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■ジョシュア×アンリ
夜。ハルヤの部屋。
ハルヤはベッドの中で、ここ数日を振り返っていた。
同じ寮のジョシュアとアンリが入れ替わってしまった。
中身が本人じゃなかったと聞いて納得できる部分もあった。
なんだかジョシュアはそっけないし、アンリは変に優しいし。
シュヌーシアの生徒には、
「ジョシュア、機嫌悪いみたいだけど、なんかあったのか?」って聞かれたり、
あと「アンリにおはようって言われた」って喜んでた人も居たし。
だけど、ひとつ気になることがある。
二人が入れ替わったのは三日前だと言っていた。
ということは、バーベキューパーティの日、
自分と話してたジョシュアは、アンリだったことになる。
あの時、話題にしていたのはアンリのことだ。
アンリの歌を黙って聞いていたことを、本人の前で言ってしまった。
「怒った、かなあ…」
アンリだと知らなかったから言えたこともある。
テオに絡まれてる時とかにアンリが助けてくれて嬉しかったということ。
それに、俺はアンリに嫌われてるんじゃないかって言った時。
彼は言ったのだ。
――アンリは別に、君のこと嫌いじゃないと思うけど――
あの時の言葉は本音だったのだろうか。
それとも、ジョシュアのフリをしていただけだったのだろうか。
どっちなのか、本人に聞いてみる勇気は、ない。
「ジョシュア、少しお時間頂けますか?」
ジョシュアの部屋にシルヴァンが訪れた。
「なんだい、シルヴァン?」
「バーベキューの夜、貴方が言ったことについて、なんですけどね?」
ジョシュアは臆病な人だと思う、周囲の目ばかりを気にしている、
など今考えると自虐的な言葉を並べてしまった。
「あ、あれは…アンリのマネをしなくちゃいけないと思って…」
シルヴァンは優しい顔をして笑った。
「貴方は本当に嘘を吐くことに向いていませんね?
もう言っちゃったことなんですから、イイじゃないですか、隠さなくても」
ジョシュアは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「…ごめん。あんなこと聞かせてしまって。気にしないでいいから」
シルヴァンの顔から笑みが消える。
「いいえ。気にしますよ、とっても。
貴方から聞いた、初めての弱音なんですから」
「すまない。もう、言わないから。この話は…」
「おしまいになんて、しないで下さい」
シルヴァンはジョシュアを後ろからそっと抱き締めた。
「これからはもっと聞かせてくれませんか?
苦しいことも、悲しいことも、僕に分けて下さい」
かつて天文台だったと思われる遺跡。
日中は生徒達が散歩に来ることもあるが、深夜ともなれば風や虫が集うばかり。
時折、吹く風が春の艶やかな草原を撫でる。
白いストーンサークルは月光に照らされていた。
夜行性の虫達が、ひそひそと夜中のお喋りを楽しんでいた。
ふっとお喋りが止む。人間の足音を聞き取ったのだ。
優雅な靴音が、キャンパスから天文台に向かってゆっくり進んでいる。
草原に棲む者達は、石や草の陰に隠れて、彼の様子を伺っていた。
人間は聖アルフォンソ学院の制服を着ていない。
ダークブラウンのスーツに、同じ色で合わせたクロスタイ。
40歳前後に見える紳士だった。
天文台まで辿り着くと、ある石の前で立ち止まった。
石を見上げて言った。
「探したよ。此処に居たんだね。こんばんは」
――ねえ。もしかして話し掛けられているのって僕達かな?――
――人間に俺達が見えるわけねーじゃん。放っとこうぜ――
「見えるよ? 可愛い天使が二人、この石の上に腰掛けている」
――えっ、可愛いなんて…――
――照れるとこじゃねーだろっ――
「今宵は、ちょっとお願いがあって会いに来たんだ。
もし君達が、王の子と錬金術師の子に術を掛けたのなら、
元に戻してあげてくれないかね? ああ、怒るつもりはないよ?
あの子達の光に惹かれてしまったんだろう? 最近、光が増しているから」
――そ、そんなの知らないぜ?――
「おや。違ったかね? 『転換』なんて高度な術を使えるのは、
古くから学院を守ってくれている君達だけだと思ったのだがね」
――ま、俺達しかできないだろうなっ!――
――ちょっとっ――
――あっ、ヤベッ――
紳士は遺跡の上を見つめたまま、くすくすと笑う。
「相変わらず可愛らしいね、君達は」
――お、おじさん、何者なんだよっ!?――
「おじさんはこの学校の先生だよ、今はね」
――先生? でも普通の人間に俺達の姿が見える筈は――
――待って。あの人、昔会ったことない?――
「思い出してくれたかい? 忘れてしまうのも無理はないね。
アルフォンソが居た頃の話だから」
――あ、もしかして――
紳士は人差し指を唇に当てる。
「生徒達には内緒にしてくれるかね?」
To be continued(NEXT:Final)
夜。ハルヤの部屋。
ハルヤはベッドの中で、ここ数日を振り返っていた。
同じ寮のジョシュアとアンリが入れ替わってしまった。
中身が本人じゃなかったと聞いて納得できる部分もあった。
なんだかジョシュアはそっけないし、アンリは変に優しいし。
シュヌーシアの生徒には、
「ジョシュア、機嫌悪いみたいだけど、なんかあったのか?」って聞かれたり、
あと「アンリにおはようって言われた」って喜んでた人も居たし。
だけど、ひとつ気になることがある。
二人が入れ替わったのは三日前だと言っていた。
ということは、バーベキューパーティの日、
自分と話してたジョシュアは、アンリだったことになる。
あの時、話題にしていたのはアンリのことだ。
アンリの歌を黙って聞いていたことを、本人の前で言ってしまった。
「怒った、かなあ…」
アンリだと知らなかったから言えたこともある。
テオに絡まれてる時とかにアンリが助けてくれて嬉しかったということ。
それに、俺はアンリに嫌われてるんじゃないかって言った時。
彼は言ったのだ。
――アンリは別に、君のこと嫌いじゃないと思うけど――
あの時の言葉は本音だったのだろうか。
それとも、ジョシュアのフリをしていただけだったのだろうか。
どっちなのか、本人に聞いてみる勇気は、ない。
「ジョシュア、少しお時間頂けますか?」
ジョシュアの部屋にシルヴァンが訪れた。
「なんだい、シルヴァン?」
「バーベキューの夜、貴方が言ったことについて、なんですけどね?」
ジョシュアは臆病な人だと思う、周囲の目ばかりを気にしている、
など今考えると自虐的な言葉を並べてしまった。
「あ、あれは…アンリのマネをしなくちゃいけないと思って…」
シルヴァンは優しい顔をして笑った。
「貴方は本当に嘘を吐くことに向いていませんね?
もう言っちゃったことなんですから、イイじゃないですか、隠さなくても」
ジョシュアは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「…ごめん。あんなこと聞かせてしまって。気にしないでいいから」
シルヴァンの顔から笑みが消える。
「いいえ。気にしますよ、とっても。
貴方から聞いた、初めての弱音なんですから」
「すまない。もう、言わないから。この話は…」
「おしまいになんて、しないで下さい」
シルヴァンはジョシュアを後ろからそっと抱き締めた。
「これからはもっと聞かせてくれませんか?
苦しいことも、悲しいことも、僕に分けて下さい」
かつて天文台だったと思われる遺跡。
日中は生徒達が散歩に来ることもあるが、深夜ともなれば風や虫が集うばかり。
時折、吹く風が春の艶やかな草原を撫でる。
白いストーンサークルは月光に照らされていた。
夜行性の虫達が、ひそひそと夜中のお喋りを楽しんでいた。
ふっとお喋りが止む。人間の足音を聞き取ったのだ。
優雅な靴音が、キャンパスから天文台に向かってゆっくり進んでいる。
草原に棲む者達は、石や草の陰に隠れて、彼の様子を伺っていた。
人間は聖アルフォンソ学院の制服を着ていない。
ダークブラウンのスーツに、同じ色で合わせたクロスタイ。
40歳前後に見える紳士だった。
天文台まで辿り着くと、ある石の前で立ち止まった。
石を見上げて言った。
「探したよ。此処に居たんだね。こんばんは」
――ねえ。もしかして話し掛けられているのって僕達かな?――
――人間に俺達が見えるわけねーじゃん。放っとこうぜ――
「見えるよ? 可愛い天使が二人、この石の上に腰掛けている」
――えっ、可愛いなんて…――
――照れるとこじゃねーだろっ――
「今宵は、ちょっとお願いがあって会いに来たんだ。
もし君達が、王の子と錬金術師の子に術を掛けたのなら、
元に戻してあげてくれないかね? ああ、怒るつもりはないよ?
あの子達の光に惹かれてしまったんだろう? 最近、光が増しているから」
――そ、そんなの知らないぜ?――
「おや。違ったかね? 『転換』なんて高度な術を使えるのは、
古くから学院を守ってくれている君達だけだと思ったのだがね」
――ま、俺達しかできないだろうなっ!――
――ちょっとっ――
――あっ、ヤベッ――
紳士は遺跡の上を見つめたまま、くすくすと笑う。
「相変わらず可愛らしいね、君達は」
――お、おじさん、何者なんだよっ!?――
「おじさんはこの学校の先生だよ、今はね」
――先生? でも普通の人間に俺達の姿が見える筈は――
――待って。あの人、昔会ったことない?――
「思い出してくれたかい? 忘れてしまうのも無理はないね。
アルフォンソが居た頃の話だから」
――あ、もしかして――
紳士は人差し指を唇に当てる。
「生徒達には内緒にしてくれるかね?」
To be continued(NEXT:Final)
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