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■ソクーロフ×アイヴィー ほのぼの
2008年11月2日は、良い天気だった。
聖アルフォンソ学院も日曜日。授業はない。
生徒達は、自主活動をしながら、緩やかな休日を楽しんでいた。
保健教師も日曜日は休日なので、急患や怪我人に呼ばれた時を除き、
メルキュール館の自室で休養していても問題はなく、
また、保健室に居ても咎められることはなかった。
今日の保健室にはコーヒーの香りとスローなクラシックが流れている。
大きな窓には青空が広がり、もくもくとした雲がのんびり漂う。
保健教師は自主的に、この仕事場に来ていた。
愛用のボールペンを片手に、生徒達のカルテ書き。
先日のハロウィンについての記録だ。誰が、どんな仮装をしていたか。
入手できた全ての情報をカルテに残し、
それらを次回のカウンセリングに役立てる為、些末事まで丹念に綴っていた。
好きな曲を聴きながら、次のカウンセリングについて想いを巡らせること。
彼にとってそれは仕事であり、自主活動であり、趣味であり、快楽だった。
コンコンコンとノックの音が三回した。
「お休みの日なのに、まーたお仕事してんの?」
後ろ手でドアを閉めたのは、長い金髪。
この学院専属のタクシードライバー兼警備責任者という変わった男だった。
生徒が訪れた時は、優しく出迎える保健教師だが、
今は机に向かったまま手も止めず、振り向きもしない。
金髪の男は、保健教師が座っている椅子の背凭れに手を置く。
「こんな日くらい、ゆっくりしたらイイじゃん」
「こんな日?」
「ソクちゃん、今日お誕生日でしょ?」
「いかにも」
「いかにもって、んな淡白な」
保健教師は椅子ごと、ゆっくり振り向く。
ドライバーは、おっと、と言いながら椅子から手を離した。
保健医とドライバーの目がやっと合う。
「それで?」保健医は座ったまま、相手を見上げる。
「お前は、私の誕生日に保健室へ何をしに来た?」
金髪の男は、そっぽを向きながら頬を掻く。
「ソ、ソクちゃんはヘンタイさんだからー、
お誕生日を祝ってくれる人は俺しか居ないだろうしー、
えと。だからー、優しい俺サマがお祝いしてあげよっかなーと思って」
「成程。私の誕生日を祝いたくて仕様がないと」
「ちーがーうっ! ソクちゃんの数少ないトモダチとして、
しーかーたーなーくっ、お祝いしてあげるって言ってんの!」
保健医はコーヒーカップに口付ける。その傍らで金髪の男は頬を膨らましている。
「どんなバースデーパーティーを催してくれる予定なんだ?」
「それは、俺んちか、ソクちゃんちで、晩ご飯作ってあげるくらいしかできないけど。
あ、ケーキ食べたいんなら、買って帰る?」
「そうだな。ケーキは必要だ。会場はお前の家が良いだろう、何かとな」
「んと、じゃ、夕方――18時頃にお迎えに来るから」
ドライバーが出て行った保健室。
保健医は机に向き直り、カルテの記入を再開する。
それまでBGMとなっていたクラシックが、主旋律に戻る。
静かな日曜日の午後。ペラリとカルテを捲る音がした。
fin
2008年11月2日は、良い天気だった。
聖アルフォンソ学院も日曜日。授業はない。
生徒達は、自主活動をしながら、緩やかな休日を楽しんでいた。
保健教師も日曜日は休日なので、急患や怪我人に呼ばれた時を除き、
メルキュール館の自室で休養していても問題はなく、
また、保健室に居ても咎められることはなかった。
今日の保健室にはコーヒーの香りとスローなクラシックが流れている。
大きな窓には青空が広がり、もくもくとした雲がのんびり漂う。
保健教師は自主的に、この仕事場に来ていた。
愛用のボールペンを片手に、生徒達のカルテ書き。
先日のハロウィンについての記録だ。誰が、どんな仮装をしていたか。
入手できた全ての情報をカルテに残し、
それらを次回のカウンセリングに役立てる為、些末事まで丹念に綴っていた。
好きな曲を聴きながら、次のカウンセリングについて想いを巡らせること。
彼にとってそれは仕事であり、自主活動であり、趣味であり、快楽だった。
コンコンコンとノックの音が三回した。
「お休みの日なのに、まーたお仕事してんの?」
後ろ手でドアを閉めたのは、長い金髪。
この学院専属のタクシードライバー兼警備責任者という変わった男だった。
生徒が訪れた時は、優しく出迎える保健教師だが、
今は机に向かったまま手も止めず、振り向きもしない。
金髪の男は、保健教師が座っている椅子の背凭れに手を置く。
「こんな日くらい、ゆっくりしたらイイじゃん」
「こんな日?」
「ソクちゃん、今日お誕生日でしょ?」
「いかにも」
「いかにもって、んな淡白な」
保健教師は椅子ごと、ゆっくり振り向く。
ドライバーは、おっと、と言いながら椅子から手を離した。
保健医とドライバーの目がやっと合う。
「それで?」保健医は座ったまま、相手を見上げる。
「お前は、私の誕生日に保健室へ何をしに来た?」
金髪の男は、そっぽを向きながら頬を掻く。
「ソ、ソクちゃんはヘンタイさんだからー、
お誕生日を祝ってくれる人は俺しか居ないだろうしー、
えと。だからー、優しい俺サマがお祝いしてあげよっかなーと思って」
「成程。私の誕生日を祝いたくて仕様がないと」
「ちーがーうっ! ソクちゃんの数少ないトモダチとして、
しーかーたーなーくっ、お祝いしてあげるって言ってんの!」
保健医はコーヒーカップに口付ける。その傍らで金髪の男は頬を膨らましている。
「どんなバースデーパーティーを催してくれる予定なんだ?」
「それは、俺んちか、ソクちゃんちで、晩ご飯作ってあげるくらいしかできないけど。
あ、ケーキ食べたいんなら、買って帰る?」
「そうだな。ケーキは必要だ。会場はお前の家が良いだろう、何かとな」
「んと、じゃ、夕方――18時頃にお迎えに来るから」
ドライバーが出て行った保健室。
保健医は机に向き直り、カルテの記入を再開する。
それまでBGMとなっていたクラシックが、主旋律に戻る。
静かな日曜日の午後。ペラリとカルテを捲る音がした。
fin
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