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■ロレートシナリオ
***
聖アルフォンソ学院 正門前。
ロレートの公用車に、学院の生徒が二人乗る。
後部座席のドアを閉めた臣下は、無駄のない動作で運転席に入る。
見送り組のタクシードライバーは片手を挙げる。生徒の一人は微笑んで返した。
同じく見送り組の教授は、もう一人の生徒とアイコンタクトをとろうとしたが、
教え子は後頭部しか見せてくれなかった。
運転席の臣下は、窓越しに会釈して、学院を出発した。
正門前に残されたのは、大人二人と黄色いタクシー。
公用車が吐き出した灰色の煙と、その残り香。
教師は自分の腕を抱きながら、小さくなっていく車を見送っていた。
タクシードライバーは愛車に背を預ける。
思い出し笑いをしながら、隣を見上げる。
「さっきのセンセ、親バカのパパみたいになってたよ?」
教授も、ふっと笑った。
「あの子は、他の子より、知らないことが色々あるからね。
どうも心配になってしまうんだよ、教師としてはね」
金髪のドライバーは、愛車の屋根に肘を着く。頭上には、青い空が広がっている。
「ね、センセ」
まだ空を見たまま、白い喉仏を晒している。視線の先には、悠々と流れていく白い薄雲。
「なんだね?」
「今日さ、昼メシ、ご一緒してもイイ? センセのおごりで」
タクシードライバーは、ひひひー、と子供っぽく笑った。
「またバトラーに駐禁を取られたのかね?」
ドライバーは手の平を青空に向け、
「もー、ガッポリ」
オーバーに肩を竦めて見せた。
***
私達がロレートの邸に到着すると、大勢の臣下に出迎えられた。
陛下がお帰りの時でも、ここまではしない。
総出でお出迎えをしろという指示は出していない。おそらく好奇心の集合体だろう。
サン・ジェルマン様は彼等の中央を黙って通ろうとした。
殿下は小さなお声で、ご学友の名を呼んだ。そして、何も言葉にせず、ご学友を見つめた。
そのどこか意地悪な微笑を見て、私は少しどきりとした。陛下のそれと似ていらっしゃる。
ご学友は殿下を軽く睨む。不満げな唇で呟いた。
「…こんにちは、お邪魔します」
今回の一日目は殿下の執務を入れていなかった。
殿下もご学友とごゆるりと過ごされたいだろうと思ってのことだ。
今日、陛下は夜に邸に戻られる。その際に、陛下と殿下とご学友で会食なさるご予定だ。
それまでまだ数時間あった。夜までどうなさいますか、とお伺いしたところ、
ご学友が「ロレートを少し観光したいな、車で」とのこと。
案内役に私をご指名になったので、殿下とご学友と出掛けることとなった。
→15
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聖アルフォンソ学院 正門前。
ロレートの公用車に、学院の生徒が二人乗る。
後部座席のドアを閉めた臣下は、無駄のない動作で運転席に入る。
見送り組のタクシードライバーは片手を挙げる。生徒の一人は微笑んで返した。
同じく見送り組の教授は、もう一人の生徒とアイコンタクトをとろうとしたが、
教え子は後頭部しか見せてくれなかった。
運転席の臣下は、窓越しに会釈して、学院を出発した。
正門前に残されたのは、大人二人と黄色いタクシー。
公用車が吐き出した灰色の煙と、その残り香。
教師は自分の腕を抱きながら、小さくなっていく車を見送っていた。
タクシードライバーは愛車に背を預ける。
思い出し笑いをしながら、隣を見上げる。
「さっきのセンセ、親バカのパパみたいになってたよ?」
教授も、ふっと笑った。
「あの子は、他の子より、知らないことが色々あるからね。
どうも心配になってしまうんだよ、教師としてはね」
金髪のドライバーは、愛車の屋根に肘を着く。頭上には、青い空が広がっている。
「ね、センセ」
まだ空を見たまま、白い喉仏を晒している。視線の先には、悠々と流れていく白い薄雲。
「なんだね?」
「今日さ、昼メシ、ご一緒してもイイ? センセのおごりで」
タクシードライバーは、ひひひー、と子供っぽく笑った。
「またバトラーに駐禁を取られたのかね?」
ドライバーは手の平を青空に向け、
「もー、ガッポリ」
オーバーに肩を竦めて見せた。
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私達がロレートの邸に到着すると、大勢の臣下に出迎えられた。
陛下がお帰りの時でも、ここまではしない。
総出でお出迎えをしろという指示は出していない。おそらく好奇心の集合体だろう。
サン・ジェルマン様は彼等の中央を黙って通ろうとした。
殿下は小さなお声で、ご学友の名を呼んだ。そして、何も言葉にせず、ご学友を見つめた。
そのどこか意地悪な微笑を見て、私は少しどきりとした。陛下のそれと似ていらっしゃる。
ご学友は殿下を軽く睨む。不満げな唇で呟いた。
「…こんにちは、お邪魔します」
今回の一日目は殿下の執務を入れていなかった。
殿下もご学友とごゆるりと過ごされたいだろうと思ってのことだ。
今日、陛下は夜に邸に戻られる。その際に、陛下と殿下とご学友で会食なさるご予定だ。
それまでまだ数時間あった。夜までどうなさいますか、とお伺いしたところ、
ご学友が「ロレートを少し観光したいな、車で」とのこと。
案内役に私をご指名になったので、殿下とご学友と出掛けることとなった。
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