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Marginal Prince Short Story
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■ロレートシナリオ
翌朝。陛下と殿下とご学友は、ご一緒に朝食を取られた。
「朝は機嫌が悪い」と宣言していたご学友は、
本当に昨夜よりご機嫌が悪そうだった。目の前にある朝食も殆ど召し上がっていない。
美貌まで些か劣化しているように見える。殿下が心配されて、お声を掛けている。
「アンリ…大丈夫? 昨日はあまり眠れなかった?」
「眠っていたんだけどね。真夜中に、ふざけた電話が掛かってきて、起こされたの」
恐ろしく勇気のある人間が居るものだ。
「そうなんだ…災難だったね、アンリ」
「ほんと。レイナ卿、すみませんが、食事はもう下げて貰えますか?」
「畏まりました」
「アンリ、全然食べてないじゃないか」
「食欲がないの」
「…仕方ないな。じゃあ、ミルクティーなら飲めるかい?」
ご学友は黙ったまま頷く。私は、ご用意します、と言って、お茶の用意に取り掛かる。
イングリッシュブレンドをここに持ってきておいて幸いだった。
たっぷりとミルクを注いでお出しすると、小さな声で「メルシー」と言われた。
一息吐いたサン・ジェルマン様は両手で頬杖を突いて、陛下のほうを向く。
「ねえ、王様?」
陛下が食後のコーヒーをソーサーに置く。
「ん? どうした、アンリ」
「僕を朝から呼び付けた割に、今日は大人しいじゃない?」
「そうか? お前の寝起きの顔が愛でられて、俺は満足しているが」
確かに、ご学友の仰る通りだ。今朝、陛下はあまり会話に加わっていなかった。
とても盛り上がっていた昨夜と比べると、やけに静かな朝食だ。
サン・ジェルマン様は冷笑した。
「ごめんね、王様。僕は子供の時から気味の悪い人間でね? 大人の心が読めるの」
殿下がご友人を見た。
「アンリ? どうし…」
「言いたいことがあるなら言えば? 王様」
陛下は苦笑された。
「それも予言者の血故か? 全くジョシュアは凄い友人を持っているな」
「カーディス…本当にお話があるんですか?」
「ああ。その前に」
入ってくれ、と仰ると扉が開いた。私以外の側役、五人全員が部屋に入ってきた。
先頭を歩いてきたエメリーが俯いている。ホワイトが口を開いた。
「陛下…何か、お話があるとエメリーに聞いたのですが」
「そうだ。お前達にも聞いて貰いたいことだ」
全員の視線が陛下に集まる。陛下が口を開いた。
「俺が玉座を降りる時、ラルヴィスには玉座の側に残って貰いたい、と思っている」
陛下は私を見た後、殿下に視線を移した。
「できれば次代も国王の側近に就いて欲しいとな。
ラルヴィス・レイナは、王の側近として、極めて有能な男だ。
現役の王の右腕が側に就いていれば、お前も心強いだろう? ジョシュア」
「…ええ。俺は…でも、ラルヴィスさんは…」
赤い瞳が私に向けられる。私は渇いた喉から声を絞り出した。
「陛下…それは、ご命令、なのですか?」
「いいや。王の側近を嫌々やって欲しくはないのでな。ラルヴィス、お前に決めて貰う。
玉座から下りる男に就くか、玉座に上る男に就くか、お前の好きなほうでいい。
決断は今すぐでなくていい。ひと月、ゆっくり考えろ。以上だ」
陛下が扉へ向かう。エメリーが扉を開け、頭を下げている。
私は数秒の間、動けなかった。身体も脳も機能が停止したかのように。
殿下に私の名前を呼ばれて、はっとしたほどだ。
失礼致します、と言って、私は陛下の後を追った。
広い廊下を陛下が歩いている。
「陛下」
足が止まる。振り向かれたお顔は、いつもと変わらない。
「なんだ? ラルヴィス」
「私に、至らない点があったのですね? それならば精進致します。ですから」
「俺の話を聞いていなかったのか、ラルヴィス。至らない点がないから、だ。
お前にとっては喜ぶべきことじゃないのか? 何故、そんな顔をしている?」
喉の奥が苦しい。声が掠れる。
「陛下…『俺には、お前が居れば良い』と仰ったじゃないですか」
「寝室での睦言を鵜呑みにするとは、似合わぬぞ、ラルヴィス」
陛下は微笑を称えて、仰った。
「そんなもの、只の戯れだ」


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