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■ジョシュア×アンリ
アンリの目が覚めた時、いつもと違うかんじがした。
普段はなかなか起きられないのだが、今日は爽やかに目覚めた。
部屋はぼんやりと明るい。朝のようだ。
身体を起こすと、部屋の様子が可笑しい。
此処はジョシュアの部屋だ。
身に付けている寝間着も彼の物だった。
これを着せられた記憶はない。
その前に。何故、彼のベッドで起きたのだろう。
昨夜のことが思い出せない。
彼の姿もない。
ベッドから出る。顔を洗って、ちゃんと頭を起こそうとした。
鏡の前に立つと信じられないものが映った。
瞬いているのは、深紅の瞳。
思わず鏡に一歩近付くと、鏡の中にいるジョシュアも一歩近付いた。
「嘘…」
発されたのは彼の声。
有り得ない。だが、鏡は無情にもジョシュアの顔を映し続けている。
ただ、本人の顔とは、何かが違う気がした。
コンコン、という小さな音にびくりとする。
ノックの音。こんな時に誰か来た。
「あの、誰か、居るかい?」
控えめに訊ねているのは僕の声だった。
僕は此処に居るのに、ドアの向こうから僕の声がする。
ドアを開ける。
襟元で切り揃えた髪、伯爵の血を受け継ぐ瞳。寝巻姿の僕だった。
僕の姿をしている人は、こちらを見て立ち尽くす。
琥珀の瞳をぱちくりさせて呟いた。
「俺の部屋に、俺が…」
思わず僕は少し笑ってしまった。
「何、当たり前のこと言っているの? まあ、この状況じゃ仕方ないけれど」
その冷笑を見て、琥珀の瞳が大きく瞬く。
「アンリ? アンリなんだね?」
「ああ。とても残念なことにね」
「良かった、アンリ…」
包み込むように僕を抱き留めた。
「ちょっと、いきなり何…」
「朝起きたら、俺がアンリになっていたから、君はどこへ行ったんだろうって俺…」
僕の声が本気で僕を心配している。
「君に何かあったらどうしようって…本当に、無事で良かった」
僕の身体にきつく抱き締められる。
今の僅かな遣り取りで呆れるほど解った。
とっても贅沢で、高慢ちきで嫌な奴を、僕は一人しか知らない。
僕の身体を持っている彼が、紛れも無くジョシュア・グラントらしい。
「混乱しているのは解るけれど少しは場所を考えられない? ドアを開けたままだよ?」
「ああ、すまない」
抱擁が解かれ、僕の声が即座に謝罪した。
素直な自分の声を聞かされて、なんだか、ちょっとむかつく。
「とにかく、中に入って」
彼は机の前の椅子に、僕はベッドに腰掛けた。それが、この部屋での定位置だった。
自然と見つめ合ってしまう。
自分の身体を、こんなにしげしげと眺めるのは互いに初めてだろう。
「君、さっき『無事で良かった』って言ったけれど。この状況のどこが無事なの?」
「そう、だね。すまない」
また僕の声がすぐ謝る。彼はそっと席を立って僕の傍に来る。
琥珀の瞳がまっすぐこちらに向けられる。
彼がこちらの頬に触れる。その手は冷たかった。
「俺達、身体と魂が入れ替わってしまったんだね」
To be continued
アンリの目が覚めた時、いつもと違うかんじがした。
普段はなかなか起きられないのだが、今日は爽やかに目覚めた。
部屋はぼんやりと明るい。朝のようだ。
身体を起こすと、部屋の様子が可笑しい。
此処はジョシュアの部屋だ。
身に付けている寝間着も彼の物だった。
これを着せられた記憶はない。
その前に。何故、彼のベッドで起きたのだろう。
昨夜のことが思い出せない。
彼の姿もない。
ベッドから出る。顔を洗って、ちゃんと頭を起こそうとした。
鏡の前に立つと信じられないものが映った。
瞬いているのは、深紅の瞳。
思わず鏡に一歩近付くと、鏡の中にいるジョシュアも一歩近付いた。
「嘘…」
発されたのは彼の声。
有り得ない。だが、鏡は無情にもジョシュアの顔を映し続けている。
ただ、本人の顔とは、何かが違う気がした。
コンコン、という小さな音にびくりとする。
ノックの音。こんな時に誰か来た。
「あの、誰か、居るかい?」
控えめに訊ねているのは僕の声だった。
僕は此処に居るのに、ドアの向こうから僕の声がする。
ドアを開ける。
襟元で切り揃えた髪、伯爵の血を受け継ぐ瞳。寝巻姿の僕だった。
僕の姿をしている人は、こちらを見て立ち尽くす。
琥珀の瞳をぱちくりさせて呟いた。
「俺の部屋に、俺が…」
思わず僕は少し笑ってしまった。
「何、当たり前のこと言っているの? まあ、この状況じゃ仕方ないけれど」
その冷笑を見て、琥珀の瞳が大きく瞬く。
「アンリ? アンリなんだね?」
「ああ。とても残念なことにね」
「良かった、アンリ…」
包み込むように僕を抱き留めた。
「ちょっと、いきなり何…」
「朝起きたら、俺がアンリになっていたから、君はどこへ行ったんだろうって俺…」
僕の声が本気で僕を心配している。
「君に何かあったらどうしようって…本当に、無事で良かった」
僕の身体にきつく抱き締められる。
今の僅かな遣り取りで呆れるほど解った。
とっても贅沢で、高慢ちきで嫌な奴を、僕は一人しか知らない。
僕の身体を持っている彼が、紛れも無くジョシュア・グラントらしい。
「混乱しているのは解るけれど少しは場所を考えられない? ドアを開けたままだよ?」
「ああ、すまない」
抱擁が解かれ、僕の声が即座に謝罪した。
素直な自分の声を聞かされて、なんだか、ちょっとむかつく。
「とにかく、中に入って」
彼は机の前の椅子に、僕はベッドに腰掛けた。それが、この部屋での定位置だった。
自然と見つめ合ってしまう。
自分の身体を、こんなにしげしげと眺めるのは互いに初めてだろう。
「君、さっき『無事で良かった』って言ったけれど。この状況のどこが無事なの?」
「そう、だね。すまない」
また僕の声がすぐ謝る。彼はそっと席を立って僕の傍に来る。
琥珀の瞳がまっすぐこちらに向けられる。
彼がこちらの頬に触れる。その手は冷たかった。
「俺達、身体と魂が入れ替わってしまったんだね」
To be continued
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