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Marginal Prince Short Story
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■ロレートシナリオ
ロレート公国 建国記念式典。
王位継承法改正の発表と同時に、次期国王が指名された。
「未熟者ですが、出来る限り、尽くしていきたいと思います。
ご静聴、ありがとうございました」
観衆から大きなあたたかい拍手が巻き起こる。
記念式典の壇上で立派に挨拶を終えられた御方。
本日、ロレート公国建国記念日を持って、
ジョシュア・グラント様は、ジョシュア王子殿下となられた。
舞台袖に控えていた私も静かに拍手を送った。
「謙虚で真面目な挨拶だったな。俺では真似もできん」
笑みを浮かべながらそう囁いたのは、当代のロレート国王陛下カーディス1世。
側近を務める私、ラルヴィス・レイナ唯一の主である。
「あの文章、お前が大分直したのか?」
「いいえ。殿下には添削を頼まれましたが、
修正箇所など、私には一文字も見付けられませんでした」
「ほう。流石は聖アルフォンソ学院の生徒代表と言ったところか。
兄貴も聖アルフォンソに入学していれば、選ばれたのかもしれないな」
語尾に後悔を感じた。
「陛下は生徒代表ではなかったのですよね?」
「自主休講の常習犯だった悪ガキが選ばれると思うか?」
「いいえ。思いません」
「少しは主の肩を持てないのか?」
「はい。主に嘘は吐けません」
主は微笑した。
「口の悪い臣下を持ったものだ」
「陛下、そろそろご挨拶のお時間です」
口の悪くない他の臣下が告げる。私は軽く頭を下げ、主を送る。
「いってらっしゃいませ、陛下。殿下のご挨拶に引けを取らぬよう」
「国政への誠実さでは敵わんからな、笑いの一つでも取って来るか」
離れていく靴音を聞きながら、側近は顔を上げる。
「ご冗談を」
横断幕の傍。舞台から戻られた殿下の肩に、陛下が手を置いた。
「良かったぞ、ジョシュア」
殿下は少し恥ずかしそうに俯かれた。
「…ありがとうございます」
陛下はもう一度、トンと肩を叩いて、壇上に向かう。
若き次期国王は現国王の背を見つめていた。私はそっとお傍に行き、お声を掛けた。
「ご立派でしたよ、殿下」
世辞ではなかったのだが、皇太子は首を横に振った。陛下とは色の違う髪が揺れる。
「…とても緊張しました。まだドキドキしています」
「そのようには見えませんでしたよ。
拍手も、陛下がご挨拶される時よりずっと大きなものでした」
「そう、でしたか? あ、カーディスの挨拶が始まりますね。
ちゃんと聞いておかないと」
眼差しを壇上に向ける。本当に謙虚で真面目な御方だ。

翌日。各メデイアは、記念式典の様子を一斉に報じた。
その多くがジョシュア王子の写真を一面に取り上げていた。
ご両親を幼い頃に既に失っている殿下への同情もあるのか、
痛烈な批判は殆どなく、歓迎、期待、といった文字が躍った。
街頭インタビューでは、「カッコイイ」「可愛い」など好意的な意見も多いらしく、
雑誌の中には何ページも『王子様特集』を組み、アイドル扱いしているものもあるようだ。
殿下に王位継承権を復帰させる為、法改正を強行した国への評価も高まった。
「王室にも殿下への取材依頼が殺到しています。
最も多いリクエストは『王子様の乗馬姿を撮らせて欲しい』というものですね」
陛下は雑誌の『王子様特集』をパラパラ捲りながら、私の報告を聞いている。
この執務室の机上に新聞や雑誌が乗っているのも、珍しいことだ。
「成程。王子には馬か。では白い馬でも用意するか」
「取材を受けても良いのですか?」
「俺に聞くな。ジョシュアのことだ。本人に決めさせろ」
「畏まりました。お伝え致します」
陛下が雑誌を机上に戻す。
「メディアの願いを叶えることは、俺としては勧められんが、
あいつなら、快く受けてしまうだろうな。
それにしても、予想以上の人気だな」
「ええ。エドワード様のご子息である以上に、
国民にも殿下のお人柄が伝わったのでしょう」
「加えて、まだ若く、あの顔で、姫も決まっていないと来てる。
街を少しでも歩いたら、サイン責めに合うかもしれん。
ファンの年齢層も広そうだ。警備には気を付けろよ」
「陛下のファンが、殿下に奪われてしまうかもしれませんね?」
この国の民は王を慕っている。特にご婦人方からは人気があった。
「嬉しそうだな、ラルヴィス」
「ええ。嬉しいですよ」
「なんだ、お前も王子様ファンか?」
「いいえ。貴方が選ぶ御方に間違いはなかったと敬服しているのです。
ジョシュア様を皇太子に指名されたのは陛下、全ては貴方のお力です」
「よくできた臣下だな。だが、選んだのは俺ではない。
あいつは王となるべく、生まれた者だ。最初から選ばれていた」
自嘲が含まれているように感じられた。
これほど立派に国を牽引されてきた御方なのに。
本来であれば自分は王位を継ぐべき者ではなかった、と思っておられる。
ジョシュア様が玉座に就くまでの繋ぎだと、ご自分の存在を軽んじて。
貴方も王となるべく生まれた御方です、とお伝えしたかった。
「陛下と同じですね?」
どんな輩に反駁されたとて、私の主君は貴方だけだ。
私の想いをご理解されているのか、いないのか。貴方は笑った。
「面白いジョークだな」


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