々なシーンが甦る。
舞台。観客。ロレート。みんな...
ジョシュアは額に手の甲を乗せる。
....眠れない、かな。今夜は。
コンコン、とドアがノックされた。
部屋の灯りが消えているにも関わらず、このドアを叩く人物は限られている。
ジョシュアはベッドから降りる。
部屋の電気を付け、扉を開けた。
予想通りの顔に見上げられる。
「起きていたね?」
感情のこもらない声。
質問とも確認とも聞こえる言い回しで、アンリは言った。
彼の場合は、おそらく後者だろうな、ジョシュアは思う。
「うん。眠れそうにないな、と思っていた所だよ」
「そう」
来訪者は、それだけ言って、俺を見ている。
ジョシュアは、無言の要求を汲み取る。
「ねえ、アンリ。良かったら、少し話し相手になってくれないかな?」
来客は先と変わらない声で応える。
「君が、美味しい紅茶を淹れてくれるならね?」
「うん。了解」
君が俺の前を通り過ぎる。
俺は扉を閉めて、青い髪を追った。
戸棚から、白いカップと紅茶のリーフを手に取る。
特に意識しなくても、手は流れるように紅茶の用意をしてくれる。
リーフを量り、お湯の温度を確かめる。
このリーフの浸出時間は2分。
俺は、紅茶用の砂時計を、逆さまにする。
さらさらと、青い砂が落ちていく。
俺は、どちらかと珈琲の方が好きで、紅茶はあまり飲まない。
だけど、偶に街に出た時は、俺の足は、紅茶の専門店へと向かい、
君が好きそうなリーフを探してる。
その店主には、すっかり顔を知られている。
きっと、俺のことを余程の紅茶好きと思っていることだろう。
紅茶に必要な品は、カフェ並み以上に揃っている。
でもこれらは、俺が使う為のものではない。
全て君のために、置いてあるものだ。
この部屋に、少しずつ君が増えていく。
君が、此処で紅茶を飲む度に、俺は紅茶のことを知っていく。
紅茶の淹れ方だって、もう君よりずっと上手くなってしまった。
君は「まるで、ティーソムリエのようだね」と言ってくれた。
だけど、この腕を自分の為に振るうことは殆どない。
俺が紅茶を飲みたくなるのは、決まって君が寮に居ない時だ。
最後の砂が落ちる。
紅茶を注ぐと、俺は温かい香りに包まれる。
茶葉の自然な甘みと、深みのある柑橘系の香り。
これは、君が好きな。
「…ベルガモット。アールグレイだね」
冷たい声が、静かに香りの名前を言い当てる。
「さすが、アンリ」
「そのくらい解るよ。好きだからね」
アンリの言葉が、耳に残る。
好きだから、解る。
解っていく程、好きになる。
確かにそうだな、とジョシュアは思う。
俺も、紅茶を知って、好きになった。
でも、今もこんなに好きなのに、これ以上好きになるのかな。
淹れ立ての紅茶をアンリに渡す。
「どうぞ」
「ありがとう」
アンリは一口飲んで、テーブルに置く。
良かった、とジョシュアは思う。
彼が文句を言わない時は、美味しい、という意味だ。
「今日はお疲れさま、アンリ」
「随分と軽い挨拶だね」
声の温度が下がった。
表情を伺うと、先までと違う。
「今日、自分が何をしたか解っているの?
軽率な行動だったと反省もしていないの?」
「君を庇ったこと、怒っているのかい、アンリ?」
「当たり前だよ。君は、自分が誰だか知らないの?
君はね、僕にとって、最も都合の悪い、嫌な人間なんだよ」
「アンリ...」
「この学院の生徒代表で、ロレート国の王位継承権第1位。
しかも、サン・ジェルマン家と敵対するグラント家の人間。
君のような人間に死なれたら、僕が批難の的になるのは明白だ。
君の暗殺を計画したとか、僕が呪い殺したとか、言われるに決まってる。
こんなに夢見の悪い話がある? 少しは僕の迷惑を考えて」
「すまない、でも俺は」
「...もし、あのまま君が目を覚まさなかったら。
僕は、君の胸からナイフを抜き取って、自分に刺していたよ」
「えっ...」
「勘違いしないで。僕が迷惑だからだよ?
そんな批難に晒されて生きていくなんて嫌だからね」
君らしくない台詞だとジョシュアは思う。
いつもは他人の評価など気にしないくせに。
君の言葉が、何処までが冗談で、何処からが本音かも、
以前よりは解るようになってきたと思う。
君特有の、本音から遠回りする話し方。
そんな君を毒舌家と言う人も居る。
毒。
確かに、危険な毒だ。
君の声は、麻薬のような依存性がある。
君の毒舌が全て甘く感じられるのも、
身体中に毒が回っているからなのかな。
「何が可笑しいの、ジョシュア」
「いや。俺と一緒に死ぬなんて、まるでボルジアの台詞だね?」
「冗談言ってる場合じゃないよ。
今回はたまたま助かっただけだと解らない?
僕の命はね、これからも狙われ続ける運命にある」
「アンリ...」
「そんな僕に構っていたら、次こそ命を落とすよ?
だから、僕を守ろうだなんて思わないで...
もう二度と僕を庇わないと、今、此処で誓って」
「ごめん。誓えないよ、アンリ」
「どうして」
「俺も同じだから。
もし、アンリが死んでいたら、
君の胸からナイフを抜き取って、俺の胸に刺していた」
「...君は、そんなことをしては駄目だ」
「俺だって残されたくないんだよ、アンリが居ない世界にはね。
俺より先に死なせない。...俺を置いていかないで、アンリ」
アンリは溜め息を吐く。
「いい加減にして。その独善主義にはうんざりなんだよ。
....残された方は、どうすればいいの?」
「うん。ごめん...」
「君は、つくづく嫌な人間だね、ジョシュア」
青い髪が、こちらに向かって傾く。
とん、と俺の胸に当たった。
「...アンリ?」
「嫌いだよ。大嫌いだ」
君の言葉は冷たくて、こんなにも、甘い。
「うん。俺も」
綺麗な青い髪。
その冷たい色を包む。
「俺も、愛してるよ、アンリ」
「...そんなこと、僕は言ってない」
「俺には、そう聞こえたよ?」
「ちょっと、ジョシュア...」
「黙って...」
テーブルの上で、アンリの紅茶が熱を失っていく。
忘れられたカップが、ちらと目に入った。
ジョシュアは、アンリに気付かれないように微笑む。
心の中で、白いカップに小さく詫びる。
――ごめん。また残ってしまったね。
まあ、紅茶を飲ませてと言ったのは、彼なんだけれど。
アンリの為に淹れた紅茶は、
どうして、最後まで飲んで貰えないのかな?
fin
PR