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■ロレートシナリオ
翌朝、アイヴィー様は「空港までお見送りする!」と言い張って、
陛下へのお土産まで持たせて下さった。『キングズフィンガー』というもので、
殿下もお好きなお菓子だそうだ。コーヒーや、コーヒーリキュールとよく合うらしい。
「王様もきっと知ってるお菓子だからさ、二人で食べてよ」
と笑顔で渡して下さったのだ。他意はなかったのだろう。
だが、本物の王に、王の指を贈るというのは、少々組み合わせが悪いような気がした。
「ね、ラルちゃん。今度はさ、一緒にメシ食べ行こーね。島のオイシイお店教えてあげる。
アルフォンソ名物とか、あんまり食べたことないでしょ?」
社交辞令なのだろうと思いながらも、「そうですね。いつか」と答えた。
ロレートに帰国後、私はすぐに陛下の元へ行った。
膝を着いて、頭を下げる。
「只今戻りました、陛下。帰国が遅れ、申し訳ありません」
「それは良いのだがな、ラルヴィス。顔を上げてみろ」
ご命令に逆らうことも出来ず、私はそっと顔を上げる。すかさず、顎を掴まれた。
「随分と眠そうな顔をしているな?」
「すみません」
「お前、何故、このようなところに傷がある?」
陛下の親指が、私の下唇のラインをなぞる。
下唇には凝固した血。唇が切れた痕があった。
「唇に傷を付けて返してくれるとはな」
「お見苦しい物をお見せして、申し訳ありません」
「誰に付けられた?」
「名は解りません」
陛下は首を傾げる。顎から手を離された。
「アイヴィーではないのか?」
「何を。あの方が私を殴る筈がありません」
「これは殴られて切れた傷なのか?」
「…どのような誤解をされているのか、解り兼ねますが」
私は司令官閣下には何の責任もないことをご説明申し上げた。
「そうか。しかし、俺の右腕ともあろう者が、ブザマなことだな」
「申し訳ありません」
「その見苦しい唇、消毒してやろうか?」
「…お優しいお心遣い痛み入ります。お気持ちだけで充分です」
陛下に殿下からのお願いをお伝えした。
「カーディスに会わせたい友人が居る」という話だ。
やはり陛下はご興味を示された。次に来る時にでも連れて来いとのこと。
早速、殿下にお電話でお伝えすると、殿下もお喜びだった。
日程は順調に決まった。殿下とご友人がいらっしゃる日が近付いて来ると、
邸の者達が何となくそわそわしている空気があった。
『あの殿下のお友達』『どんな方だろう』と期待が膨らんでいるようだった。
私も殿下のご学友に粗相のないようにしなくては。
→12
翌朝、アイヴィー様は「空港までお見送りする!」と言い張って、
陛下へのお土産まで持たせて下さった。『キングズフィンガー』というもので、
殿下もお好きなお菓子だそうだ。コーヒーや、コーヒーリキュールとよく合うらしい。
「王様もきっと知ってるお菓子だからさ、二人で食べてよ」
と笑顔で渡して下さったのだ。他意はなかったのだろう。
だが、本物の王に、王の指を贈るというのは、少々組み合わせが悪いような気がした。
「ね、ラルちゃん。今度はさ、一緒にメシ食べ行こーね。島のオイシイお店教えてあげる。
アルフォンソ名物とか、あんまり食べたことないでしょ?」
社交辞令なのだろうと思いながらも、「そうですね。いつか」と答えた。
ロレートに帰国後、私はすぐに陛下の元へ行った。
膝を着いて、頭を下げる。
「只今戻りました、陛下。帰国が遅れ、申し訳ありません」
「それは良いのだがな、ラルヴィス。顔を上げてみろ」
ご命令に逆らうことも出来ず、私はそっと顔を上げる。すかさず、顎を掴まれた。
「随分と眠そうな顔をしているな?」
「すみません」
「お前、何故、このようなところに傷がある?」
陛下の親指が、私の下唇のラインをなぞる。
下唇には凝固した血。唇が切れた痕があった。
「唇に傷を付けて返してくれるとはな」
「お見苦しい物をお見せして、申し訳ありません」
「誰に付けられた?」
「名は解りません」
陛下は首を傾げる。顎から手を離された。
「アイヴィーではないのか?」
「何を。あの方が私を殴る筈がありません」
「これは殴られて切れた傷なのか?」
「…どのような誤解をされているのか、解り兼ねますが」
私は司令官閣下には何の責任もないことをご説明申し上げた。
「そうか。しかし、俺の右腕ともあろう者が、ブザマなことだな」
「申し訳ありません」
「その見苦しい唇、消毒してやろうか?」
「…お優しいお心遣い痛み入ります。お気持ちだけで充分です」
陛下に殿下からのお願いをお伝えした。
「カーディスに会わせたい友人が居る」という話だ。
やはり陛下はご興味を示された。次に来る時にでも連れて来いとのこと。
早速、殿下にお電話でお伝えすると、殿下もお喜びだった。
日程は順調に決まった。殿下とご友人がいらっしゃる日が近付いて来ると、
邸の者達が何となくそわそわしている空気があった。
『あの殿下のお友達』『どんな方だろう』と期待が膨らんでいるようだった。
私も殿下のご学友に粗相のないようにしなくては。
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