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■オーギュスト×アンリ
アンリは今年も夏期休暇は取らず、学院に残っていた。
他の寮生は島の外に出て行った。夏の夜は静かで良い。
僕はベッドに入っていた。
枕元には、持つのに疲れたハードカバー。
悪徳錬金術師エドワード・ケリーの伝記。
薄暗い中、時計を眺める。
短針は1に届きそうなのに、眠たくもならない。
――そう言えば、暫く君が来ていない。
ピクと自分の指が疼く。
衝動を抑え付けるように、指を髪に通した。
「失礼するよ」
ドアの前に君が居た。
濃紺の瞳。
教壇に立っている時とは違う。
「待たせてしまったみたいだね。ごめん」
「何のこと」
「アンリ、自分が今どんな顔をしているか解っているのかね?」
カチャリと鍵の音がした。
ベッドに腰掛けた教授は、ちらと視線を落とした。
「ケリーの本を読んでいたのかい? 就寝前まで勉強熱心だね」
「別に。眠たくなるかと思っただけ」
「安眠には向かないと思うがね、彼の生涯は」
少し皺の寄った手。
僕の左頬にそっと添えられる。
「眠れないのなら、私が夜伽するよ」
薄い唇が、僕の唇に触れる。
この先、何をされるのかは知っていた。
首許からボタンを外され、鎖骨に口付けを落とされる。
君の髪が首筋をチクチクなぞる。
理性があるうちに、僕は彼の肩に手を置いた。
「止めて」
彼は顔を上げた。
「ん?」
「今日は、帰って」
頬からあたたかさが消える。
彼はあっさり頬に添えていた手を離した。
「アンリがそう言うなら、今宵は身を引こう」
いつもと同じ、落ち着いた声。
僕の髪を静かにひと撫でして、ベッドから降りた。
僕は彼に背を向けて、何の模様もない壁を見ていた。
「人に好意を寄せるのは、怖いかね? アンリ」
毛布を引き寄せる。
「そんなこと言ってない」
「そうだね。すまない」
足音が離れていく。
「おやすみ、アンリ」
ドアが閉まる音。
身体が熱い。
fin
アンリは今年も夏期休暇は取らず、学院に残っていた。
他の寮生は島の外に出て行った。夏の夜は静かで良い。
僕はベッドに入っていた。
枕元には、持つのに疲れたハードカバー。
悪徳錬金術師エドワード・ケリーの伝記。
薄暗い中、時計を眺める。
短針は1に届きそうなのに、眠たくもならない。
――そう言えば、暫く君が来ていない。
ピクと自分の指が疼く。
衝動を抑え付けるように、指を髪に通した。
「失礼するよ」
ドアの前に君が居た。
濃紺の瞳。
教壇に立っている時とは違う。
「待たせてしまったみたいだね。ごめん」
「何のこと」
「アンリ、自分が今どんな顔をしているか解っているのかね?」
カチャリと鍵の音がした。
ベッドに腰掛けた教授は、ちらと視線を落とした。
「ケリーの本を読んでいたのかい? 就寝前まで勉強熱心だね」
「別に。眠たくなるかと思っただけ」
「安眠には向かないと思うがね、彼の生涯は」
少し皺の寄った手。
僕の左頬にそっと添えられる。
「眠れないのなら、私が夜伽するよ」
薄い唇が、僕の唇に触れる。
この先、何をされるのかは知っていた。
首許からボタンを外され、鎖骨に口付けを落とされる。
君の髪が首筋をチクチクなぞる。
理性があるうちに、僕は彼の肩に手を置いた。
「止めて」
彼は顔を上げた。
「ん?」
「今日は、帰って」
頬からあたたかさが消える。
彼はあっさり頬に添えていた手を離した。
「アンリがそう言うなら、今宵は身を引こう」
いつもと同じ、落ち着いた声。
僕の髪を静かにひと撫でして、ベッドから降りた。
僕は彼に背を向けて、何の模様もない壁を見ていた。
「人に好意を寄せるのは、怖いかね? アンリ」
毛布を引き寄せる。
「そんなこと言ってない」
「そうだね。すまない」
足音が離れていく。
「おやすみ、アンリ」
ドアが閉まる音。
身体が熱い。
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